タイミング

あるデザイン系のプライベートセミナーに行って、ハッとすることを教わった。

良いデザインのために大切なことは、そのデザイン自体が優れていることはもちろん大事だが、一番大事なのはタイミングだ、ということ。

これは驚いた。優れたデザインというのは、普遍性があるものだと思っていたし、良いものというのは単に時を超えてよいはずだと思っていたからだ。


同じように、良い文章もタイミングが大事だと言われた。タイミング、そうだな。

何かが心に届くか、届かないか。受け取れるか、受け取れないか。それは、タイミングなのだ。

ニセコルール

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ニセコの魅力は、一定の厳しいルールがあって、あとは極力規制が無いこと。日本のスキー場にしては珍しく、「ほんとにここがコースなの?」というような場所(森の中、雪崩の心配のない無圧雪の急斜面等)も、滑走可能。その代わり、立ち入り禁止の場所は本気で危なくて、入っているのを発見されたら、リフト券は没収だ。ニセコの山は日本で最も雪崩が多い山で、立ち入り禁止区域を遠くから眺めると、今にも崩れそうな雪庇が連なっているのが見える。
さて写真を見ると、スキーヤーの間を圧雪車が通っている。ニセコユナイテッドの一番南側に位置する、ニセコアンヌプリスキー場のナイターで驚くのが、この「人をコースに入れながらの圧雪」。普通、圧雪車(スキー場のゲレンデが平らなのは、圧雪車と呼ばれる特殊な機械で整地するからだ)が作業をする時には、コースから一旦人を出すものだが、ここは違う。
ゴミ収集車のような、あるいは、灯油売りの車のような、ファンシーなオルゴール音を響かせながら(「キンコンカンコン♪」)、4台の巨大な圧雪車が粛々とゲレンデを登っていくのだ。スキーヤーの間をぬって。圧雪車というのは、相当でかい(小さな家ぐらいある)ので、これが4台連なって迫ってくると、相当怖い。まあ、速度はゆっくりだから、巻き込まれることはまずないが、もし当たったらオシマイなことはよく分かる。
でも、こういう甘やかさないというか、大人なんだから圧雪車はよけて滑れ、みたいな割り切りというか、そういうのは好き。なんといっても、4台が順番に圧雪したあとの斜面は、レアチーズケーキの表面のようになめらかで、誰もシュプールをつけていないその場所を滑るのは最高。

iCon

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
そもそも、僕がコンピュータ業界で働こうと思ったのは、ジェフリーヤングが書いた「スティーブ・ジョブズ」(1989年刊)を読んだことがきっかけだった。パーソナルコンピュータの黎明期を描いた、とても良い本だった。

そして、僕は自分が思ったとおり、コンピュータ業界で働いているわけだが、ITバブルとインターネットの勃興に支えられたエキサイティングな時代は終わり、業界もかわり、一言で言うと「あまり面白くなくなった」。

その今に、もう一度原点に帰ってみるのはどうか。先頃出版された「スティーブ・ジョブズ」の続編とも言える、「スティーブ・ジョブズ-偶像復活」を読んでみた。Apple設立から、取締役会によって追放されるまでの前半を、前書を思い出しながら読み、そして、Pixer設立、Appleへの復帰、そしてiMacとiPodによる栄光の復活劇まで読み進める。


最初のスティーブ・ジョブズを読んでから 15年後に、改めてたどるジョブズの軌跡だが、やはり当時とはだいぶ違う感じ方をした。そして、描かれるジョブズの人間像にも、大きな変化があったように思う。

強烈なビジョンの力を信じ、未来と運命をそれに従わせる力を持った男。そのビジョンは世界を変えると、「信者」達は信じて従ったわけだが、その浮かされたような時代は終わったように見える。しかし、円熟したジョブズのビジョンは、より広い市場へのアプローチを可能にし、iPod や Intel Mac といった、新しい地平を拓いている。

この本の読みどころは、あるいは、後書きの部分かもしれない。印象的だったフレーズを二つ。

あるインタビューで、

コンピュータとテクノロジーについては、「これで世界が変わるわけじゃない。変わらないんだ」
(中略)「わるいけど、それが事実なんだ。(中略)人は、生まれ、ほんの一瞬生き、そして死ぬんだ。ずっとそうだ。これは、技術じゃ、ほとんどまったくと言っていいほど変えられないことだ」

誰あろう、スティーブ・ジョブズの言葉だ。あの、1984のCMフィルムをつくらせた、ジョブズの。

もう一つ、スタンフォード大学の卒業式で

毎朝、「今日が人生最後の日だとしても、今日、する予定のことをしたいと思うか」と自問する

という話。ジョブズにとっての、あらゆることのプライオリティーが変わったのかもしれない。これほどの男が、15年の間にこんなにも変わるのかと思う。とは言っても、同じ祝辞の中で、こうも言っている

「ハングリーであれ。分別くさくなるな」

そこには、革新者としてのジョブズが健在だ。