芸術&写真&音楽の記事一覧(全 92件)

地獄の黙示録 特別完全版

地獄の黙示録 特別完全版原題は、Apocalypse Now Redux.
「帰ってきた黙示録」とかそんなぐらいか。特別完全版とかいう変な邦題を付けた人のセンスというか、映画に対する愛情を疑いたくなる。「地獄の」って何だ。
何か凄い字幕だなぁ、と思ってみたら、戸田奈津子字幕。調べてみると、もともとの「地獄の黙示録」の翻訳が彼女が字幕翻訳家として名を成すきっかけになった作品だったらしい。
いきなりひっかかったのは、有名な襲撃シーンの1カットでヒューイにフレアが飛び込むところ。”Flare! Flare!”を「信号弾だ!信号弾だ!」って、なんだそれ。チャフとかフレアって専門用語なのかもしれないけど、作品の性格から考えたらあくまで正確に訳して欲しい。(そういうのが分からない人が、わざわざこの「帰ってきた」を見るとは思えないし、今の時期にこの作品のDVDを買う人って、分からなかったら調べるタイプだろ)シーン自体が、信号弾を使うような状況じゃないし。
その他、至る所でなっち訳が爆発している。英語はあんまり得意じゃない僕が見ても、おかしいと思うところが結構ある。
作品自体はオリジナルのわけのわからない強引さは薄れたけど、より入りやすくなってるし、マスタリングもとても良い。テストでたまたまカメラを回していたナパーム着弾のシーンを、そのまま使ったというオープニングは、本当に凄い。これCGじゃ、ないんだよな。

トニー滝谷

トニー滝谷 プレミアム・エディション僕が持っていない、ほとんど唯一の村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」に収められた、同名の小説の映画。
村上春樹の作品の映画、というだけで引いてしまったが、見てみると、あの文章の雰囲気がとても良く出ていて、うまくつくったなぁという印象。

イッセー尾形も宮沢りえも、全然好きな役者ではないのだけれど、そういうことは感じずに見終わった。役者の個性に頼るのではなくて、きちんと役が作られている。つまり、映画として良くできている。


画作りは、スタイリッシュで、ともすれば退屈になりがちな動きの少ない、画面を、滑らかな横方向へのトラックを良いアクセントにして、うまくまとめている。fixと思わせておいて、カメラは滑らかに、真横にトラックしていく。

音楽は坂本龍一。ピアノオンリーの音楽が、ずっと静かに流れている。
うん、よくできているのだ。

ヴィタール

ヴィタール プレミアム・エディション (初回限定生産)
解剖とか医療シーンとか、相当ダメなので(昔2ヶ月ぐらい入院していた時のいろいろな思い出もあって)普通だと絶対見ないジャンルの映画。なんでこんなの注文したのかわからないけれど、amazon様がお勧めしたのを、気まぐれでクリックしたのではないかと思われる。というぐらい、入手経緯不明の状態で、観ないでほっからかしになっていた。
ストーリーは凄くシンプル。僕は内容というよりも、映画に出てきたシーンや、キーワードや、そういう断片に反応してしまった。
医学部に通う記憶喪失になった主人公の実習教材として割り当てられてきたのは、彼の元恋人の献体。医師である彼の父親が関与した布石もあるのだけれど、それがもはや作為なのか、彼女の願いの結果なのか、それとも、言ってしまえば運命なのか、その線引きの曖昧さと、線を引く事自体の無意味さ。そこは映画の本筋ではないのだけれど、妙にひっかかる感じがした。
本編が終わって、エンドロールが流れると知っている歌声。テーマを歌っていたのは、coccoだった。そして、劇中、主人公に恋をする医学生を演じる女優の名前が、KIKIだった。そんな風に、いろいろ引っかかりながら、見終わった。
それにしても、終幕間際、KIKI は主人公との別れ際に、何故、「ありがとう」と言うのだろう?