フォトエッセイの記事一覧(全 320件)

梅干し、手前10メートル

Photo: 2001. Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Kodak DYNA EX ISO200.
Photo: 2001. Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/35, Kodak DYNA EX ISO200.

梅干し。
手前10メートル。


東京 青山の奥深く、謎の看板が目にとまり、思わず路地に入った。そこには、子供の頃に住んでいた街の、商店街を思わせる風景があった。低い空にかかる、入り組んだ電線。

探せど、探せど、梅干しらしきものは無し。それは梅干屋なのか、あるいは、梅干のブロンズ像かなにかか。あたりを 5周して、それらしきものを見つけられず、日が暮れた。


見つからない梅干し、買えない梅干し。いや、別に大好物とかではないのだが。

夜のとばりが降り始めた午後 5時。今日もレトロな街灯に灯りがともり、梅干しの看板に、火が入る。


注1:Contax T3 の精度と描写力に驚いた一枚。Zeiss 特有の深い青。
注2:昔、ウメボシ殿下っていう漫画がありましたねぇ。

子供の頃の夕暮

Photo:2000. Kobe, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.
Photo:2000. Kobe, Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

夕日の沈む頃、空に電線と団地の階段が交差する景色。それは、僕に子供の頃の夕暮れを思い出させた。

家への帰り道、いつも団地の中を通る坂道を歩き、走った。

あの頃、未来への不安はなかった。失われるなんて、思いもよらないことだったから。


大人になれば、生きることは楽になるのだと思っていた。少なくとも、もっといろいろな事が分かるようになるのだと思っていた。

でも、どうやら、違うらしい。最近の複雑な世の中では、自分の姿を見失うのはあまりにも簡単。

カタツムリを捕まえた

Photo: 2001. Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.
Photo: 2001. Japan, Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

朝、雨が降っていた。小学校に行く道すがら、カタツムリを捕まえた。

カタツムリは、筆箱に入れておいた。その頃、やたら蓋がたくさんついた筆箱が流行っていて、隠し場所には困らなかった。悪戯されたら困るから、友達には内緒。

帰る間際、筆箱の隅をのぞくと、膜を張って寝ていた。やはり、雨の中がよいのか。


帰り道、雨は降り続いていた。僕は、カタツムリを逃がすことにした。
アジサイの咲いている塀の向こう側に、放り投げた。

カシャッ、と音がしたような気が、、。

カタツムリは、きっと強い。雨は、やがて上がった。

羊ページはコンテンツの作成に、ダラダラ時間をかけるため、季節がずれ気味です。