一瞬の微睡み

Photo: 午睡 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX
Photo: "午睡" 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

その日は暑かった。

だから猫は、ひんやりしたコンクリートの木陰に、伸びている。

港の見える高台の、誰も来ない公園の木陰で、眠っている。


潮風の吹き抜けるこの街で、猫は生まれて、そうして育って、死んでいくのだろう。

午後の一瞬の微睡みのような、そんな瞬間を生きるのだろう。

若先生の住まい

Photo: 若先生の家 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX
Photo: "若先生の家" 2006. Kagawa, Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX

小豆島。

映画村の外れにある、人気のない民家のセット。


若先生の住まいという設定のせいか、家具も少なく、畳はすり切れている。粗末なちゃぶ台に大きな酒徳利と、茶碗が一つ置かれている。

砂と塩でザラザラとする板の間に座り、窓の外の海を見る。


とても貧しくて、でも、シンプルで美しい生活。それはセットであって、フィクションであるのだけれど、どこかには有ったかもしれない。

誰かが来るまで、ずっと座っていた。