東京と近郊の記事一覧(全 59件)

奥多摩

Photo: “Swallows."
Photo: “Swallows.” 2025. Tokyo, Japan, Google Pixel9.

GPTの指示に従って奥多摩の駅に降りたときから、田舎の駅にはあるまじき緊迫感というか、観光地、いや深夜のドンキのような緊迫感を感じたのだ。

そのカンは当たっていて、奥多摩の清流は、ガラの悪いBBQ客、母国のノリで爆音をかける東南アジア系、遊泳禁止の巨岩から飛び込む白人、もちろん日本人の「輩」もたくさん居たけれど、そこと一線を画するインバウンドのマナーは衝撃だった。

簡易トイレが溢れたような、嫌な臭いの水で泥濘む渓谷沿いの径を渡った時点で、もう限界を感じた。嫌なにおい、嫌な空気、ここには一刻も居たくない。


インバウンドが入って来れない近隣の神社で巻き返しを図る。GPTにプランBを求めた。混雑状況は、ほかの駅ならまだましとの事。であれば、大多摩ウォーキングトレイルというものに行ってみよう。本来、JR青梅線・古里駅から奥多摩駅までのコースのようだが、鳩ノ巣まで電車で移動し古里駅に向かってトレイルを逆をたどる。

「平坦な道で、気持ちの良い川沿いのトレッキングコース」だとGPTは言っていた。後から考えれば、登山に慣れた方々のBlogか何かをモデルに取り込んでいるのだろう。ド素人の僕からすると、「登山」みたいな道である。ツキノワグマ注意の看板が出る林道を上り下りし、木の根を分ける。キーワードだけで進んできたので、トレイルの全体像は分からない。道端に時折掲げられた道標だけがヒントになっている。

道中、道を間違えたのでは?という疑念が最高潮に達するぐらいで、「大多摩ウォーキングトレイル」の次の道標が現れる、絶妙なゲームバランス。ツキノワグマが出ます、と書いてある林道では休憩する気になれなかったが、途中に設けられた無料の休憩場所に救われる。

朝、家の近くのセブンで買ってきた紀州梅のおにぎりが、これ以上なく美味く感じた。デザートのココアクッキーを用意しておいたのも、自分を褒めたい。この暑さでも、クッキーはびくともしない。塩分と糖分。食べ終わって道を下っていると、さっきより力が湧いてくるのが分かる。モノを食べるというのは凄いこと。


鳩ノ巣駅から古里駅までは、地図の記載で3.4km、林道なので歩く感覚はもっと遠い。何組かのトレッキング客とすれ違い(僕が逆行しているのだ)、川を渡り、市街地に出る。青梅線の線路が、道を併走するようになると、古里駅にたどり着いた。

スッカスカの時刻表によれば、30分の待ち。無人駅、トイレもないので(実は反対側にあった)誰もいないホームで汗で重くなったTシャツを着替えた。レールの間には雑草が背高く生える。若い燕が4羽ばかり架線の間を行き来している。ホームの両端には色と水分を失った、背の高い雑草が生え、遠くの山並みの緑は深い。

Photo: “View from the High Deck, Musashino"
Photo: “View from the High Deck, Musashino” 2025. Tokyo, Japan, Google Pixel9.

人の気配がして、甲殻機動隊のTシャツを着た50歳がらみの男に話しかけられる。「いや、もう5分も待てば電車は来ますよ」と答える。暑くてかなわない。32度とGarminは表示しているが、湿度が高く体感気温はもっと高い。

青梅からはグリーン車に乗った。初見では分からないモバイルSUICAを使ってグリーン券を買う方法は、GTPに聞いた。ハイデッキの2階からは、見慣れた中央線がずいぶん違って見える。1時間以上乗って千円なのだから、案外お買い得かもしれない。車内販売のお茶は出ないけれど車窓が移り変わって飽きないし、とても空いている。

沿線に住む古い知り合いに会いに行ってもいいなと思ったりした。電車は国分寺を過ぎた。

サーファーが連れて行くBBQと鉈料理

Photo: “Axe guardian and green pepper.”
Photo: “Axe guardian and green pepper.” 2023. Ibaraki, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.

