台湾、煤けた風景

From the windowsill in Taipei

Photo: “From the windowsill in Taipei” 2015. Taipei, Taiwan, Richo GR.

台湾の建物は皆不思議と、見事に煤けている。

特に可も無く不可も無い、ビジネスホテル。程よいホスピタリティー。

※2019のメモより。

煤けた壁と、台湾総選挙

Photo: "Far east mozaic."

Photo: “Far east mozaic.” 1995. Haebaru, Okinawa, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

先々週、奇しくも、というか確信犯的に友人のうち2名が別々に台湾に行っていた。一人は人生の終の棲家を探しに、一人は、、なんだ趣味かな。街をほっつき歩きながら送られてくる豆花とか、共産党の旗とか、いかげそ揚げとか、そういうものが互いに交わるでも無く、同じLINEチャットに勝手に投稿されていく。

ちょうど同じ日に新しく来たApple TV 4Kで、僕は東京から普通に台湾のニュース番組のライブを見ることができた。開票速報から、蔡英文の外国プレス向け勝利宣言まで。後世の歴史は、今のアジアの情勢をどう描くだろうか。もちろん、その時に歴史を描いているのは、その時代の勝者だろうが。


初めて台湾に行ったときは、現地のコーディネータには「ホテルの部屋には盗聴器があるかもしません」と言われて、大いにびびった。今考えれば、たかが学生の研究旅行に盗聴も無いと思うが、国民党一党独裁であった当時の台湾では、まだそんな警告にも真実味が感じられたのだ。

今、台湾でそういう緊張を感じる事は無い。すっかり変わった台北の世界標準な都市の風景、平和な夜市の賑わい。建物の外壁がなんだか煤けている事だけは、変わらないけれど。

日式居酒屋の廊下

Photo: "Izakaya corridor."

Photo: “Izakaya corridor.” 2019. Tainan, Taiwan, Apple iPhone XS max.

台北から台南へは、高鐵(新幹線)で行くわけだが、乗り換えやらなんやらで、それなりに時間がかかる。高鐵の駅は日本の新幹線と同じように、在来線の駅とはちょっと離れている。高鐵の台南駅から、在来線の台南駅まで行って、駅前のホテルに荷物を放り込むと、だいぶいい時間になっていた。

遅くまでやっていそうな居酒屋数軒に「ラストオーダー終わりました」と立て続けに振られた。面白い事に、どの店も日本式の料理を売りにしていた。入ることは叶わなかったが、どの日式居酒屋も若い客で溢れていた。台北と違って、台南の夜はあまり店も開いていない。地方都市なのだ。何ブロックも彷徨って、そして、なんとか見つけた別の日式居酒屋の看板に滑り込んだ。


もう、深夜だが台南の空気はじめっとした熱気を含んでいる。まさに熱帯夜だ。日帝時代から動いているんじゃ無いかと見える、年季の入った数台の大型扇風機が、ねばっとした空気をバタバタとかき混ぜている。南国独特の日差しと雨を避けるように作られた廊下に出したテーブルから、煤けた通廊を眺めるのは、とても良い風情だ。

そう言えば、台湾の居酒屋ではビールは自分で冷蔵庫から出すらしい。でも、日式なので普通に瓶を持ってきてくれた。薄い飲み口でよく冷えた金牌ビールは、それだけで十分だった。ツマミは、刺身などもあったけれど、流石に火の通ったものにしようという事で、焼き鳥然としたものを取ったが、なかなか良かった。

熱気の冷めない街路を、原チャリがなかなかの速度で走り抜けていく。その様子を見ながら、熱帯夜の暑気を、薄っぺらいビールで流している。そういえば、台南で何をするかは考えていなかった。