東京と近郊の記事一覧(全 59件)

不要不急の荒木町

Photo: “Araki-cho.”
Photo: “Araki-cho.” 2020. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

震災のときは、他の多くの人がそうだったように何を書いてよいのか分からなかったし、あらゆるところに非日常の緊張感と悲劇的なニュースが存在していて何を書くべきかも分からなかった。

それから時間が経って分かったのは、歴史的な悲劇が襲ってきても、未来はあり日常は続くということ。そして、普通に暮らすことの大事さと、その時の普通の生活を書き残しておくこともまた大切だという事を思い知ったのだった。


震災の時、家に閉じこもるのは精神に大変よろしくないことを学んだ。所詮はバランス。非常事態とは言っても、我々が必要とする日常の要素に変わりはない。この状況で違うのは、一方に生命に関わる明示されたリスクがある、という事にすぎない。

と言うことで、不要不急に外出してオフ会をしてみる。といっても、相手は昔からの友達で、僕にドラクエウォークを勧めた張本人。都内某所の、メタルドラゴンが湧いている場所で、仕事終わりに待ち合わせる。


ひな祭りキャンペーンの「まもの」を倒して歩きながら、そして荒木町。店は、安易にRettyで探して、店の雰囲気からカンで選んだ。最初に出てきた、どこかの地鶏正肉、焼き鳥って正直見た目がそんなに変わらない。でも、それはあまりにもうまく、二人の口から出てきた感想は、

「凄いなこれ。」

材料は正肉の地鶏を除けば普通のもの、しかし焼く技術が凄い。塩が、割と昭和な強めに付いているのも、好みに合った。

荒木町のこんな店ががら空きなのは、やっぱり世間から少しずらすのが大事なんだなと思う。それでもこの日は1階は予約で埋まっていて、2階に通された。お客は我々だけ、貸切。普段なら気まずく感じてしまうが、今の時期はかえって良いと言えるだろう。人混みを避けろ、という意味ではこれ以上低リスクなものは無い。


レバーは、ここ数年食べた中で一番美味しかった。ハツは丁寧に掃除されて、見た目も美しかった。勧められた、薄皮もまだ柔らかいそら豆は、春の香り。標準よりも大ぶりの串に、最初の一連のオーダーで腹八分目。じゃあ、いつもの2軒目に行こうか、という流れになる。

久しぶりに良い店を見つけて、気分良く外に出る。また来週も、この辺りの小路に来ようか、そんな気分になった。

人の踊りなんか見て、何が楽しいんだ一体

Photo: “Countertop dancing at Coyote Ugly.”
Photo: “Countertop dancing at Coyote Ugly.” 2018. Tokyo, Japan, Apple iPhone 6S.

人の踊りなんか見て、何が楽しいんだ一体。と思っていたが、意外と面白い。

六本木の裏路地の、自分では絶対に行かない、というか行けない店。チャラい、という表現がぴったりのマーケティングのメンズが二次会だか三次会で僕らを連れてきた。一見すると、アメリカンなテイストのスタンディングバーだが、無数の下着が天井から無数にぶら下がっていたり、DJブースが巨大だったり、フロアーの店員が基本女性だったりする。

この店は基本、フーターズみたいな感じの店で(tabelogにも載っている)、ただし、歌と踊りにはずっと気合が入っている。カウンターの上で、ダンサーが踊る。カウンターに土足、というのが、その時点で奇妙に日常をぶっ壊しているというか、生理的に凄い違和感があっていい。


人の踊りなんて見て、何が楽しいのか、とだいたいそんな風に思って居たのだけれど、実際見てみると結構楽しい。写真はどんどん撮ってどんどん上げてね、というスタンスなのも面白い。領収書が落ちる気はしないけれど、いたって堅気な店なのだ。テキーラショットをダンサーに飲ませてもらう、というアトラクションがあって、連れのオッサンが良い感じに壊されていく。

カウンターの上で踊る客を、そういえば見たことが有る。アマンドの裏の方にあったクソなバーで、カウンターの上で踊る白人客の男を見た。ずいぶん昔の話だ。

展示:東京中心

Photo: “Tokyo scenery.”
Photo: “Tokyo scenery.” 2018. Tokyo, Japan, Apple iPhone 6S.

コアタイムの無いフレックス。ルール上、いつ何時に会社に行ったって良いわけだが、平日午前中に会社とは反対方向の電車に乗ると、ちょっとした背徳感を感じる。

六本木ヒルズは、展望台も森美術館も、週末とはうって変わって閑散としている。とりたてて見たい展示があったわけでは無いが、組木で作られた壁面構造の巨大な展示や、木造高層住宅の模型などを面白く見て、それからついでに展望台に行ってみた。


靄に包まれた東京の町並みは、デートだったらいささかガッカリするのだろうが、一人で来ている自分には落ち着いて気分の良いものだった。実際、あまりはしゃいでいる客も居らず、まるで美術館の展示のように、無節操に、重層的に開発された都心の景色が静かに広がっていた。

たまには、この時間に来てみるようにしよう。そう考えてから、未だ実行してはいない。