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ソーメンチャンプルーをつくる

すさまじく、「ソーメンチャンプルー」が食べたくなった。

日曜日の昼過ぎに、僕は、猛烈に、ソーメンチャンプルーが食べたくなったのだ。

しかし、作り方がよく分からない。(インターネットで調べればいいじゃん、ということは後で思いついた)


頭の中には、ぼんやりとした完成予想図のみが出来上がっている。そして、手元にある材料で、どうにか近いものを作ってみることにする。

手元の材料:そうめん、ショルダーベーコン、菜っぱの漬け物、ネギ

ソーメンチャンプルーは、そうめんを主材料にした、沖縄の炒め物料理だ。極めて一般的な沖縄の家庭料理なので、本土でも、たいていの沖縄料理の店で食べることができる。

僕の頭の中のイメージでは、炒まったソーメンの上に、ぽろぽろと具が載って、ネギが散らされているといった風情のものである。

沖縄だから、当然ポーク(SPAM とか、そういうやつ)は入っているに違いない。まあ、同じ豚肉だからベーコンでいいや。それから、僕の記憶では、ネギがハラハラと乗っかっていた記憶があ る。それも入れる。なんか、沖縄料理にしては珍しく塩っぽい味付けだった気がするので、菜っぱの漬け物も混入することにした。(沖縄に塩味の漬け物は無い らしいが)

だいたい、ソーメンチャンプルーのような、庶民の料理に「厳密」とか「正統」なんてものは、ありゃしないだろう。(ご家庭の味というのがきっとあるのだろうけど)


ぐらぐらとソーメンをゆで、水洗いしておく。フライパンにサラダ油をひき、ベーコンをいため、おもむろにソーメンを入れる。

案の定、ソーメンがダマダマになりはじめる。間髪を入れず、醤油を少々(のつもりが、入れすぎた)入れ、菜っぱをぶち込んで混ぜる。

最後の仕上げに、多分ごま油も入っていたのではないかという予想で、入れてみた。入れた瞬間、「絶対違う」という確信を持つことができた。そう、ソーメンチャンプルーにゴマ油は入りません。


出来上がった、物体は、かなり僕の完成予想図を裏切った。食してみると、なんというか、インスタントラーメンを焼きそば仕立てにしたような、不健康な味わい。

不味くはないが、ご飯のおかずと言うよりは、酒の肴のような一品に仕上がってしまった。

やはり、料理の鉄人は偉大だということを再確認して箸を置いた。(ちゃんと食べたけど)


さて、インターネットには、きっと正しいソーメンチャンプルーの作り方が載っている。と思ったのだが、案外情報は少い。

[めんそーれ、うちなーんちゅ](このタイトルに拒否反応を示す人もいるかもしれない)によれば、本来の材料は以下のような感じらしい。

一般的な材料:素麺、シーチキン、ポーク、ねぎ、もやし、きゃべつ

おおまかに言えば、僕のソーメンチャンプルーで合っていた材料はソーメンとネギぐらいのものだったようだ。味付けは、塩・胡椒のみ。そうめんをダマダマにしないように仕上げるのがポイントだそうだ。

しかしながら、[新種発見!チャンプルー100]を見る限りでは、なんでも良さそう。ベーコンを使ったチャンプルーもちゃんと出ている。

割烹の板前

厨房の中で、おやじが椀を手にとった。

おたまを手に、まさに吸い物の出汁がその椀に張られようとした瞬間、おやじの厳しい視線が、椀の中で止まった。
「だっ!」

なにやら、非常にご立腹のようだ。きっと職人の目に、許せないものがあったのだろう。ネギの角度が悪かったとか、、。
「しょうがねぇーな、ったく、だっ!」

哀れにも、その椀は脇にのけれられ、僕の昼飯のお吸い物は、別の椀にもられることになった。


新宿の都庁から、オペラシティーの方角に、20分ばかり歩いた所にある割烹の店。一見すると目立たない店だが、昼時には近所の会社員が行列をつくる。

味は確かで、この前の昼飯にでていた飛び魚のたたきなどは、絶品だった。飛び魚は上品な味のする魚ではないが、その油っこさが、いかにも夏の味といった風に仕上げられていて、文句の付けようが無かった。

