Photo: “A snail fan.” 2021. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.
引越の際に、処分に迷ったものを段ボールに放り込んでおいた。荷物も片付いて、いよいよ、その「迷ったモノ達」に手を付ける段階になった。
取り出したのは、カタツムリのような形をしたファン。冷蔵庫の上に置いてあったので、油分を含んだ埃を被っている。これは、今はもう居ない、あの人にもらったものだ。
「いやぁ、使わないなら捨てちゃって良いよ。」
唐突にこのカタツムリを貰って、困惑した(僕は困惑という感情については顔に出る方だ。)表情を見て取ったのだろう。
「いやぁ、使いますよ。」とは言ったものの、何に使えば良いのかサッパリ分からなかった。自分が買った良いものを、気前よくシェアしてくれる、そんな人だったが、そう言えばファン付きのベッドシートなど、ファン系は好きだったのかも知れない。
僕が唯一、このファンを実用的に使ったのは、レンジ兼用のオーブンが過熱して、次の作業ができなかったときに、中を冷やした、、ぐらいのものだった。だから、それ以来、台所用品の一種として、冷蔵庫の上に鎮座する事になった。捨ててしまっても、別にかまわないのだ。10年も使わなかったのだし、捨てちゃって良いよ、と贈り主からも言われたのだし。
でも、まぁ、そういう訳にもいかないか。とはいえ、ルーバーの隙間にまで油分と埃が入り込んだファンをどう掃除するか。最近見ているYouTubeのチャンネルで、ジャンク品を鮮やかなハンダ付けで直していくオッサン(お兄さん、と自称している)のやり方によれば、「全ばらし」してプラの部分を「中性洗剤で洗」えば良いのだ。
僕に電子工作とかそういったものの才能は無いが、YouTubeを見ているので、なんとなくできる気分になっていた。外装のネジは2カ所、オモテから見える爪が1箇所。開けるのはそんなに難しくなかった。中身は、、ACのモーターだし、それがスイッチとレギュレータ?かなにかを通して繋がっているだけの単純なもの。これなら、全ばらししてもきっと組み立てられるだろう。
現状を写真にとって、組み付けの部品を全部取って、プラ部分を泡泡にして洗い、残暑の日光で乾かす。使っていなかっただけあって、中の部品は綺麗なものだ。外装が乾いて、部品を組み付け直し(結構、部品はしっかりしていたので、割と高いんじゃ無いか、この商品という感想を持った)、一応モーターが回るかどうかテストしてから、外ぶたの爪をはめ込む。
完成。蓋をする前に通電テストはしているから、もちろん動く。中身はシロッコファンだったりするので、やっぱり割と高いんじゃないか。さて、だいたい新品な感じに生まれ変わったこれを、何に使おうか。
ひっくり返して製品シールを見ると、「デスクファン」と書いてある。そう、これは机で使う、扇風機?として作られたようだ。なるほど、しかし、これを貰った当時の僕は家で「デスク」を使うという事はほぼ無かった。
しかし、今は「デスク」があって、絶妙にエアコンの空気の流れから外れていたりする。実に、実用的に、使えるんじゃ無いか。そんな気が、する。2007年から13年越しで、新品に組み上がったカタツムリファンは、デスクファンとしてデスクに設置されることになった。