もちろん、自分の包丁を持ってくるべきだったのだ。砂浜の砂粒で刃こぼ
ならず者氏が、記憶をたぐりながらイカツいRVの鼻先を突っ込んだ隘路の先には、茫洋とした砂浜が広がっていた。遊泳禁止の看板すらそもそも無い、荒い外房の波が打ち寄せる砂浜が、果てしなく続く。我々は焚き火を起こし、ノンアルコールビールの缶を開け、文字通り他に誰一人居ない、大陽だけが照りつける流木だらけの砂浜を満喫していた。
焼きそばを作る段になって、ピーマンを切りたかった。あり合わせ
「包丁?ああ、そちらの、”鉈”で。」
あぁ、やはりそういう事か。薪割りまで出来る、新規導入アイテムの鉈の切れ味は、なんなら包丁よりも数段良いのだから、大は小を兼ねる、問題無いじゃな
持ってみると、コンパクトな鉈としてはちょうど良いのだろうが、包丁としてはあまりに
ならず者氏と、茶碗夫婦夫の期待を背中に受けて、焼きそばは完成した。もちろん、指をそぎ落とさないように、最新の注意を払いつつだ。味付けとしては、この潮風の中なので、かなりしっかりニンニクと塩の味を付けてみた。ならず者氏が、焼きそばは塩一択だ、と有無を言わさず主張したのは
ストレスフルな日常から来るすさんだ気分には、海岸でのBBQがなによりだというのは、確かにならず者氏の言うとおりだった。20有余年の時を経て、幸いにも我々3人はまだつるんでいるのであって、そういう関係が、実はめったに