国道 43号

さて、3回にわたって神戸から「羊ページ」をアップデートしたわけだが、そこまでして本当にリアルタイムで見ている人がいたのか?というと、どうや らいたようである。(このページの読者は大半が、感想を送ったりする習慣を持っていないようなので、一般的にはどうだか分からない)

関西出身のある読者は、我々が国道 43号を歩き、餓死&脱水死の危険に見舞われている様を見て「あーーぁ、2号線の方に行けばいいのに、ファミレスもコンビニもいっぱいあるのに」と盛り上がっていたそうだ。知ってるんだったら、先にメールで教えてくれ。

あの道は、本当に酷かった。目的地に対して直線的に進めるので確かに効率はよいのだが、食事のできる店が結局僕らが入った寿司屋1軒だけだというの は凄すぎる。人通りもほとんど無く、「旅先での心温まる出会い」や「一夏の切ない思いで」になるような要素は、かけらもなかった。


それから、神戸牛について言えば僕らが「外した」店に入ってしまったせいなのかもしれないが、後から振り返ってもいまいちだった。とにかく、落胆し たのが 7,000円も払わされたのに、ステーキが鉄皿の上に乗って出てきたことだ。これは、一見すれば盛り上がって良いように思えるが、食べているうちに肉にど んどん火が入り、硬くなるという悪夢のような食器だ。(もちろん、ファミレスのステーキが鉄皿に乗っていても、僕は何ら不満ではない、今回は 7,000円なのだ 7,000円)更に、肉を硬く焼きしめたあとは、直ぐに冷めていくという、実にやっかいなおまけもある。まともな神経なら、そんなものに肉を盛ったりしな い。しかも、肉は焼きすぎ、冷房はいりすぎ、客も少なくて雰囲気寒すぎ、、って外しの店じゃないか。よくよく考えたら。


ところで、神戸で短い休暇(別に、これが夏休みというわけではないのだが)を過ごして間もないが、今週末から韓国に行く。なにも、8月15日の開放 記念日(大日本帝国の無条件降伏に伴って、朝鮮半島が自治権を取り戻した日)で反日感情の盛り上がるこの時期に、韓国に行くこともないだろうとは思うのだ が、今回は仕事なので仕方がない。AT&TのグローバルローミングサービスでSeoul APにうまく接続できれば、多分、現地から更新することもできるのではないかと思う。

神戸の旅

神戸から「今日の一言」を書いていて思ったのは、人は何かをしているときには、自分が今していることの本当の意味が分からない、ということだ。ホテ ルに戻って、あるいは帰りの新幹線の中で、さっきまで自分が体験したことを書こうとしても、何を書けばよいのか、書かなくてよいことはなにか、それが分か らない。だから、とりあえず自分がやったことを、定量的な事実を、書き留めておくことしかできなかった。

神戸の旅は、事前にほとんど計画をたてない旅であり、そして、どちらかと言えば現実的あることを常に要求される旅だった。こう書くと、奇妙に思われ るかもしれないが(無計画な旅がなんで現実的?)、絶えず進路や道のりを考えつつ歩いたり、コストと利便性を考えながら乗り物を選んだりする、そういった 作業は極めて現実的で散文的な作業なのだ。それだけに、何かをじっくり考えたり、なにかに思いを馳せることも無く、ただそこではいろんな体験を体の中に詰 め込んだに過ぎない。


そのうち、あるいは改めて神戸への旅について書くことになるかもしれない。

神戸旅の記録 3

(今回の今日の一言は、誤字脱字、意味不明な部分があるかもしれませんが、「ライブ」ということで、勘弁してください)

神戸、旅の記録 その3

今朝も、7時には目がさめてしまった。五月氏は、完全に寝入っている気配だったので、無理やり9時まで寝ることにする。

今日は昨日以上によい天気だ。ホテルをチェックアウトする。僕らが泊まった、pienaは、 実は思った以上に先進的なサービスをしていた。単にインターネットへの接続無料サービスをしているだけではなく、自前のサーバーを持っていて、オンライン で客室の空き情報をチェックして、その場で申し込んだりすることもできる。意図的に選んだのではなかったが、今回の旅ではとても便利だった。


海を見るためと、朝食にありつくために、ポートアイランドを目指す。何故か、今日も歩いていくことになる。三宮からてきとうに海のほうに向かって歩いた。途中で神戸の市役所を通る。都庁も無駄にでかいが、神戸市役所も真新しく巨大な建物だった。

確かに、震災の当初は住民一人一人が主体となって復興のために努力したのだろうが、この無意味に巨大な建物を見ていると、いつのまにかそういう努力が政治とビジネスの世界にとってかわってしまったのだと分かる。


