人間は
同じ瞬間を何度でも生きられる。
写真と紀行文
人間は
同じ瞬間を何度でも生きられる。
Contax T3 は、T2 の後継機として2001年3月に発売された。10年ぶりの新しいTは、ガチッと無骨な前作とはうってかわって、滑らかで、繊細な、全く新しい T だ。
T2 のユーザーが一番戸惑うのは、おそらく、その質感である。前作が、握った瞬間に威圧的とも言える存在感を感じさせたのに対して、T3 は、あくまで控えめで、脆いとさえいえそうな繊細さを感じさせる。全体的に動作音は静かになり、機械然とした T2 の雰囲気から、良くも悪くも現代的なカメラになった。
さて、この T3 は、文字通り T2 の正統な後継機として開発された、35mm ハイエンド AF & AE コンパクトカメラである。T2 で問題とされていた部分の改良が行われ、(AF 精度、シャッター速度、フィルター対応、接写能力、周辺光量等)更なる小型・軽量化が図られている。ユーザーの声がきちんと反映された改良には、使い込む ほどに納得させられるものがある。あくまで、T2 があっての T3 という、正常進化の製品だと思う。以下、個別に改善点を見ていこう。
外装は従来通りチタンを基本とするが、樹脂部分の露出が増えた。これは、総合的なコストダウンの影響もあるのではないかと思う。もう少し高くても良 いから、外装の金属率を増やして欲しかった。特に、レンズの胴回りが樹脂で Zeiss ロゴも印刷なのはちょっと悲しい。ただ、T2 で評判の悪かった、レンズの蓋はしっかり固定されるようになった。撮影の際の質感として重要なレリーズボタンは、従来通りの多結晶サファイアで安心。
一新された Sonnar T* 2.8/35 は、画角が変更され、発色は T2 より現代的かつビビッドに、解像度は更に上がった。(ポジを見ても、一眼レフとの区別はつかないと思う)絞り込んだ際の、周辺光量の低下が大幅に改善され たのは、レンズの間にシャッターを内蔵させる方式をとったためだ。このサイズで、フィルターアクセサリーが付けられる。とにかく、当たりはずれが少なく なって、撮りやすくなった。
操作性としては、ダイアルの割り当てがかなり変わってしまい、T2 に比べて直感性と操作性に劣る。レンズのリング上でのマニュアル絞りが廃止され、T2 の MF ダイアルに当たる部分が絞りダイアルに変った。しかもロックボタンがついていて、とっさに操作できない。T3 では事実上、AF & プログラム絞りで使う形になると思う。その部分でのコンセプトは、変わってしまったと言えるのかもしれない。ただ、カメラ任せに撮って、別に普通に撮れ る。むしろ、後述の制御系の進化によってはるかに「当たる」確率は上がっており、これも一つのアプローチなのだと思う。
制御系。ピントの合わせ易さと測光精度には、格段の進歩が見られる。一言で言うと、誰がシャッターを切っても、ちゃんと写る。T2 のようなある種の「怪しさ」はなくて、思った通りの写真が撮れる。T2 でもかなり静かだったシャッター音はさらに小さくなった。音は、あまり良くない。ファインダーは、T2 より暗いが、一般的なコンパクトカメラに比べると、見やすい部類に入るのではないかと思う。
T3 の Sonnar T* 2.8/35 は接写能力が改善されて 35cm まで寄ることができるようになった。この部分は、コンパクトカメラの用途から考えても、非常に使い勝手が良いと思う。
描写は、T2 に比べておとなしいが、解像度とコントラストは優秀。良いレンズだ。光線条件が悪くても、きちんと色を出してくる。どこかおっとりした絵を出す T2 に比べて、T3 の撮ってくる絵には独特の緊張感がある。
最初、持ったばかりの時は T2 に比べて頼りなく感じた。しかし、その描写力に気が付いてからは、頼りになるサブカメラとして常用している。この T も、長くつき合ってその真価が分かる機械だと言える。CONTAX の性能とデザイン上の美しさを維持しながら、よくここまで小さくできた。全体的に言えば、サブ一眼レフとしての実力を十分に持ったコンパクトカメラだ。
注1:写真の T3 TITANIUM BLACK は 2001年6月発売
注2:カスタムファンクションの標準設定では、AF 時のレリーズタイムラグがかなり体感されるので、2b にした方がよい
少し前。
中国での亡命騒ぎがあって、それについての同情的な意見が多かったけれど、僕は別の感想を持ってそのニュースを見ていた。今回の亡命希望者は 5人。だから、どうにかなった。これが 50人だったら?500人だったら?5千人、5万人、50万人だったら?
21世紀、貧富の差の拡大が、人類にとって最も困難な課題と言われている。世界的規模で、個人の所得格差、国家間の経済格差は拡大する一方だ。
今や、国と国、個人と個人を隔てているのは、思想や政治体制、言語・文化ではない。経済の格差が、壁をつくり、憎悪や闘争を生み出す。貧しい国との国境には厳重な国境線がひかれ、低所得層の集まる街頭には監視カメラが設置される。
みんな「持たざるもの」ではなくて「持つもの」になりたい。
そもそも、富が全ての人にいきわたる事はない。格差こそが、経済を生み、富を生むからだ。だとすれば、貧富の差は、経済が高度に発達した結果もたらされた、ある種の現実解なのかもしれない。
ここまで書いてみたところで、何か結論があるわけではない。ただ、重いため息がでるだけの話。
さて、明日も仕事にいくか。
注:所得層によるターゲッティングでカメラを設置しているのは、イギリス等。