台風あるいは、Y2K

多分、台風が来ると、無意識のうちにわくわくしてしまう人、というのは居るはずだ。

あるいは、大雪が降りそう、なんてことになると、何かを期待してしまう人も居ると思う。

Y2K にも、どこかそんな所がある。不謹慎なお祭り気分というか、非常事態特有の盛り上がりというか、そんな感じ。しかも、僕なんかは超関係者として参加するわけだから、さらにライブ感が増すというものだ。

まあ、実際には、正月のくそ寒い中、早起きして電車に乗ったりする段階でウンザリするのだろうし、「去年は今頃スキー場だったぞ」とか思うとさらにウンザリだろう。昼飯だって、冷え冷えの弁当だろうし、コールが無くて暇でも酒飲んで待ってるわけにもいかないし、、。

漠然としたワクワク感と、散文的な現実。その意味では、大雪でせっかく気分が盛り上がっても、動かなくなった電車に詰め込まれてたちまちげっそりするのと同じことだ。


しかし、違う考え方もある。それは、輝かしい「オヤジ武勇伝」の 1ページとしてのY2Kである。この Y2K 騒動に荷担しておけば、あとあと「ミレニアム・オヤジ武勇伝」として使えることは間違いない。これは、とても貴重だ。

10年後。新年会の宴もたけなわとなった頃に、「あの時は一時間に 30本の電話をさばいたもんだよ。だいたい最近の、、」とか語りだして、不幸にも隣に座ってしまった非Y2K世代の同僚に迷惑をかけることができるのである。

戦後生まれで、全共闘でもなく、バブルにも乗れなかった世代。女子大生ブームの頃は中高生で、コギャルブームの頃は大学生だった日の当たらない世代。そんな僕らには、実は、Y2Kぐらいしか武勇伝のネタはないのだ。

注:よくよく調べてみたら、僕のシフトの時間はちゃんと(暖かい)食事が用意されるみたいだ。通常よりは、メニューの選択肢がぐっと減るが、冷やご飯よりずっといい。

変な病気では

変な病気ではありませんでした。良かった。

マネージャーから、「年末年始の特別医療体制に関して(Y2K 対応の人たち用)」というメールがフォワードされてきた。「これでいつ下血しても平気です、やったね!(一部脚色)」というコメントとともに、、。

コロッセウムのネコ

Photo: 1995. Rome, Contax T2

Photo: 1995. Rome, Contax T2


イタリアはローマの中心街にあるコロッセウム。朽ち果てた古代の闘技場、イタリアではありきたりの観光地。

しかし、築数千年前の建物であるコロッセウムに、僕はある種の恐ろしさを感じた。原始の凶暴さというか、野蛮さ、のようなものが住み着いている気が したのだ。

すり鉢上の観客席からは、複雑に入り組んだ競技場の全景を見渡す。べったりと苔むした、かつての虐殺の空間には、なんともいえない禍々しさが漂うよ うに感じられ、勇んで写真を撮る気にはならなかった。

コロッセウムは、遺跡というより廃墟と言った方がよい。遺跡と言うには、生々しすぎる場所なのだ。壁面には、石組みを支える鉄骨を掘り出した穴が、 無数に空いている。掘り出した金属は、戦争に使ったのだという。かつて木製の天蓋がついていたと言われる内部に、今は晴れ渡ったローマの空が広がってい る。


そんなコロッセウムの柱の陰に、ローマの野良猫を見つけた。

妙に怖い目つき。

「じっとしてろよー」となだめながら、近づいた。が、威風堂々としたもので、逃げる気配は無く、結局は撮り終わった僕が早々に退散した格好だ。世界 の遺産を根城にしているだけのことはある。道化の仮面のような、切れ長の目。なんともかっこよく、なんとも怖い雰囲気。