歩いているうちに、トラックが増えてくる。港に向けて、荷物や資材を運ぶトラックだ。その脇を、僕たちは小さくなりながら歩いた。今日は文句無く晴 れていて、太陽がジリジリと体力を奪った。とにかく、腹が減った。朝から僕が食べたものといえば、残り物のビーフジャーキーが2枚と麦茶だけだ。


埠頭を越え、橋を渡り、ようやくたどり着いたポートアイランドは、予想通り単なる倉庫と、新興住宅地だった。ここは有明です、と言ってもおそらくは 分からないだろう。島に入ると、すぐに公園があり、何人かが日光浴をしている。地面は、埃っぽい砂とも、土ともつかないものでできていて、まるで工事現場 に無理矢理植林したかのような公園だった。それは、昨日、海岸で見たブロックを積み上げたようなマンションを見たときに感じた、非現実感と同じものを、僕 に感じさせた。


すぐに分かったのは、ここは観光地ではない、ということ。それはいいとして、食事をとろうにも、それらしき場所が無いのは困りものだ。マンションの一角に、商店街らしきものを見つけたが、選択肢は「怪しげな和食屋」もしくは「ケーキ屋」の二つ。

もちろん、和食屋の方に入ったものの、嫌な予感は的中した。

不味い店、というのはだいたい、メニューに信じられないぐらい沢山の料理を、脈絡もなく載せているものだが、この店はまさにそういう種類の店だった。

短冊切りの胡瓜とトマトが浮いたソーメン、胡瓜と梅肉の巻物、海老・蛸・鰤の握り、冷奴、蒟蒻の白和え、という意味不明なセットメ ニュー(1,050円)を食べつつ、疲労のあまり二人とも言葉が無い。そういえば、神戸に来てから、ファミリーレストランというものに入っていない。そも そも、ファミレスが見当たらない。別に、ファミレスが好きだということではないのだが、こういう風に、怪しい店しかない状況のときは非常に助かるものなの だが、、。


早々に、ポートアイランドに見切りをつけ、今回は神戸新交通のモノレール(のようなもの)に乗って、三宮に戻る。ものの20分で着いてしまった。三 宮の駅で、オジサンに「ポートアイランドはこの電車でいいんでっか?」と訊かれた。よりによって、よそ者の僕に訊かなくてもよいだろうに。


とにかく、帰るまでに、海を見なければならない。神戸の友達に電話をかけて、海はどこにあるかを訊いた。須磨、らしい。今度は歩いていく、などどいう無謀な気力は無かったので、JRで須磨まで行くことにした。

三宮から、須磨まではJRで20分程度。須磨駅は、降りたところが即海、というなかなか便利なところだ。周辺の雰囲気は、江ノ島をもう少し健全にしたような感じ。家族連れも結構いる。
「兄さん、着替える場所ありますよ」

どこでも変わらない(「兄さん」というあたりが、関西だが)、客引きをかわしながら、ひとけの無さそうな突堤を探す。何で突堤なのかといえば、海を 見るのであれば、なんとなくそういうものが好ましいように思えたからだ。海と山が見えて、騒がしくない、そういう突堤じゃないとだめだ。

そして、見つけた。須磨の海水浴場の外れに、1本の突堤が見えた。中ほどで青年が本を読み(残念ながら、小説ではなくてマンガだったが)、突堤の先 端では、地元の人間らしい男たちが、数人、ルアーを投げている。不思議と、その突堤には、周囲の喧騒が無かった。僕と五月氏は、ビールを買ってそこに座り 込み、海を眺め、山を振り返った。

目の前は海、背後には山。僕らが小説の中で見てきた景色を、そこでようやく見ることができた。

この場所に来て、ようやく、旅の終わりが来た気がした。


三宮まで戻って、そこからタクシーで新神戸オリエンタル・ホテルに向かう。旅の終わりにどうしても寄っておきたいところだ。ロビーのラウンジでコー ヒーを飲みながら(個人的にはアイスティーのほうがいいが、あまり格好がつかない気がしたので無理やりコーヒー)、今日の大まかな出来事をまとめることに した。

ホテルのロビーは、想像していたよりも、よく言えば敷居が低くて気取ったところがなく、悪く言えば、騒がしめの(ホテルのロビーにしては)雰囲気だった。ロビーには、ヤクザ、ヤクザのような某有名写真家、などもいて、あまり落ち着いているとは言えなかった。


帰りは、指定席が空いていたので、指定席で帰ることにする。ここでようやく観光らしく、駅で土産を買い、神戸への旅を終えた。

おしまい。