本当の源流?

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film
Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

「源流っていっても、どれってわけじゃ、ないきねぇー」

地元の人びとは、口々にそう言った。四万十川を遡上して1日と半。最初は堤防によって囲まれていた川の両岸は、やがて田畑になり、藪になった。川のカタチはどんどんぼやけ、幾つもの流れに分かれ、そして僕たちは四万十川を見失った。

木も水も、人が名前をつけて初めて、「何か」になる。森も川も、人間が名付けてはじめて名前を持つ。この水の流れを、誰かが四万十川と名付けた。そして今日、四万十川は理屈としては確固として存在し、地図に載っている。

しかし、逆に言えば、地図に載っているから川だと思うわけで、実際には目の前に水が集まって流れる場所があるにすぎない。その流れがどんどん細くなっていった時、いままで揺るぎない存在に思えていた四万十川は、急にあやふやな存在に思えてくる。

本当の源流?そんなものはないのだ。

チューブ

Photo: 1995. London, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38
Photo: 1995. London, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

地下鉄駅。びびっているので、手ぶれがひどい。だって、なんとなく怖い雰囲気なのだ。

トンネルが造られた時代が古いだけに、口径が小さい。ロンドンの地下鉄が、「チューブ」と呼ばれる所以か。地下鉄の屋根やドアも、トンネルに合わせて丸っこくカーブしている。

その狭苦しさと、強引なドアの開閉のおかげで、日本の感覚で駆け込み乗車すると、確実にドアに挟まる。僕も1回挟まった。挟まりながら乗り込んで、周囲を見回すと、乗客が恐怖に強張った顔をして僕を見ていた。どうも、ロンドンの地下鉄で駆け込み乗車をすることは、もの凄く危ないことらしい。

神は全てを救う

Photo: 1995. London, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38
Photo: 1995. London, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38

地下鉄で看板を背負う男。看板には「神は全てを救う」とあった。

ロンドンの地下鉄は、あまりがらの良い乗り物ではない。むっとした湿気、物乞い、看板男。カメラのレンズを見とがめられないように、細心の注意をする。

地下鉄に乗って、名高いハロッズ・デパートに行く。ここは、本当に楽しい。ターゲットは裕福な奥様方なので、キッチン系の品揃えが充実している。特 に、台所雑貨のフロアは、ハロッズ・デザインのいかしたエプロン(鮮やかな野菜や果物をあしらったやつ)、ピカピカの調理用具、目を見張るランチョンマットの品揃え、料理をしない人でもワクワクするフロア。更に、地価食品売り場も楽しい。目にも鮮やかに盛り付けのチョコレート、さすがに充実している紅茶の 量り売り。ここでお土産を買えば、リーズナブルに、しかも品質のしっかりしたものを求めることができる。

海外でお土産を買うために、地元のデパートに行くのは、とても賢い考え。ここだけの話し、僕から海外旅行の土産(食べ物)をもらったら、それは十中 八九デパート地価食品売り場だと思っていい。もちろん、金が余って仕方の無い人には、それに相応しい宝飾品のフロアもちゃんとある。ここはハロッズなの だ。

ところで、ハロッズに来たら、やはりイングリッシュ・アフタヌーン・ティーに挑戦するべき。3,000円ぐらいとられるが、それだけの価値はある。 特に、焼きたてのマフィンの美味いことといったらない。マフィンとは、こういう食べ物だったのか、と、心底感動する。ただし、美味いからといって大事に食べすぎると、冷めてしまうので注意。それは、とても悲しい。(悲しかった)