しかし、困ったこと、というか最初はびっくりしてしまうことが、この店にはある。この店の確かな味をつくっている本人、店のおやじだ。この店のおやじは、いつも怒っている。そして、絶えず怒鳴っているのだ。


店主は、「板前」という単語のサンプルのような人物。通常は寡黙に、ねぎを刻んだり、魚をおろしたりしている。しかし、2分に一回は、おかみさんを 怒鳴るのだ。おかみさんはなれたもので、「はいはい」といった風情で流している。お客も、勝手を知っているので、驚きもしない。まあ、そういう店なのだ。

そして今日、おやじはついに椀に怒っていた。

どんなにうまい店でも、おやじが恐かったり、怒っていたりすると、「勘弁して欲しい」ものだ。しかし、この彦膳はおやじの怒り具合と、その旨さを天秤にかけた場合、明らかに味の方が勝っている。

そういうわけで、今日の昼飯もその店にしようと思う。


ちなみに、ランチは(割烹にランチもないと思うが)1,000円。確実に食べたければ、12時15分前には、のれんをくぐりたいところだ。もちろん、夜も美味しい、らしい(行ったことない)。

大阪のタクシー

「もう、サミットは大阪で決まったようなもんですわぁーーーっ。」
「はぁ、そうですか、、。」
「そらそうですわ。なんや言うても、、(以下略)」

僕は、生まれた初めて降り立った大阪で、ものすごい勢いでしゃべり続ける運転手と一緒にタクシーに詰め込まれ、窓の外の渋滞をウンザリしながら眺めていた。

僕にとっては日本でサミットが開かれること、そしていくつかの地方都市がサミットの会場として誘致合戦を繰り広げていること自体が、ほぼ初耳に近かった。そいうえば、なんかのニュースでやっていたような、、。


「むこうには、どれぐらいで着きますかね?」

と尋ねると
「いや、そんなにかかりまへんで。どんなに混んでも、まぁ1,700円ぐらいですなぁ。それ以上は、ぜったい、いきまへん。まぁ、ようお客さんで、、(以下略)」

僕にとっては値段はどうでもよかったが(僕は所用時間が聞きたかったのだ)、まだまだ先は長いようだった。


新幹線や飛行機で通り過ぎたことはあったが、一度も歩いたことのない街、大阪。新大阪の駅を降り立ち、とりあえず今日の仕事先であるホテル・ニューオータニに向かおうと、タクシーに乗った。(電車の接続が、いまいち分からなかったのだ)

しかし、乗りこんでわずか10秒で、僕は大いに後悔することになった。このタクシーはハズレだ。
「きょうは、暑おまんなぁー。」

から始まった運転手のおしゃべりは、大阪府の中心街で日常的に発生している大渋滞に巻き込まれてから、ますます冴え渡った。50代半ばの白髪の運転 手は、まさに生粋の大阪人といった様子である。この運転手にとって、お客様にさまざまなおしゃべりを持ちかけることは、明らかに「サービス」の一環である らしかった。

東京から来た大阪は初めての、20代のサラリーマン。「サービス」したくてしょうがない運転手にとって、僕は全くのカモネギだった。

大阪のタクシー運転手というのは、みんなこうなのだろうか?ならば、このタクシーがハズレというよりも、タクシーに乗るという選択自体がハズレだったのかもしれない、、。(これ以降、僕は全日程電車で移動した)


結局、2000年のサミットは、沖縄県名護市で開催されることになった。(落選した都市の代表者からは、「あまりにも政治的な判断だ」という意見が見られたが、サミットの開催地選定が政治的でなくてどうするのだろう?)

僕はサミットの開催地に決まった名護に滞在したことがある。そこには、基地と、それにべったり依存して、今は寂れ疲弊しきった街があった。(繁華街 の外れに、「ジェイズ・バー」という看板を見つけ、おおいに盛り上がったりしたものの、その店も閉じられて久しいようだった。)

本土の政治に長年振り回され続けていながら、政治の力に頼らざる終えない現実が、名護にはある。


さて、大阪城公園にほど近い、ホテルニューオータニの車寄せに着いたとき、メーターの料金はとっくに 2,000円を越えていた。

それでも、「サービス」から解放された僕は、喜んで料金を払い、車を降りた。