東京クラスタ、日本クラスタ、アジアクラスタ

Why? MIT
Photo: “Why? MIT” 2010. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

「こんにちは。ちょっとよろしいですか。」

と、IM が入る。マレーシアで一緒になった、北京の人だった。

「私、会社を辞めてアメリカに移住します。」

移住?留学とかではなく??


日本の地方都市をちゃんと巡る、というのは面白いだろうな、と最近思う。下手に海外に行くよりも、高くついてしまうけれど、ネイティブの視線でより深く見られる。

地方に行くと、その地域で完結する世界がある気がする。ここで一生を送っていく人は、どんな気持ちと、どんな思いで、その人生を選択したのだろうか。

東京に戻れば、それは首都という一つ上のクラスタになる。上というのは上等・下等の意味で言っているのでは、もちろん無い。僕はそこで少しの疑問を抱きながら、生活をしている。これから先も、このままこのクラスタに居る、恐らく、自信は無いが。

もう少しクラスタを上げて行くと、いまや日本もアジアのクラスタの一員に過ぎない。過ぎなくなりつつある、といった方がいいだろうか。アジアのクラスタの上の方はどこだろう。

日本と、中国と、シンガポールあたりが争っている感じか。それからインドか。


アジアのクラスタを上げると、欧米になるのだろうか。そこで冒頭の彼女のことを思い出す。中国から、一気にアメリカに移住か。華僑は世界中いたるところに住んでいる。中国人の、そういう根っこをほかに移してしまう思い切りには感心する。

もの凄く真剣で、切実に、クラスタを移ろうと努力したのだろう。僕は、彼女の努力を、なんとなく感じていて、アメリカに移住するという IM にもあまり驚かなかった。

彼女の位置から見ると、僕は世界の一地方のクラスタに安住しようとしている人間に見えるんだろう。それは、あるていど気楽で、可能性の決まった世界だ。

google翻訳を使って、「よい旅を」と北京語で返した。

積年の謎の正体、臭豆腐

Stinky tofu
Photo: “Stinky tofu” 2012. Taiwan, Apple iPhone 4S.

僕は、その臭気を、頭の何処かで人間の死臭だと確信していた。

その甘い腐敗臭は、熱風のような温度を持っていた。その臭気が鼻に入ると、熱い温度を脳が感じた。

中国大陸の至る所で、かいだ臭い。北京の公衆トイレで、少し似た気配を感じた。

上海のとっちらかった屋台街でも、感じた。中国腸詰のような露店の辺りで嗅ぐことが多い気がして、暫くは腸詰を炙った臭いだと思っていた。でも、実際は腸詰はそんな匂いはしていなかった。

あれは、絶対、何かの死体だ。「甘くて不快な腐敗臭」人が腐った時の臭いの記述は、たいていこんな感じだ。ということは。。中国は、怖いところだ。そう思っていた。


台北。少し迷いながら辿り着いた、点心の有名店。時間のかかる小籠包のつなぎに、ちょっと気になっていた名物も一皿取ることにした。安かったし。

そして、唐突に現れたのだ、そいつは、まさに、その臭いをさせて皿の中に収まっていた。臭いは、臭気というよりも、やはり熱気として感じられた。

台湾名物、臭豆腐。

名前は知っていた。20年近く前に台北に来た時から、名前は知っていた。臭いものだと言う事も知っていた。公衆トイレの臭いに近いとも書いてあった。だから自分から近寄ることはなかった。しかし、まさか、こいつがアレの正体だったのか。


今まで、自分の意志に反して、何かを食べられなかったことは無い。たいていの、まずい、変なものも食べてきた。でも、これは無理だ。不快を承知の表現で言うならば、目の前の丼に、ウンコが盛ってあるぐらいに無理だ。暫く逡巡した。しかし。

臭豆腐、箸の先についた一片を食べることもできなかった。

「天皇陛下、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」

「天皇陛下、バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」

いわゆる、ホンモノの万歳三唱を実際に聞いたのは、初めてだった。集団の中の個としての高揚感。小学校の運動会の歓声、あえて言えば、それが一番近い。

この高揚に包まれて、流されないで居るのは、とても難しい。それが、率直な感想だ。

バンザイなんて、記録フィルムの中でしか見たことが無い。それが突然、目の前に現れたことに、僕はびっくりしていた。もちろん、自分は一般参賀に来ているであって、ここはそういう場所なのだが。


一般参賀の行き方は、実に当たり前のことかもしれないが、宮内庁の Webサイトに書いてある。天皇誕生日と新年の年2回。いずれも予約は不要、自分が行きたい時間を選んで、ただ行くだけ。最寄り駅は東京メトロ 二重橋前。そう、もちろん二重橋だ。いつもタクシーで通り過ぎるだけの皇居の前に、今日は地下から階段を上がっていく。変な気分だ。

日の丸の旗は、歩いていれば誰かがくれる、と思ったらもらいそびれた。テレビで見る限り、あれだけ人々が振っている旗なのだから、組織的に配られていると思ったのだが、どうもタイミングを逃したようだ。


二重橋の前の広場に、仮設の手荷物検査場が展開してる。システマティック。手ぶらでボディーチェックを受ける。ここに来ている人は、特にどんな感じ、というのでは無い。祝日のデパート、と言っても別に違和感は無い。右翼でも左翼でもなく、普通、とっても普通。

そのまま、ぞろぞろと宮殿に向かって歩いて行く。よく見ると、それっぽい団体の方々は、巧みに警備が誘導して、周辺部に集めているように見える。

バンザーイ、自体は数分の出来事だ。実は、その後、皇居東御苑を散策したり、おみやげを買ったりする事ができる。そういえば、冬の澄んだ広い空も、思い切り眺められる。東京のど真ん中に、広い広い、空が広がっている。