ローマの景色というのは、それは印象深いもので、僕が泊まった安宿の窓からも、いかにも「ダンテ的」な石造りの景色を望むことが出来た。そこは、文化という意味では、世界屈指の密度を持つ土地である。
僕は旅行に行くときには、必ず、ウォークマン(今は、mp3プレーヤーに変わったが)を持っていくことにしている。そして、このローマの景色に一歩も引けを取らず響き渡ったのが、この1996だった。
アルバムは、ピアノ・バイオリン・チェロのトリオ編成による、ベスト。坂本龍一の、言ってみれば「無国籍」な音楽は、ともすればオペラの響きに圧倒されそうなこの街でも、きちんと耳と心に響いた。いや、むしろ、日本で聴くよりもしっかりと、聞こえてきた。
世界で通用するもの、というのは、とても難しい。ある種の前提無しで、あるがままの力で勝負しなければならない。このアルバム、日本だけの尺度で聴くには、強すぎる音楽かもしれない。
さて、収録曲について少し。1919は、緊張感に満ちていて、考え事をしながら聴くと、頭の速度が10%アップする感じ。戦場のメリークリスマスは、メインテーマ部分のリズムが絶妙なベスト・テイク。
注1:ダンテが生まれたのはローマじゃなくてフィレンツェだろ、というのは正しい指摘。