旅行記の記事一覧(全 437件)

新潟、墓碑。

Life corridor.
Photo: “Life corridor.” 2015. Niigata, Japan, Richo GR.

そして、新潟までやってきた。

年老いたご両親が僕たちを出迎えてくれた。迎えには行けない、とメールには書いてあったが、きっと2人が居ることはなんとなく分かっていた。

・・・暫く連絡をしていなかった。

真夜中に「さようなら」と書かれた web のエントリーを見つけて、翌日、なんとか住所を調べて同僚2人と一緒に家にたどり着いた。チャイムの呼び出しには誰も出ることは無く、駆け込んだ交番の警官は、つい数日前にその家主が自ら命を絶った事を僕たちに教えた。

家の中では亡くなっていない、近くの公園。つまり、その物件は事故物件にはならない。最期まで、気を遣っていたんだと思った。両親が呼ばれ、遺体は引き取られ、全てはもうカタがついていた。

交番からの帰り道、ガラガラの居酒屋で食べた蒸ニラに卵の黄身を載せた、変なメニュー。ボトルのハイネケンは、かつてなく酷い味がした。3人で、クソまずいな、と言いながら飲んだ。


それから数ヶ月、知り合いの嫁の知り合い、というツテで両親から僕に連絡が来た。生前、仲良くして頂いたようで、なにか話しを伺えればと。電話口の年老いた声。

あんなに優しい人は居ませんでした、たぶん、優しすぎるぐらいでした。そんな言葉が、何かの慰めになったのか、ならなかったのか。

悲しみに暮れる母親のメールの何通かを僕は無視し、一度だけ先輩の写った写真を何枚かプリントして送った。なんとか、お墓を建てる事ができました。そんなメールが来たのは、亡くなって1年したぐらいだろうか。


やっぱり、墓参りに行きましょう。ごく親しい人にだけ声をかけ、結局元同僚と2人で行くことになった。新潟駅からローカル線で数駅、ここが彼が言っていた故郷、彼がバイトをしたというモスがある街。そして、僕達の目の前に立つご両親は、ひどく小さく見えた。

「お墓は建てるな、って書いてあったんだけど」

先に死んでしまった罪はあるのであって、遺された者には何かの形がどうしても必要だったのだと思う。墓碑にはただ、「ありがとう」と刻んであった。なんて酷い、馬鹿か。

休憩中

We'll be right back.
Photo: “We’ll be right back.” 2015. Las Vegas, U.S., Richo GR.

海外に出たら、周りは全部泥棒だと思って、荷物から絶対目を離すな。と教わった気がする。

でも、道ばたにガッツリ抜け殻が置いてありますけど。見回しても持ち主居ないし。
現地の人から見ると、これは盗まれない類のものなのか?


ラスベガスのメイン通り、ラスベガス・ストリップ。休憩中なのは本体の方か、あるいは抜け殻の方か。

「今夜は蟹に行きましょう!」

Chilli crab
Photo: “Chilli crab” 2016. Singapore, Apple iPhone 6S.

「今夜は蟹に行きましょう!」

という宣言に、誰も反対する者は居なかった。一生懸命頑張ったからね。

市街中心部から車で 15分、ゲイラン。所謂、シンガポールの公娼地域。食欲と性欲が隣り合ったような、猥雑な地域に蟹屋がある。以前行った、サービス最低味最高の店の本店だったりするわけだが、サービスはまだこっちの方がマシだ。


蟹、やっぱり結構高い。後ろに立つ店員のババアのプレッシャーに耐えながら、慎重にメニュー構成を吟味する。絶対に外せないチリソースの蟹と、海老の胡椒炒めが軸になる。問題は、蟹も海老も、グラム単価だという点だ。(時価では無いだけマシだが)

中華系のババアの言うなりに注文すると、間違いなく大変な事になるのは目に見えており、まくし立てられる言葉をゆっくり受け流しながら、前菜、海老、蟹、焼飯とゆっくり決めていく。決して焦ってはいけないし、余計なものも頼まない。ン?カエル?んまいの?オススメ?

一種類ぐらいは挑戦で入れてみたカエルのフライ、実は衣の絶妙な味付けと、臭みの無い上品な白身で、とても良かった。


赤線のど真ん中の店にもかかわらず、客層は、旧正月の食事に来ている家族・親戚連れ、そして職場の同僚。つまり、ここは美味しいのだろう。

急に、店内に爆竹の音が鳴り響き、向こうのテーブルの一座が席から立ち上がり、箸で紅い色の料理をかき混ぜはじめる。旧正月のなにかの儀式のようだ。(あとで調べると 60年代に「つくられた」お祝い料理だそうだ)爆竹はスピーカーから流れるサウンドエフェクトだったりするところが、いかにもシンガポール。

例のババアになんの料理か聞くと、「魚生」と呼ばれる生魚を使ったサラダのようなものだと言う。早速売り込み攻勢をかけてきたが、値段を聞くと、なんかご祝儀相場で 8,000円ぐらいする感じ。蟹ぐらい高い。しかも、この暑さで生かよ!という怖さがあって頼まなかった。

さて、どろっとしたチリソースをまとってやって来た蟹は、立派な殻に覆われて、期待を裏切らない美味しさ。ババアの高いオススメを無視して頼んだ、一番安いシンプル焼飯に、ソースと身をたっぷりかけると、犯罪的な美味しさになった。