普段、Windows で ASCII 配列キーボードを使って居る人は(外資系で PC を支給されているとか、UNIX の御代からそうしているとか、使いもしないカナ入力用のキートップが気に入らないとか、いろいろ事情はあるだろう)右 ALT キーで、日本語と英語を切り替えている人が多いと思う。しかし、Mac の場合、ASCII 配列で使用すると日本語と英語の切り替えは、標準では Cmd + Space となる。System 7 の時代に Mac を使って居た頃は、まあそういうものだと自分を納得させていたが、頻繁に使う切り替えて 2つのキーを使わなくてはならないのは、やはり煩わしい。
そこで、Mac 用のキーボードリマップツールであるKeyRemap4MacBookを使ってなんとかならないか、もう一度よくよく設定を見直してみた。そうすると、For Japanese の中の、”Command_R to Command_R (+When you type Command_R only, send KANA/EISUU(toggle))”というのが、まさに僕の求めていた、シングルキーによる日本語/英語の切り替えを可能にする設定だった。
実際にこの設定で使って見ると実に便利。Mac で文章を書いて、そのまま Virtual Box で Windows を使ったりしても違和感が無い。Space の隣で日本語/英語が切り替わるというのは、僕にとってはとても自然で入力速度が目に見えて上がる。
Cmd + Space での切り替えになれている人が、この設定をわざわざ使う必要は無いが、Windows の挙動の方が良いと思う人は、是非試してみて欲しい。
で、MacBook Air 13インチ(Mid 2011 / US ASCII)を実際に買ってみた。使い始めて 4ヶ月、今回はハードウェア部分に絞ってレビューしてみる。
まずは最も懸念していたのはキーボードだ。ThinkPad を選択する人の多くは、キーボードへの拘りがあると思う。13インチの Air の筐体は、シングルスピンドルの Windows ノートに比べて、一回り大きい。キーボードの横幅も、キー 1個分ほど広い。アイソレーション型なので、キー間も広く開いている。このため、打ち心地は、ThinkPad よりも指が左右に開く感じになる。
これだけ薄い Air の打鍵感や剛性感はどのようなものか。Air は薄いが、金属削りだしの Unibody により、打鍵によるボディーの軋みが一切無い。剛性の高い ThinkPad でも、軋みはゼロではないが、Air はまさに軋みゼロだ。これによって、打鍵の印象は非常に良い。これだけの剛性感のあるノートのキーボードは未体験。キーボードユニットまで含めての削りだしボディーを、他社が真似するのはコスト的にも技術的にも困難だろう。
ただ、Mac の純正キーボード感じる、「あと少し大きい」という印象は昔のデスクトップ Mac の純正キーボードと同じだ。僕の手がそれほど大きくない、というのも理由かもしれない。打鍵感は、TPとは全く異なる方向性と言って良い。ただ、打ち心地は快適であり、結果として打鍵の速度にそれほどの差異は無い。
Air は非常に広いパームレストを持っており、打鍵時にはかなりの確率でトラックパッドに手のひらが触れる。しかし、Air のトラックパッドは手のひらには反応しない。どうやって判定しているのか分からないがこのような UI の洗練は素晴らしい。トラックポイントが、その登場以来、スクロール機能の追加を除けばあまり進化をしなかったのに比べ、従来のトラックパッドと見た目はそっくりなのに、Airのトラックパッドは、まったく新しい操作感を提供している。又、Mac には右クリックが無い、と思っている人も多いかもしれないが、Air のトラックパッドには継ぎ目こそ全く見えないか、左右にクリッカブルな領域が設けられており、設定次第で右クリックも使う事ができる。なお、デフォルト設定だと、タップを受け付けないので、Windows ユーザーは戸惑う(故障だと思う人も居た)かもしれない。
トラックパッドについては素晴らしい、という感想しか無い。
電源周りを見ていく。ThinkPad でひっきりなしに壊れていた、AC アダプターのコネクタ部分(マシン側)。家庭で使う場合、コードを引っかけたりして不要なテンションや曲げが発生して、断線に至る。結果として、何個も AC アダプターを買うハメになっていた。Apple の AC アダプタ機構である MagSafe アダプタは、コネクタ部が磁石で固定されているため、一定以上の力かかかると簡単に外れる。これは単純で、確実な方法だ。コネクタは長方形で、外周部が磁石になっており、本体に近づけると吸い付くように接続される。コネクタには LED が付いていて、充電状況を示すようになっている。しかもこのコネクタは逆挿しが可能になっており、どちらの向きに繋いでも動作する。
この方式が、実際に AC アダプタの寿命を延ばすことになるのかは、これから使っていかないと分からないが、何度もケーブルを引っかけては、MagSafe の機構でうまく外れているので、効果は期待できるのでは無いかと思う。
Air を使っていると、通常のノートに、いかに無駄なものが多く付いているかがよく分かる。箱から出した状態で、Air に無駄なロゴシールや注意書きシールの類は全く無い。又、キーボード以外にはなんのスイッチ類も存在しない。更に、その表面には目に見える LED というものが無い。電源ランプでさえ、AC アダプタのコネクタ側に付いているだけなのだ。例外はディスプレイ上のカメラがアクティブの際に点灯する LED だが、これも普段はボディーの色に融け込んでいて、点灯して初めて存在に気がつくレベルだ。「当たり前」になってしまっている邪魔なものが、技術でちゃんと消されている。工業デザインの深さを感じる。
最後に、速度や性能について。僕が使って居るのは、13インチ Air の全部入り(Core i7/4GB Memory/256GB SSD)で、既発売の Air としては最も速い。実際に使って見て思うのは SSD の圧倒的な速度である。システムの起動速度は驚くほど速く(iPhone より速い)、ファンが強くまわらない限り、無音と言って良い。HDD の動作音を感じないで使える事の快適さは、FDD ベースのマシンに HDD を増設したとき以来の衝撃、と言って良い。
ハードウェアとしての Air の完成度の高さは、他社のノートの追随を許さない、異なる次元のものだ。そこから生まれる体験も、一線を画している。これを称して、ノートの完成形と言う人も居る。少なくとも、20世紀に生まれたパソコン、から一つ飛躍している製品であることは間違いない。積み重ねの中で進化しつつも他のノートとの差異が分からなくなりつつある ThinkPad に比べ、他の全てと一線を画すAirの革新性には、一度は使って見る価値があると断言できる。