台湾の人形劇団

Photo: 1995. taiwan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38
Photo: 1995. taiwan, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

指人形が、人形師の手から飛んだ。少女の視線が釘付けになる。艶やかな衣装を纏った人形達が、名人の手の上で、踊り、歌い、そして空を、飛んだ。

コンマ数秒後、人形は操り手の指に、寸分の狂いもなく戻る。宙を舞う人形に息を飲んだ子供たちから、歓声が上がった。


ここ台湾に於いて、人形劇の芸術としての地位は高い。人形劇専門のテーマパークのような場所があり、そこには大人から子供まで、幅広い層のお客が訪 れる。写真の中で人形を操っているのは、その人形劇公園(?博物館ではない、死んだ文化ではないからだ)の主宰を勤め、そして台湾の人形師の最高峰にある 鍾任壁氏。彼は、かつての国民党総統の前でも演じたという。


鍾さんの演じる人形劇の素晴らしさは、こういったものに全く興味の無いはずの、僕を感動させた。それは、人形師の卓越した技と表現力だけによるので はない。見学に来た子供たちの前で、心から楽しそうに演じる人形師。そして、時には息を飲んだり、歓声を上げたりして喜ぶ子供達。みんな真剣で、そして楽 しそうだった。そして、僕も楽しかった。

そんなことに、心を動かされたのだった。

カツ丼について

今日は、カツ丼について考えてみよう。

カツ丼。蓋をとると、ふわっと蒸気が立ち上る。かかっている卵は、わりと火を入れすぎな感じ。上に添えられているのが三つ葉なら、そのカツ丼は割と 高級。刻み海苔ならまあまあ、グリーンピースだったら店の選択を少し考えた方がいいかもしれない。まあ、それはさておき、どんどん食べる。脂身たっぷり ロースカツを制覇するには勢いが大切。揚げおきのカツの衣は、油が回ってしっとり。熱々のご飯に染みわたった、醤油っぽい辛口のタレ。傍らには無論、着色 料で黄色くなった沢庵。

カツ丼はやはり旨い。しかし、最近カツ丼を食べた記憶のある人なんて、どのくらい居るのだろうか。かつて「外食の王様」だったカツ丼は、いまでは刑 事ドラマの取調室位でしか見ることができない。(実際の取調室でも、実は、カツ丼は定番のメニューらしい、、)そりゃ、あんまり格好の良い食べ物では無い し、高級でもない。健康にだって、多分あまり良くない。あと10年待っても「カツ丼ブーム」なんて絶対来ないだろう。

しかし、そこらへんの蕎麦屋に行ってみれば、絶対カツ丼はメニューに載っている。カツ丼は、逆境の中にあっても、まだ死んではいない。蕎麦屋?そう そう、カツ丼は蕎麦屋で食べないといけない。僕はそう思う。トンカツ専門店のこだわりのカツ丼とか、そういうものは、どうでもいい。蕎麦屋で出てくるカツ 丼のあの感じこそ、かつての「外食の王様」、カツ丼の雄姿として相応しいのだ。

で、どうです?今日のお昼あたり。

Photo: 1998. Tahi, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film
Photo: 1998. Tahi, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

「ドーン、ドーン」という爆発音がして、ベランダに出た。目の前に、特大の花火が揚がっていた。光の帯が、教会の尖塔を赤く照らす。

ラグーンに囲まれたリゾートの一角。いくぶん塩の香りがする夜風が吹き込んでくる。静かな夜だと思っていたら、いきなり、花火だ。何発か派手に打ち上げて、終了した模様。なんの花火だったのかは謎。この脈絡のなさが、アジアか。


夏になると、日本では花火大会が開かれ、みんな大挙して見に行く。「みえねーぞ、このやろー、頭さげろー」「ビールいかがですかー」「通路に立ち止 まらないでください!通路をあけてください!」などと、一触即発の危機をはらみつつ、花火大会は進行する。そんな花火大会にあっては、場所取りが全て。だから、日々の計画性に欠ける僕のような人間は、まともに花火大会というものを見たことがない。記憶に残るのは、オヤジのケンカ、アワアワのビール、ピクニックシート代わりの新聞紙。うーん、花火は、、どんなだっけ。

そんな折り、この花火は子供の頃、米軍キャンプで見た花火を思い出させた。頭の上に降ってくるような、そんな花火だった。