沖縄の記事一覧(全 28件)

本場の「ほんだし」

Okinawa soba (thick noodles served in a pork soup)
Photo: “Okinawa soba (thick noodles served in a pork soup)” 2015. Naha, Okinawa, Japan, Apple iPhone 5S.

台風が去った後の那覇は、暑さがぶり返していた。

一人で昼メシを探しに、国際通りの方まで歩いてきた。昼間の裏路地には、どこか寝ぼけたような空気が漂い、夜の喧噪を想像するのは難しい。

お土産屋、沖縄料理屋、お土産屋、沖縄料理屋。通りは、そんな感じで観光客相手の店が連なっている。あまりの暑さに、大きな土産屋に入って涼む。マーケティング的な工夫が凝らされた、およそ思いつく限りの土産物が並んでいる。

紅芋は、ちんすこうにされ、ケーキにされ、アイスにされ、行儀良く買われるのを待っている。どれもピンとこない。


店を出て、料理屋のメニューを覗いて、また歩き出す。昨日、仕事で会った新聞社の人とすれ違う。向こうも驚いた風で、いくら島とはいっても、那覇の大通りで再会するとは思いも寄らない。でもやっぱり、島は狭いのかもしれない。

すいぶん歩いているうちに、通りの外れの方まで来てしまった。ここまで来たなら、公設市場で何か食べるのも良いかと思って、市場に入る。自分の学生時代の記憶にある市場とはちょっと違って、アジアのいろんな所で見てきた市場に凄く近い。特に、臭いが。

アジアの臭いだと思って居たものは、有機物と、温度と、風の感じと、そういうものが作り上げているのかもしれない。本土では嗅がない臭い。


市場の二階は、大騒ぎだ。屋内だが屋台街のようになっていて、何軒もの食堂が、だいたい同じようなメニューで客を奪い合っている。ひっきりなしに料理が運ばれ、観光客の口に運ばれ、喧噪が市場の高い天井に響いている。

僕は、エレベーターの脇の椅子に座って、たいして違いの感じられない店を、ネットで調べている。で、うんざりする。ここはやめて、沖縄そばを食べに行こう。もっと、地元の人が毎日食べてるようなやつを。


市場を出て商店街を奥に進むと、だんだん売っているものが変わってくる。土産物屋は減り、ジューシーをパックに詰めたお総菜なんかが、たぶん、地元の人のお昼用に並んでいる。良い感じだ。

ついに商店街が途切れ、目当ての沖縄そば屋が見えてくる。やはり、かなり、そうとう、入りづらい。というか、入る感じじゃ無い。厨房をぐるっと取り囲むように半分野外にカウンターが配置され、場末のスナックのような椅子が、並んでいる。

客はまばら。食券で一番普通の沖縄そばを買う。400円、安い。厨房の様子を見ながら、自分でお茶をくんで飲む。クソ暑い那覇で、クソ熱いお茶。ほどなく、そばが出てきた。


甘口の鰹だしに、ぼそっとしたそば。すごくうまい、とかそういうのでは無い。土曜日の昼ご飯みたいな味。甘く味付けされた豚肉と、青ネギが嬉しい。カウンターを挟んで厨房では仕込みが続いている。そばの汁を仕込んでいるのだろうか、大きな鍋を相手に女将さんが格闘している。よっこらせっと、大きな袋を取り出す。業務用「ほんだし」

沖縄料理の出汁の基本は鰹だしだ。特に、沖縄の人は「ほんだし」を好んで使うと、沖縄出身の人に聞いたことがある。そして、業務用ほんだしを、客の眼前でなんのてらいもなく、がばっとお玉でとって、鍋にぶち込むその感じ。その清々しい感じで、むしろ、そばの味は2割ほど美味しく感じたのだ。

積年の謎の正体、臭豆腐

Stinky tofu
Photo: “Stinky tofu” 2012. Taiwan, Apple iPhone 4S.

僕は、その臭気を、頭の何処かで人間の死臭だと確信していた。

その甘い腐敗臭は、熱風のような温度を持っていた。その臭気が鼻に入ると、熱い温度を脳が感じた。

中国大陸の至る所で、かいだ臭い。北京の公衆トイレで、少し似た気配を感じた。

上海のとっちらかった屋台街でも、感じた。中国腸詰のような露店の辺りで嗅ぐことが多い気がして、暫くは腸詰を炙った臭いだと思っていた。でも、実際は腸詰はそんな匂いはしていなかった。

あれは、絶対、何かの死体だ。「甘くて不快な腐敗臭」人が腐った時の臭いの記述は、たいていこんな感じだ。ということは。。中国は、怖いところだ。そう思っていた。


台北。少し迷いながら辿り着いた、点心の有名店。時間のかかる小籠包のつなぎに、ちょっと気になっていた名物も一皿取ることにした。安かったし。

そして、唐突に現れたのだ、そいつは、まさに、その臭いをさせて皿の中に収まっていた。臭いは、臭気というよりも、やはり熱気として感じられた。

台湾名物、臭豆腐。

名前は知っていた。20年近く前に台北に来た時から、名前は知っていた。臭いものだと言う事も知っていた。公衆トイレの臭いに近いとも書いてあった。だから自分から近寄ることはなかった。しかし、まさか、こいつがアレの正体だったのか。


今まで、自分の意志に反して、何かを食べられなかったことは無い。たいていの、まずい、変なものも食べてきた。でも、これは無理だ。不快を承知の表現で言うならば、目の前の丼に、ウンコが盛ってあるぐらいに無理だ。暫く逡巡した。しかし。

臭豆腐、箸の先についた一片を食べることもできなかった。

牛ミートソーススパ丼

Photo: 牛ミートソーススパ丼 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.
Photo: "牛ミートソーススパ丼" 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

ひとしきり飲んでコンビニへ。そして、仕上げのための弁当を各々買う。


友人が買ってきたのは牛丼。僕が買ったのはスパゲティーミートソース。これを開封の後、載せます。今晩のメニューは、牛ミートソーススパ丼になりました。

温泉卵をトッピングの後、歯触りのアクセントに棒カールをあしらう。これだけだと、青物が皆無で栄養バランスが良くないので、ネイチャーメイドのマ ルチビタミン(錠剤)を振りかければ、バランスが良いかもしれません。よくまぜてできあがり。ビジュアル的には、「無理そう」なものが完成。

でも、これ甘辛で意外と美味しいんですけど。牛丼とスパゲティーは良く合うらしいという発見。

ここは沖縄。我々は、いったい何をしているのであろうか。


注1. まぜまぜご飯は、残さず食べるのがルールです。
注2. 決して残飯を撮影したものではありません。
注3. ホントにつくって、どうなっても知りません。