トラックの荷台

Dizzy city

Photo: “Dizzy city” 2011. Singapore, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

早朝。空港からホテルに向かうバスの窓から、見慣れない、光景を見る。いや、僕にはそれは異様な光景に見える。

トラックの荷台に座り込む、浅黒い肌と、彫りの深い顔立ちの人々。

多分、交通法規が日本とは違うのだろう。トラックの荷台に20人ぐらい、座っている。反射板付きのベストとヘルメット。服は普通のシャツ、そしてサンダル。大気汚染を避けるためか、目だけを出して布で顔を覆った姿の男も多い。


開発の進む湾岸地域に向けて、似たような労働者を乗せたトラックが、バスの左右にも、前にも、走っている。彼らが我々のバスに向ける視線は、一様に鋭い。

シンガポールは小さい国で、ITや貿易に強い、それぐらいのイメージしか無かった。しかし、もちろん、国はそれだけでは動かないのであって、Foreign Workerと呼ばれる建設業やサービス業に従事する外国人労働者が大量に雇用されている。

その意味では、シンガポールは非常に「発展している」のであって、安い賃金で手を上げる労働者が居る限り、例え、人口500万人足らずの国であったとしても、そこに海外の働き手が入り込んでくる状況は、日本と同じなのだろう。だが、ここまで露骨であることが、僕を怯ませた。


日中。街中を歩いていると、Foreign Workerとすれ違う。疲れ切った足取りで、目線は鋭い。

ふり返ると、彼も、街も、遙かに遠い。無限に、遠い。

ぼーっとしていることについて

銀閣寺 銀沙灘

Photo: “銀閣寺 銀沙灘” 2011. Kyoto, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

最近になって気がついたのは、僕は、ぼーっとしているのが、大好きだ。ってこと。


世の中には、予定表を埋めないと気の済まない人というのが結構居て、そういう人にとっては、ぼーっとする時間というのは、予定と予定の間にできてしまった、納得のいかない隙間のようなものに見えるようだ。

「あの人暇なんじゃない?」そう言われることを、恐れているようにさえ見える。忙しいのは結構だけど、誰もが、ほんとにそんなに忙しいのかな。


そもそも、ぼーっとするために、働いているんじゃないのかな?

何を考えている訳でもない。何をするわけでもない、そんな時間がすぎるのは速い。何もしないで夕方。そりゃ、いくら僕でもそんな風に日が暮れた時は少し罪悪感を感じたりはするけれど、それ以上に、ゆっくり送れた一日が良かったと思ったりするのだ。

カレー部活動報告

A white dish at the Indian restaurant

Photo: "A white dish at the Indian restaurant" 2010. Tokyo, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

カレー部の部活があると言うことで、東京某所の南インド料理店に行く。つい最近まで、インド料理 = カレーぐらいの認識しかなかったのだが、ビリヤニの旨さに目覚めてから、実は他にもずいぶんといろいろな料理があることを知った。ドーサもサモサも、店や国によって色々だ。


とても印象的だったのは、参加者の一人が料理をサーブしてくれる店員に、いちいち

「ナマステ」

と現地の言葉でお礼を言っていた事だ。彼は、追加飲みで寄ったなんてことはない居酒屋の中国人店員にも

「シェイシェイニー」

とお礼を言っていた。


知っていても、なんか恥ずかしくてできないことなんだけど、店の人は嬉しそうだった。見習ったらいいかなぁ、と思いつつも、なかなか出来ない。せめて、外国では “Thank you”ではなくて現地の言葉で言うようにしている。

“Terima kasih”


そういえば、この店ではもう一つ驚くことがあった。一人がインドのウイスキー(インドにはウイスキーが有るのだ)を頼んだ。(恐らくは酒を飲まない)インド人ウエイターによれば、かなり強い酒らしい。飲み方を訊かれて

「ストレートで」

と頼んだ。

その時のウエイターの驚いた顔。僕は、まさにインド人もビックリという顔を、生まれて初めて見ることができたのである。