太平洋の大海原を航海してみたくはないか

Photo: 2億ディップ 2004. Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: “2億ディップ” 2004. Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

「太平洋の大海原を航海してみたくはないか」

と言われてしまうと、断る理由は無い。目的も日程もよくわからないまま、旅は始まった。最終目的地が海か山かも分からないから、トレッキングシューズとビーチサンダルが詰め込まれた。ついに現在に至るまで出番の無い、フライ(揚げ物ではなく)の道具も積まれた。

南に向かう太平洋航路のフェリーというのは、川崎港から出ている。らしい。知らなかった。普通知らないと思う。のっけから、時間は押し気味で、平日なのに道は渋滞。あせりぎみ。でも、旅の初めは、やはり、ドライブスルーのマックだ。このまずい食べ物を食べて、日常から決別するのだ。(でも、できたてなので、まずいというよりも、うまく感じた。特に、はじめて食べたワサビソースのディッパーは意外と)


実は、ここでマックを食べておいたのは正解だった。なんとか時間通りについてみると、海流の関係でフェリーはいきなり1時間、出航が遅れるらしい。 危うく、腹ぺこで桟橋に釘着けになるところだ。フェリー乗り場の周りは工場プラントだらけで、飲食店はおろかコンビニも無い。待合所に食堂なんてものはな く、ハンバーガーとかたこ焼きとかの自販機(よく PA にあるやつ)があるきりだ。ここは空港じゃないんだ。なんていうか、もっと緩くて、混沌としていて、アジアな感じ。海なんだから、ギャーギャー騒いでも仕 方ないだろ、という感じ。

注:でもやっぱり胸焼けした。

6年ぶりに

Photo: 今年は暑すぎるが 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "今年は暑すぎるが" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

そういえば、僕は昔テニスをやっていたのであって、久しぶりにラケットを引っ張り出してみた。グリップが黴びてますね。シューズも、、ダメだ腐って る。ちょっとしたきっかけで、またテニスを始めることにした。でも、コートを離れて 6年。最近ではウインブルドンを見ても、選手が全然分からなくなってた。あの頃活躍していたイワニセビッチは、今期で引退じゃないか。

グリップテープは白を買ってきた。大学の時から、テープは白を使ってる。やっぱり、白が一番カッコイイと思う。久しぶりに巻いたから、一回目は失敗 した。靴も買う。僕は足首の靱帯を切っているので、靴はちゃんとしたテニス・シューズを新調した。(テニス用の靴というのは、普通のジョギング用などとは 違って、横方向への動きを重視してある。街履きのファッション用とはちょっと違う)ナイキの新しめのやつが、これで 5,000円は安いなぁと思ってレジに持って行ったら、5,000円はお隣の安売り商品で、こっちの値段は倍だったよ。まあ、いいや。


日の光がまだ弱い時間から、ラケットを持って家を出るのはとても懐かしい気分だ。まだ涼しい空気を吸って、さあやるぞという感じ。(じきへばるんだ が)何か忘れているような気がするけど、遅れちゃいけない。なにせ、土日にプレーできるコートって、めちゃくちゃ遠いところにあるのだ。

本当に打てるのか?と、正直不安に思いながら、コートに立った。やっぱり打てない。追いつけないし、動けない。熱気と息切れで眩暈がしそう。でもな んとか 2時間耐えてみれば、気分は良い。しっかり半袖焼けして、その日はおしまい。(そう、忘れてきたのは日焼け止めだった)その次は 4時間やって、全然楽で、楽しいと思うようになった。やっと体が慣れてきたみたい。なんとなくテニスが出来ていた時代は、とても恵まれていたんだと思う。 仕事を持っている今だと、皆が集まれる場所と時間でコートをとるのも、一苦労だ。でも、社会人になってからの方が、もっと純粋に楽しもうという感じがあっ て、それはそれで好きかもしれない。

シェラトン

Photo: シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートから望む日向灘 2004. Miyazaki, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

Photo: "シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートから望む日向灘" 2004. Miyazaki, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

すっかり明るくなった部屋の中を、薄目をあけながら見てみる。遮光カーテンを引かなかったのは失敗だ。

昨日フェリーに揺られている時には宿すら決まっていなかったけれど、気が付けばちゃんとシェラトンに泊まれている。宿は(空いている限り)、ある程度ぎりぎりになった方が、安く泊まれる。交通機関は逆だ、たいてい高くなる。


フェリーの 2等寝台 C は想像していたよりはずっと文化的だったけれど、荷物を入れてしまうと、僕の身長には足りない。シェラトンのベッドは、ボコボコ頭をぶつけて寝ていた昨日の惨状に比べたら、驚くほど快適だ。両手両足を伸ばして寝られる。

未練はあったけれど、のろのろ起き出して「オーシャンビュー」を眺める。外は曇っていて、南国の太陽は隠れていた。でも、やっぱり海の色が違う。屋久島で見た、油を引いたような輝きの海が広がっていた。