思いつきの記事一覧(全 906件)

コンベンションセンター・ディストピア・ランチのルール

Photo: “The rules of convention center dystopia lunch.”
Photo: “The rules of convention center dystopia lunch.” 2018. Las Vegas, NV, US, SONY Xperia.

初めての海外出張から20有余年、アメリカ出張におけるノウハウは高度に進化した。出張中の健康を維持するための、食事のノウハウ、つまりコンベンションセンターのランチにおけるメニューの選び方だ。(注:トレードショウ、やプライベートショウでは、たいていバカでかい会議場、コンベンションセンターが使われる。日本だと、幕張メッセとか、パシフィコ横浜とかが近い。規模は、もっと大きい。)

精神と肉体の両方に蓄積する疲労、減退した食欲、見た目と味の一致しないメニュー、外人ミーティングを控えたプレッシャー。この状況下で、正しくコンベンションセンター・ランチのメニューを組み立てなければならない。


まずは飲み物。季節を問わない強烈な冷房で、水分は相当に失われる。この状況では飲み物はコーラ一択。SASもお勧めの世界共通万能ドリンク。使う糖類の選択はローカルのベンダーに任されているが、フレーバーは世界共通で外しが無い。スプライトなんか、見た目がさっぱりしてて良さそうだが、メリケンのスプライトはなんか味が違う、ワイルドな味がする。自暴自棄になってドクター・ペッパーなどを選ぶのは、まあ自由だ。

軽く飲み物を選んだら、ファーストプライオリティーはスープだ。圧倒的な冷房からくる冷え、これは海外出張で日本人を悩ませる大敵だ。だから、スープが有ったらそれは迷わず、行列があっても、ウェイターが不機嫌そうでもよそってもらおう。それがトマト系ならだいたいうまい。クラムチャウダー系だと5割ぐらい不味かったりするが、熱のあるものをとれる貴重なチャンスだ。


選択肢にサンドイッチが有れば、それはだいたい正義。ハンバーガーとサンドイッチについては、アメリカは任せられる感じが有る。具がターキーだとちょっとがっかりするかもしれない。たくさん肉が入っていそうなものを取り敢えず選ぶ。流行に乗ってヴィーガンを選ぶのも悪くは無いが、中のオリーブが強烈な味だったりして、驚くかもしれない。

サラダ。サラダは取りたい。カリフォルニアの凶暴な日差しのなかで育った力強いほうれん草的な植物や、日本では高価なロメインレタス的なものを中心に選びたい。メリケンの油飯で体調を崩しがちなアジア人は、ここで野菜を取っておくべきなのだ。ベジタブル・ソテー的なものは火が通っていて魅力的だが、野菜炒めとは本質的に異なる思考で作られているので、味が無かったり、しつこかったり、未知のスパイスが混入している可能性が有る。


メインディッシュ。ここまで来ると、肉とかはあんまり取りたくなくなってくる。インド勢用にマトンカレー的なものが有ったりするならそれを取るのも良いが、消化に体力を削られる恐れがある。もしそこにサーモンが有れば、それはぜひ取りたい。アメリカ大陸沿岸には食用の海洋生物として、サーモンとカラマリの2種類が生息しており、あらゆるシーフード料理はこのいずれかから作られる。

カラマリの方は、たいてい夕食のスターターとして日本のお通しのように強制的にバンドルされてくるので、昼には出てこない。サーモンは法律でバターでのソテーしか許されていないので、いかなる状況でもこれを外すことはない。遠近法が狂っている関係で、切り身のサイズが日本とはかけ離れて大きいことに気が付かないかもしれない。昼にふさわしい量は一切れなので、厳守すべきだ。


これらのルールを守れば、写真のようなコンベンションセンター・ディストピア・ランチを素早く完成させることができる。これが、20有余年の成果だ。(一見すると少なく見えるが、もの凄く腹一杯になる)

スライムトマトジュース

Photo: “Slime tomato juice.”
Photo: “Slime tomato juice.” 2020. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

ドラクエウォークは、オンラインゲーの常としてもちろん色々言われているんだけど、とにかく歩かないと何も進まないというぶれない姿勢が素晴らしい。そして、それがドラクエ世代をひたすら歩かせる。ファミコン版ドラクエをやったことが無い僕も、ひたすら歩かされている。


ユーザーの要望をきちんと聞いて開発されている感じがあって、便利な機能もどんどん追加されて好感が持てるのだが、AI(迫真)による自動戦闘システムは既に洗練されすぎて、もはやAIの戦い方を見てプレイ方法を学ぶ感じになってる。

そんな中で、いまいち使いどころが疑問な機能が、AR記念写真機能。倒したモンスターをARに登場させて記念写真が撮れる。んー、最初は河にドラゴンを浮かべたりしたけれどあんまり使わないかも。


しかし、最近改めて使って見たら、近接エリアにも精度高くモンスターを置けるようになっている。で、それを飲み物に載せると、フロートみたいで面白い。(トマトジュースジョッキを)飲みながら、やっぱりDQWをやっている同行者に教えてあげたら、やり始めたよ。

初めて来た兜町の飲み屋、悪くない。スライムの乗ったトマトジュースジョッキも、画期的。

モエレ沼公園、HIDAMARIの静謐な景色

Photo: "GLASS PYRAMID 'HIDAMARI'."
Photo: “GLASS PYRAMID ‘HIDAMARI’.” 2018. Hokkaido, Japan, Fujifilm X-Pro2, Fujinon XF23mm F1.4 R, Velvia film simulation.

自分の中の、いつか訪れてみたい場所。そのリストにずっと入っていたのが、イサム・ノグチ基本設計のモエレ沼公園だった。僕が、イサム・ノグチ庭園美術館を訪れたのが2006年、それとほぼタイミングを同じくしてモエレ沼公園はオープンしている。


市街から、かなりの時間路線バスに乗って、終点のモエレ沼公園西口で降りる。西口、と言ったって、そこから公園の入り口まではまだ20分近く歩かなくてはならない。雨、そして5月とは言え北海道の寒風が吹き付ける。この季節に、公共交通機関で来るような所では無いのだ。(もっと近くにもバス停があるのだが、期間限定)

東側のアプローチから入ると、公園の直ぐ横は雪捨て場になっていて、なんとも言えない冷気が漂ってくる。その入り口をえんえんと歩き橋を渡ると、特徴的なガラスのドームが見えてくる。イサムノグチ美術館の展示室で嗅いだ土と藁の匂いとは全く異なる、金属とガラスのクリーンなピラミッド。


外の肌寒さに、真っ先にピラミッドの中に入った。悪天候をシャットアウトし、静謐な空間が広がっている。鉄骨の構造と、雨にくぐもったガラスの向こうに広がる景色。この場所は美しいなと思う。広いのか、狭いのか、密なのか、疎なのか。それも居る場所、向ける視線でどんどん変わってくる。ピラミッド、とは言ってもその形状は単なる四角錐ではなくて、公園側に向けて切り欠いたように開かれている。

そして、鐵とガラスで出来た空間には、温かみが漂っていた。