旅&食の記事一覧(全 233件)

エリートクラゲ

羊ページ管理者には、ピンポイントの好物がいくつかある。その一つが、中華料理の前菜でお馴染み、クラゲだ。従って、僕はクラゲにうるさい。

さて、今日食べたクラゲは、そんじょそこらのクラゲではなかった。言ってみれば、荒れ狂う東シナ海で厳しい訓練を受けた、エリートクラゲ。普通よ り、細く引かれたクラゲを、ごま油と少しの薬味で薄味、かつドライに仕上げてある。一口食べる。そして、それは口の中でポリポリするのだ。その歯ごたえ、 もはや、崇高と言ってもよい。

この一品。是非、クラゲ好きと一緒に挑戦していただきたい。じゃないと、猛反対される。一皿、1,750円もしやがるのだ。さすが、エリート。

かっぱえびせん 紀州の梅

深夜のオフィス。外は梅雨のまえぶれを告げる、生暖かい雨。300平米ほどのフロアに、まばらな人の気配。肩までの高さに仕切られたパーティションの一角に座り、ディスプレイを見つめる。蛍光管がたてる微かな高周波。

周囲に置かれた、数十台の PC やサーバーから聞こえる、「フーン」という独特の音。空冷ファンや、ディスクプラッターが回転する音だ。夜はマシンが元気。

時々、自分自身が立てるキーボードの音がする。

やがて、同僚の人が、パリパリとポテトチップを食べる音。パリパリ、パリパリ。

別の人がビニールをガサガサやる音。プシュー、パカッ。ん、それは「かっぱえびせん 紀州の梅」(缶入り)だな。

みんな、腹へってるのね。

行列の出来る、まずいラーメン屋

行列の出来る、まずいラーメン屋がある。

昼時、(暑くもないのに)腕まくりをしたオヤジどもが行列をつくるラーメン屋。昼間からラーメンを食べる、という感覚が僕には無いから、(特に、東 京ラーメンは昼間に食うものではないと思う)なんとなく敬遠していた。しかし、あまりにも常に行列ができているので、ある日、ついに暖簾をくぐった。もし かして、ウマイのかも?

店内は、平均的ラーメン屋の風情。汚すぎでもなく、キレイすぎでもない。(キレイなラーメン屋というのも、少しイヤだ)しかし、店内に貼り出された メニューは、やたらに種類が多い。メニューが豊富なラーメン屋が、うまかったためしはない。水の出てきたコップは、末期的に汚い。店内は、オヤジどもで いっぱいで、それも、なんか仕事の一線からは外されました、みたいな雰囲気の人が多い。どう考えても、やばい感じがしたので、普通のラーメンを頼んだ。

しばらくして、腹立たしいほど、なんの美味さもないラーメンが出てきた。正確に言うと、不味い、のではない。美味くないのだ。まずい、ならば面白い からまだいい。不味いものは思い出になる。美味くないものは、なんの思い出にもならず、やるせない感じだけが残る。うどんと山菜御飯のセットにサラダを付 けられたときのような、あるいは、山奥の民宿でマグロの刺身を出されたような、そんな嫌さ加減と言えばわかって頂けるだろうか。

出てくる料理は、最初味がわからないくらい熱い。親の敵のように熱い。(僕は、猫舌、猫手なので熱いものは基本的に苦手だ)舌は化学調味料でしび れ、醤油の質は限りなく低く、麺からはウンザリするほどのかんすいの臭い。それを、オヤジどもがフーフーいって食べている、フーフー。しかも、皆、満足げ に麺をすすっているのだ、フーフー。一緒にそのラーメン屋に行った同僚達は、うんざりした顔で、顔を近づけるだけで息苦しくなるほどアツアツのタンメンと 格闘している、フーフー。僕の味覚が問題というわけでは、ないらしい、フーフー。


僕は、その美味くない熱湯ラーメン自体に怒りは感じなかった。店主は、手を抜いて作っているわけではなく、ラーメンはこれでいいのだと、確信してつくっているようだった。むしろ、そんなラーメンを嬉々として喰っている見知らぬオヤジどもに、あきれ、恐怖した。

別に、美味いものを喰わなければいかん、などというつもりは全く無い。なんというか、美意識というか、センスというか、そういうものの完全な欠落が 悲しいのだ。だって、このラーメン屋の近くには、いろいろと美味しい店がある。手ごろな値段で、オヤジ好みの和食を出す店だってある。なのに、なぜここで 喰う。行列する。こういう人たちが、OLの手によって、ぞうきん汁入りのお茶とか飲まされてるんじゃないだろうか。言っておくが、このラーメン屋、値段は 決して安くはないのだ。こんな人たちに、食事を作っている奥さん達は(このオヤジどもは、どうみても、自分で作りそうにはない)、さぞかし、やりがいがな いに違いない。

「なんか食わしときゃいいのよ、どうせ味なんて分かりゃしないんだから」

注:作者は、「ホンモノのお茶くみ」というのを見たことがないので、想像。