旅する理由

New highway
Photo: “New highway” 2013. Greater Noida, India, Apple iPhone 4S.

今年、6回目の出国のために、夜のターミナルでバスを待つ。父親が死んで、そういえば、彼の居る、そんな家が嫌で旅が好きだったんだと思い出す。


旅はいつか終わり、そして帰らなくてはならない。だから、初めて一人暮らしをした時は、自分の帰る場所を自由に決められるのがとても嬉しかった。

今、自分が父親であってもおかしくない年齢になった。旅先で、ふと、自分がここで毎日生活していたら、どんな気分がするのかと思う事がある。家族の営みというものが、気の遠が遠くなるほどの数で、同時並行で、世界中で、今日も続いている。


ニューデリーから車で1時間ほど行くと、田園地帯が広がっている。その真ん中を、真新しいハイウェイが貫く。雨季の初め、川は増水して柔らかい葦の茂みに覆われた河岸を飲み込み、水と陸の境目はどこまでも曖昧だ。黒く光る農民の肌と、置物のように点在する牛たち。ただならぬ熱気と苛烈さを持った太陽が、雨上がりの川と水田を舐め尽くし、黄金色に輝く緑一色の風景を作り上げている。

こんな美しい景色はみたことがない。僕は写真を撮ることも忘れて、運転手にインドの田んぼは綺麗だねー、とさかんに話しかけた。人類はここからやって来たんだよ、と言われたら信じてしまったと思う。でも、僕はただの旅行者で、その景色は10分せずに、はるか後ろに通り過ぎてしまう。

僕が帰るべき場所は、どこだ?

南紀白浜上空

Bird.
Photo: “Bird.” 2013. Agra, India, Apple iPhone 4S.

南紀白浜の上空まで、飛行機は戻ってきた。

多分、何度も書いている事だけれど、大富豪になりたいとは思わないが、ビジネスクラスで旅ができるような人生は良いと思う。

選択の自由、それは足元の広さ。

もちろん、望みは尽きないのだろう。もっと、良い目が見たくなるのだろう。でも、有る程度が足りているとすれば、これぐらいか。


デリーのあの喧騒や、メルセデスの窓を叩く物乞いの声。それは世界の縮図で、僕はずいぶんと甘い場所にいるのだとは思う。だから、どうしろと?

おっさんデイ

Buddy's day
Photo: “Buddy’s day” 2012. Tokyo, Japan, Apple iPhone 4S.

レディースデイなる、ジェンダーの偏ったフェアに日々納得のいかないメンズの一員としては、それに対抗するフェアをしてくれる店も数少ないながら増えている事に、心強さを感じている。

前にドイツ系のパン屋で見かけたメンズデーは、恐ろしく食べ応えがありそうな全粒粉パンが割引されていて、いかにもドイツ的合理性に溢れていて良かった。


しかし、おっさんデイというのは、開き直りすぎでは無いのか。テキーラ 500円は魅力だが、正直、行きたくは無い。