ぺたりネコ

夜がすっかり蒸し暑くなって、ぺたりネコの季節になった。


裏路地を歩いていると、居酒屋の看板の裏でぺたりしている。仕事がやっと終わって、さて、これから遅い夕食でも食べに行くかと言うところなのに、こちらは夕食は終わりましたという顔つきで、グルグルしている。

日陰のひんやりしたアスファルトに、ぺたり、動かない。頭をぐりぐりすると、尻尾だけが左右に動いたよ。

注:野良と戯れた後は、手を洗いましょう。

スカイ・クロラ

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I.G.づいているので、スカイ・クロラも観てみた。新宿某所の前回と同じ映画館の最終。結構空いているし(それでは困るわけだが)、椅子もいいし。この日は、売店の人の生ビールのつぎ方がちょっと無いぐらいうまかった。
正直、まったく期待していなかった。が、名作だと思った。それが、スカイ・クロラへの感想。
確かに、押井映画ではある。犬も、トラムも、アンバーのCGIも、出てくる。宮崎映画に対抗したような、凝った空戦シーンがこれでもかと出てくる。でも、趣味の映画に終わってはいない。脚本がセカチューの人だったり、俳優・女優が声を当てていたり、ちょっといつもと違う。水と油の要素が、沢山投入されている。
そういう違う方向へのベクトルがうまく働いて、引っ張り合って、なんか広がっている気がする。結果としてとてもバランスの良い映画になっている。2時間を超える映画で、長いな、と思うのだが、台詞やカットに無駄はない。(最後のカットはいらないと思うが、、)
商業的にどうか?というと、これはちょっと難しいかなとは思うし、あのCM を見て、本当に映画館に足を運びたくなるのかは疑問だ(僕はならなかったと思う)。でも、もうちょっと評価されても良い映画なんじゃないかと思うのだ。あのキャラクターの顔が嫌い、っていう人がおおいけど、すぐ慣れるよ。
追伸:雲の描写が良くできてる。それを見に行くのでもいいと思う。

ヒトラー ~最期の12日間~

ヒトラー ~最期の12日間~ スペシャル・エディションヒトラー最期の 12日間を見る。

良くできていると思う。制作者はとても大きなリスクを冒し、ある種の挑戦をして、勝っている。つまり、ナチスという難しい題材を扱いながら、映画自体では何かを裁く、ということをしていないのだ。受け取り方によっては、ナチスに同情的にとることさえ可能だろう。この題材で、そういう余地があるということは、作り手としてはとてもリスクのあることだ。それでも、見る人間に判断を委ねる姿勢を貫くことによって、モノを作る人間としての誇りを示していると思う。


全体の印象として、ドイツ降伏までの最後の 12日間を文字通り、映像にする、というところに、執拗なまでに集中したことで、発散しがちな題材をうまくまとめている。BGM はほとんど無いし、派手なカメラワークも無い。映画に感情を煽られていると感じるような場面は、とても少ない。それだけに、例えば、時々織り交ぜられる物陰から覗いたようなカット割りも効果的だ。

映画自体は、ある程度歴史の知識があることを前提として作られている。人物説明的なシーンは殆ど無いので、登場人物の名前を聞いて、それがどんな立場の人間だったかが分かっていないと内容を理解することが出来ない。その意味で、これはエンターテイメントではない。が、決して退屈な作品でもない。


ドイツの俳優というのを殆ど知らないが、キャスティングも良い。背中を丸めて、モグモグと夕食を食べている、疲れ切り、老いた男。そんなヒトラーの演技は、恐らく、スクリーン上では今まで一度も描かれたことが無いものだと思う。

ヒトラーの恋人、エバ・ブラウンのキャスティングも良い。妹の旦那が銃殺されることを知って、命乞いに来た時、「私の意志だ」と言われて、一瞬表情が変わり、「はい、総統」と言った時の演技は印象的だった。ヒトラーのある面では唯一の支配者であり、そして、同時に崇拝者でもあったと思われる、エバの空気が、伝わってくる。