フォトエッセイの記事一覧(全 320件)

秋刀魚

Photo: 秋刀魚 Tokyo, 2005. Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.
Photo: "秋刀魚" Tokyo, 2005. Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

客もひけて、静かになった店内でなにかの社長だという客のオヤジが、つまらない繰り言をえんえんしゃべっている。僕はそういうヤツに対するサービス 精神が皆無なのであって、冷たくあしらう。時として、そういう態度が新鮮らしく、気に入られることもある。困る。こっちは泡盛の杯を片手に、資料を読んで るんだから放っておいて欲しい。


そうこうするうちに、今年最初の秋刀魚が出てきた。まるまるしていて、しかも走りだから脂が軽い。

薄い皮と、ふっくらした身の間に、溶けた脂が流れている。本当の焼き魚は、身を焼くのではなくて、脂を溶かすのだ。資料をカウンターに置いて、秋刀魚に向き合う。社長殿はまだなんかしゃべってるが、もう、耳に入らないよ。

注:もちろん、普通に話す人は全然イヤじゃない。友人が、「とうとう俺らも飲み屋で知り合いをつくる年になったか、、」と感慨深げに言っていたので「笑笑で学生と殴り合ってるよりいいだろ」と答えておいた。

?円の夜景

Photo: 2005. Tokyo, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Kodak EBX.
Photo: 2005. Tokyo, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Kodak EBX.

もちろん、そんな統計をとったことは無いのだが、「次回もやりましょうね」と言った会が、次回も開かれる確率はけっこう低いのではないかと思う。

御氣樂総研本部で鮨を食べながら花火を見る会は、前回に比べ開催場所の高度も上がり、パワーアップしてちゃんと戻ってきた。

花火もさることながら、この夜景を毎日拝む生活はどうなのよ。


レインボーブリッジを遙かに望む湾岸高層住宅ということで場所も中身もバブリーなのだが、あくまで公団住宅というあたりに徹底した実利主義の血が流 れている。丁度、長野から帰ってきた人の持ち込んだ限定物の地酒と、北海道から帰ってきた人の茹でたて蟹がプラスされ、時ならぬ宴会に。大皿二つも頼ん じゃった鮨は喰いきれるか、という疑問は小一時間で氷解した。花火より鮨か。

なんで花火は冬にやらないんだろう?という質問も出て、乾燥してると危ないんじゃないかと答えたものの確証はなく。さながら夜の陽炎のような水蒸気に幾分霞んだ大輪の花の妖しい色艶。それよりもなによりもやはりこの夜景だな。

ところで、なんか暑いんですけど、クーラー無いんですか?何?付けてない。金がないわけではないが、(そりゃそうだろ)好きではないらしい。それでこのハネウェルの扇風機が回っているのか。クーラーの無い高層住宅と、ハネウェルの扇風機。面白いな。


この花火大会、次回は船でやりましょう、ということになった。さて、その実現の可能性は?

金魚

Photo: 金魚 Tokyo, 2005. Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.
Photo: "金魚" Tokyo, 2005. Contax i4R, Carl Zeiss Tessar T* F2.8/6.5.

友人が死んだ。

死んだ、という知らせを聞いて、あまり驚きはしなかった。詳しい話は聞いていない。


少し前に、わざわざ電話をかけてきて、「借りたカメラ、まだ返せそうにない」と言ってきたのは、電話する理由が必要だったのか、あるいは、なにかの 予感だったのか。ひどく律儀な電話だった。戦コンまでやった人だったけれど、繊細だった。むかつく人間には本気で怒った。六本木の怪しいカリビアンクラブ (踊る方)でボスらしき、スキンヘッドの熊みたいにでかいガイジンとハグで挨拶しているのを見たときは、この人はいったい何の人なのかと思った。


彼が通っていた飲み屋は、僕が通っている店でもあり、彼の大好きなばくらいでも頼もうかと思ったが、あいにくと盛夏にあっては、献立にない。せめ て、よく飲んでいた金魚でも。ロックグラスに焼酎を注ぎ、水草にみたてた大葉と、真っ赤な鷹の爪を入れると、泳ぎ出す。この金魚は、下手につついたりする と怒って辛くなる。