monobrightの雨にうたえばのPVが凄い件

僕は滅多に見ない、地上波のバラエティーをなんとなく見ていた。実家の僕の部屋には、アナログ地上波の AIWA の液晶テレビしか無いからだ。鮨やプリンをフリーズドライにして、食べられるか。そんな内容のどうでもよい番組だった。

でも、その番組のエンディングロールの背後に流れていた PV に目が釘付けになった。たかだか15秒ぐらいだと思うが、そのロングショットがとても良かった。


縦3M x 横20M ぐらいの、長いスクリーンが闇の中に置かれている。スクリーンの上では、円をモチーフにしたドーナツ状の模様が素早く動き、その前で男女が踊っている。闇の中では、スクリーンはコンテンツであり照明であり背景でもある。
曲名は番組の名前とエンディングテーマをキーワードにし直ぐに見つかった。

monobright の「雨にうたえば」の PV

Youtube にあった PV を通しで見てみる。とは言っても、iPhone の 3G モードの粗い画面だ。それでも、その PV がとても良くできていることは分かった。スクリーンのコンテンツは、踊り手のアクションに合わせて変化していた。花は息を吹きかけられて花片を散らし、漆黒の円から雨傘が取り出された。スクリーンはタンジブルなインターフェイスであり、傘というアトムを現出させていた。


似たような PV は 多分ある、よく似たコンセプトの美術品も多分ある。でも、よく考えてあるし、そういうことをよく知っている人が作っているのだろう、できあがりが群を抜いている。MIT の石井教授の講義を聴いてから、僕は自分の思考の中で、目にしたものを関連づけていく重要さに注意を向けるようになった。

曲が始まると、スクリーンには穴の空いた円が現れる。周囲が少しぼやけた円は、イサム・ノグチの彫刻を想起させる。スクリーンの上に現れた 2つの部屋から、男と女が別々に出かける。男は街を歩き、女は野を歩き、やがて二人は出会う。闇の中に浮かぶ野や街は、コンテンツであり照明だ。野を歩く女が触れる植物は、スクリーンの中で揺らめき、実際に触れられたかのように散る。男が風に傘を飛ばされ、傘はスクリーンの中に溶ける。溶けた傘のアトムは、女の手でまた傘として取り出される。(なんの事やら分からない方は、石井教授の ustream をご覧下さい、最初の 5分ぐらいは音声が無いです。あるいは、タンジブルユーザーインターフェイスとかを調べてみるとか。)

PV を見ている僕は、スクリーンの前で人が踊っている事を知っている、しかしやがて、それが本当の踊り手なのか、スクリーンの中で誰かが踊っている映像なのかどうかさえ、分からなくなってくる。


普段の僕なら絶対見ない番組の、今月だけのエンディングテーマの 15秒。そして、その PV にふんだんに盛り込まれているであろうタンジブルビットのコンセプトと、それを考えた石井教授の講義に出かけていた自分。漆黒に浮き上がるドーナツ状のオブジェクトと、数年前にたまたま訪れた牟礼のイサム・ノグチの工房。

科学者、である石井教授は、「起こること全ては必然だ」と言い切った。むしろ、必然の意味を深く読めと。そんな怖い事を言う人は、初めてだ。しかし、そうなのかもしれない。そして科学と芸術の境界は、多分、それほどには無い。

Avatar IMAX 3D 新しいエンターテイメントの誕生

ストーリーは多分、誰も期待していないので、この際いいだろう。欧米的価値観とかは、勧善懲悪の中の「悪」の側に明確に分類されており、それに怒る欧米の聴衆というのが、居る気がする。一方で、先住民族の行動原理は、伝説に盲従するだけと片付けられていて、その点では時代錯誤と言っても良いレベルのハリウッド映画ではある。


なんとなく、空いてそうな映画館で観れば良いかなと思っていたのだが、IMAX 3Dで観ないと全く意味が無い、という体験談が多かったので、素直にIMAX 3Dの吹き替え(3D字幕がかなり邪魔だという話もあったので)を予約した。座席はセンター、やや後方。

多くの人が指摘しているように、IMAX 3D版Avatarは、その奥行き感の自然さと、鑑賞の容易さ(軽いメガネ、明るい画面)に於いて、新しい次元のエンターテイメントを切り拓いている。GCレンダリングの自然さは、どんなに目をこらしても、どこからどこまでがCGなのか判別が付かないレベルで(スターウォーズが旧世代の映画に見える)、画面を見ながら唖然とさせられるシーンが多かった。煙、波飛沫、炎、植物など、CGが従来苦手としていた部分も全く気にならず(ただ、燃えた木の灰が飛ぶ部分は、CGっぽかった)、Avatarと人間の合成の自然さ、モーションの美しさ、木々の気配など、全てのカットに渡る破綻のない合成は、映画の形を変えたように思う。ここまでやられてしまうと、映像技術者として、かなり戦意喪失してしまう人も多いのではないだろうか。

162分は、一般的なアクション映画としては長い気がするが、見終わった感想としては丁度良いと思えるレベルの時間。席を立った時のふらつき感は、丁度ジェットコースターから降りたときのようだ。体が感じている3Dによる入力量は、明らかに通常の映画を超えており、ここでの体験は、映画ではない別のエンターテイメントと言っても良いように思った。

本作は、IMAX 3Dでセンター側の席を予約して観てみることをお勧めする。DVDとかだと多分、、つらい映画ではないかと、、。予約は109シネマズのサイトから、3日前の午前0時より開始。サイトは劇重になるので、注意。セッションタイムアウトが開始から10分なので、繋がっても最後まで気を抜かずにカード決済まで一気に行きましょう。

ぺたりネコ

夜がすっかり蒸し暑くなって、ぺたりネコの季節になった。


裏路地を歩いていると、居酒屋の看板の裏でぺたりしている。仕事がやっと終わって、さて、これから遅い夕食でも食べに行くかと言うところなのに、こちらは夕食は終わりましたという顔つきで、グルグルしている。

日陰のひんやりしたアスファルトに、ぺたり、動かない。頭をぐりぐりすると、尻尾だけが左右に動いたよ。

注:野良と戯れた後は、手を洗いましょう。