清水寺

Photo: 2000. Kyoto, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Kyoto, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

「清水の舞台から飛び降りる」の清水寺。メジャースポットだけあって、参道には観光客目当てのツーリスティックなお店が並んでいた。たちの悪い原宿みたいになっていて、うんざり。

それでは、いっそ老夫婦のやっている渋めの焼き物屋にでも行ってみようかと思うものの、いったいこの商品は昭和の時代からここに並び続けているのではないだろうかと思うような代物ばかり。

却下。


この日、京都は曇り空。朝から、湿り気のある、強く冷たい風が吹き付けていた。頭の奥がキンッと痛むような、そんな寒さだ。

清水寺は、小高い山の山腹に張り付くようにして建てられている。清水の舞台を過ぎて少し山道を登り、薄暗い空に5重塔のシルエットを望む。ススキが、一足先に過ぎ去った秋に取り残されたように、風に吹かれている。

なんとなく、池波正太郎っぽいシーンが撮れた。


山を下ると、湯豆腐を食わせる店があった。どんな豆腐が出てくるのかは怪しい感じであったけれど、湯気の立ち上る白木の桶に負けた。、、ん?店内はいっぱい?外の席?

目をやると、ふきっさらしの屋台で、カップルが寒さに震えながら薬味をつついている。「外の席」では、どうみても余計寒くなりそう。諦める。どこか暖かいところで熱燗と湯豆腐を、、。


そうこうしているうちに、F100(カメラ)の電池が低温に根を上げ、CPUがエラーを表示して動かなくなった。一眼レフカメラとはいえ、完全に電子制御されているため、CPUが動かないとシャッターも切れない。

進化は、時として脆弱。

フルカラー Visor

ハンドル名と、実名と、あだ名の区別がつかなくなっているネットエイジな皆さん、こんにちは、羊ページです。いっそ、メールアドレスに改姓してみてはどうですか?


「羊君!」

と呼ばれて振り向くと、そこには Visor に挿さったデジカメが光っていた。部署のシニアコンサルタントが、わざわざアメリカから取り寄せた Visor &専用デジカメモジュール。フルカラーVisorの液晶には、「へっ?」という顔をした振り向きざまの僕の顔が映し出されていた。

ああ、フルカラー Visor。少し待っていれば、日本でも、日本語版が買えるのに。たった、数週間の先行優位を見せつけるためだけに、わざわざアメリカから買うか。しか も、デジカメモジュール付きで。まあ、そういう「人柱根性」こそが、ハイテク業界をここまで育てたのではあるが。


いや、それにしても何かが違う気がする。「羊君」て。

僕はまさか会社に入ってから、自分があだ名で呼ばれるとは思っていなかったし、ハンドル名で呼ばれることになろうとも思っていなかった。更に言えば、「羊」と呼ばれるとは想像もしていなかった。それで反射的に振り向いた自分も悲しい。

もうすぐ5年目なんですけどね、入社して、、。

注1:シニアコンサルタントというのはコンサルタントの中でも偉めの人、つまりジジイである。
注2:Visor というのは Palm 互換の PDA。背面にスロットが付いていて、いろいろと役に立たないモジュールを挿して遊ぶことが出来る。言うまでもないことだが、カラーである必要は、あまりない。
注3:いつも羊と呼ばれるわけではありませんけどね。

世の中はそんなに甘くない

テレビの転職情報誌の CM を横目で睨みつつ、「俺の給料は低すぎる」と思っている皆さん、こんにちは、羊ページです。世の中はそんなに甘くないと言う噂を、最近よく聞きますよ。


最近、僕の勤務先から転職した人、何名かに聞きました。転職してみて、昔の会社(僕の勤務先)をどう思いますか?

「あの楽さ加減で、あの給料をもらえる会社は他にない」

まさしく正論である。僕の勤める会社(外資系コンピュータメーカ)は、別に全くもって楽々というわけではなく(仕事が合わない場合には、相当キツイ 場合がある)、夢のような給料がもらえるわけでもなく(純粋な電機労連系よりは、多いかもしれない)、福利厚生が素晴らしいわけでもない(社員クラブはな いけど、健康保険はあるよ)。

しかしながら、そこでは、なんとも言えないバランス感がかもしだされており、居心地は悪くない。特に業績が飛び抜けているとか、先進的だとか、そん なことはないのだが、「バランス」という部分に於いては、まさに絶妙。もろん、それを「ぬるま湯」という人もいる。それは、捉え方の問題である。


僕は仕事の性格上、様々な会社とお付き合いしてきた。金融、運輸、製造、サービス、流通、公共などなど。でも、「あ、ここなら良さそう」と思った会 社は実は 2社ぐらいしかない。しかも、その2社でさえ、いざ踏みきろうという気にはなれないのだった。ちょっとだけ、紹介しておくと、、。


1社は、とある外資系製造業で、ホンモノの木材でつくられたウッディーな内装が素敵な会社だった。パーティションが木製っていうのがいいし、床も木 だからアレルギーのある人なんかにもいいだろう。広々したオフィスでは、いかにも外資系な感じのマネージャーや、セクレタリーがゆったりと働いている。そ の会社、主力製品は、がっちり特許に守られているので、将来性や収益性に於いて、なんの不安もない。素晴らしいが、主力製品は僕の完全なる専門外。しか も、メールや社内文書は全部英語。なんちゃって外資系ではないらしいのでパス。

もう 1社も、製造業の外資系。ここは「金持ち」の一言に尽きる。専用セキュリティーシステムのついたゲスト用のマシンルーム、大口径プロジェクター(凄く高 い)が 2セットもあるトレーニングルームなど、とにかく湯水のように金のかかった社内設備。私のようなしがない人間の訪問に、担当マーケティングやら、担当 SE やらが山のように出てくる潤沢なヒューマンリソース。給料も凄くよいと思われる。更に、ある種の寡占寸前企業なので将来性もある。でも、、これまた主力商 品の領域が微妙かつ決定的に違うのでパス。あと、下手をすると勤務先が筑波になりそうでコワかった。


ということで、転職って難しい。つまりは、「バランスによる居心地の良さ」というのは、自分が「慣れている」ということによる要素が大きいわけで、良くも悪くも自分が今の勤務先に染まっていることを表しているに他ならない。

転職した友人の一人と、久しぶりに電話で話しながら、そんなことを考えていた。

注1:もちろん、会社というのは組織であり、組織と言うからには「凄く大変な場所」とか「凄く大変な役回り」というのもあります。あしからず。
注2:「パス」したのは、僕が勝手にパスしたのであって、その実、頼んだって入れてくれやしないとは思う。
注3:「この人の転職の基準は、内装とか設備なんだろうか?」という疑問は、かなり核心をついていると思う。
注4:関係者の皆様へ。この文章の主旨は、僕が「大変な仕事を志願したがっている」ということでは絶対にありません。