もちろん、自分の包丁を持ってくるべきだったのだ。砂浜の砂粒で刃こぼれでもしたら嫌だな、という気分が無かったわけではないが、それにしても、持ってくるべきだった。包丁とは言っても、常用しているのはペティーナイフなのだから、そんなにかさばらないのだし。

ならず者氏が、記憶をたぐりながらイカツいRVの鼻先を突っ込んだ隘路の先には、茫洋とした砂浜が広がっていた。遊泳禁止の看板すらそもそも無い、荒い外房の波が打ち寄せる砂浜が、果てしなく続く。我々は焚き火を起こし、ノンアルコールビールの缶を開け、文字通り他に誰一人居ない、大陽だけが照りつける流木だらけの砂浜を満喫していた。


焼きそばを作る段になって、ピーマンを切りたかった。あり合わせのものを放り込むと言っても、野菜を手でちぎるというわけにはいかない。料を理するのだ。ならず者氏は、包丁は持っていくと言っていたよね、包丁あります?

「包丁?ああ、そちらの、”鉈”で。」

あぁ、やはりそういう事か。薪割りまで出来る、新規導入アイテムの鉈の切れ味は、なんなら包丁よりも数段良いのだから、大は小を兼ねる、問題無いじゃない、という発想が目に見える。かなり前に自炊することを放棄した人間が、考えそうな事だ。しかし、言っておくが鉈で料理なんかできない。包丁は引いて切る道具であって、鉈のように叩き切るのではない。

持ってみると、コンパクトな鉈としてはちょうど良いのだろうが、包丁としてはあまりに重すぎる。ひんやりとした鋼が、グリップまで通っていて、これはなかなかタフに使えそうだ。薪をクラフトするのも、指の肉を削ぐのも、易々とこなすことが出来るに違いない。


ならず者氏と、茶碗夫婦夫の期待を背中に受けて、焼きそばは完成した。もちろん、指をそぎ落とさないように、最新の注意を払いつつだ。味付けとしては、この潮風の中なので、かなりしっかりニンニクと塩の味を付けてみた。ならず者氏が、焼きそばは塩一択だ、と有無を言わさず主張したのは正しかったように思える。潮風と、若干の砂も含めて、またとない味だった。(帰宅してから、さらに一度塩焼きそばを作るぐらいには、感銘を受けた)

ストレスフルな日常から来るすさんだ気分には、海岸でのBBQがなによりだというのは、確かにならず者氏の言うとおりだった。20有余年の時を経て、幸いにも我々3人はまだつるんでいるのであって、そういう関係が、実はめったになく有り難いものだ、という事に最近、気がつき始めた。

思いつきの旅(ただし、御安全に)

Photo: “Shinjyuku 2021.”
Photo: “Shinjyuku 2021.” 2021. Tokyo, Japan, Apple iPhone XS max.

緊急事態宣言が再発令されようとする、まさにそのタイミングで、ならず者氏から小旅行の提案がある。相変わらず、ノールールだ。彼の思いつきで、旅のようなものが決行されるのは今も昔も変わらない。

しかし、安全性に最大限の配慮を行う彼のこと、旅の内容は僕の家の前から、もう一人の家の近所まで、ドラクエウォークドライブをする、なお、会食等はせずさっさと解散する、というものだった。さすが、ISOなんちゃか、とかの世界に生きているだけの事はある。


文字通り家の真ん前まで迎えに来てもらって、ドラクエウォークしながら(彼はウォークモード)、ゲーム会社勤務氏の家までドライブ。高速は使わずに、なんやかんやで片道1.5時間ぐらいかかる。甲州街道から、久しぶりに見た新宿駅の光。バスタ新宿のある景色に慣れる前に、まったく電車に乗らなくなった。

車の数が減り、少し山のような地形が混じり始める頃に目的地に到着。ここは、そういえば自分の実家のあたりにむしろ近い。社外に出ると、大気はずいぶんと寒く、セブンの駐車場はえらく広かった。待ち合わせの友人を探す。あの駐車場の隅に座ってる怪しい人物、あれじゃね?(違った)


合流して、たわいの無い話をする。気がつけば、3人が物理的に顔を合わせるのは2年近くぶりだ。ゲーム氏の奥さんもちょっと顔を出す。こちらは10年ぶりぐらい、全然変わらない。酒も飲まないし、食事もしない。ただ、距離をとって静かに話しただけ。途中で駐車場の冷えを感じて、午後の紅茶ホットの加温中を買う。それ程には熱くなかった。

日清の激辛の焼きそばと、謎のエナジードリンク (version 1.0.0と書いてあった)をお土産にもらってきた。