鈴鹿、F1、最終コーナースタンド、3日間指定

Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Fuji-Film

Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Fuji-Film

東京某所、行きつけの焼き肉屋で、モクモクと牛を焼いている時だった。いよいよ、「国産黒毛和牛ロース with 新鮮青唐辛子」(本日の目玉)を網に載せようとしたとき、友達の携帯が鳴った。

暫くして電話を切った友達は、確信に満ちた表情を浮かべて、こうきり出した。

「鈴鹿、F1、最終コーナースタンド、3日間指定。どうよ。」
「行く。」


もちろん鈴鹿は、とんでもなく遠い。その鈴鹿まで、まいどおなじみポルシェ928(通称:レゲエ号)で完走できるのか。それは、オーナーである、友 達にも分からなかった。少し補足しておくと、レゲエ号は、「そろそろ全身にヤキがまわってきて、常にどこかしら壊れているが、走る・止まるは極めてしっか りしていて流石はドイツ車」という典型的なポルシェである。今年で10歳、バブル絶頂期に輸入された時の車両価格が1,400万円。最近の得意技は、エア コンと見せかけて熱風を吹き出すこと。(ドイツ車にエアコンを期待する方が間違っている)さて、F1 はいいけど、ホントに行けるのか?鈴鹿って、名古屋の向こうだぜ。


1.エンジンルーム一面にオイルを吹き 2.いつも通りエアコンは熱風しか出さず 3.窓が開かなくなり ながらも、レゲエ号は鈴鹿に到着した。家を出て2日。僕たちが鈴鹿サーキットの最終コーナーにたどり着いたのは、決勝レース開始 10分前だった。今にも雨が降り出しそうな、どんよりと曇った空。それでも、重い望遠レンズやら三脚やらを背負っているせいで、僕は汗だくだ。サーキット の周囲には、入場券を買えなかった数千人の人びとが路上駐車しながら、聞こえてくるF1のエンジン音に歓声を上げている。サーキットの中に入ると、あらゆ る茂み草むらを人が埋め尽くして立錐の余地もない。そして、更にスタンド入場ゲートをくぐると、ようやくコースがハッキリと見える。

うまくしたもので、コースがちゃんと見える場所には、スタンド席がつくられていて、そこにはスタンド入場ゲートがある。つまり、入場券を持ってい て、なおかつスタンド指定券を持っていないと(正規の料金で買うと、これは相当な金額だ)、まともには観戦できないのである。レースはショウビジネスであ り、金が動く。持たざるものは観れない。


スタンドを見回した僕の目にまず飛び込んできたのは、視界を埋め尽くすフェラーリ応援団の赤だった。ドイツやイタリアなど、ヨーロッパからの応援団 も居る。右も、左も、跳馬をあしらった赤が支配していた。旗もコートも、帽子も真っ赤。半端ではない。どれぐらい半端ではないかというと、写真のレイン コートが 2万円以上するぐらい半端じゃないのだ。そして今日、ミヒャエル・シューマッハが優勝すれば、マレーシアでの最終戦を待たずして、フェラーリはコンストラ クターズ・チャンピオンに輝く。そう、今日は名門の復活をかけたレースなのだ。

四万十川

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

四万十川は、長かった。四万十川の全長は、なんと 196km。高知県内を蛇行しながら、えんえんと流れる、一級河川なのだ。

高知市内の飲み屋で、「えーっ、あんたたち、四万十川っていったって、凄く長いんだよ。知ってるの?」と女将に言われ、僕たちは唖然とした。歩いて登るとか、そういうのではないのか、、。

翌日の夕暮れ時。僕たちは、四万十川の中流域を越え、支流の松葉川沿いに宿を求めた。全く、あきれるほどに静かな夕暮れ。たまたま飛び込みで入った 宿に荷物を置いて、ひとまず、僕たちは川に降りた。その日一日、必死に四万十川を遡り続けてきて、初めて、まともに対面した川は、皮肉にも、支流である松 葉川だった。


一言でいうと、松葉川はいい感じだった。綺麗な水と、川縁に揺れる葦、そして川を囲む湿った林。その向こうには、丁寧に手入れのされた、黄金色の田圃が広がっていた。

低気圧の余波だろうか、川を流れる水は冷たく、水量は多かった。上流の方を見ると、うっそうとした葦と、傾斜のきつい岩山が、僕の視界を遮ってい た。僕たちは、これよりももっと上流に向かっていかなければならないのだ。実際、僕たちのような素人が、どこまで先に進めるのだろうか?

四万十川の源流はいまだ遠い。

四万十へ

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

なんで四万十川に行こうと思ったのかは、よく覚えていない。しかし、JALのカウンターに立った時、他に行き先の当てがあったわけではなく、僕たちは高知行きの切符を買った。日本最後の清流と賞される四万十川は、四国は高知県にある。

切符売り場のちょっとした行列に並び、マイレージカードで搭乗者を登録し、クレジットカードで決済した。空港にさえ来てしまえば、旅に出るのは難し くない。僕は、飛行機はキライじゃない。乗るときの面倒くささが、いかにも旅行をするような気がして良いのだ。機体が一瞬停止し、エンジンが全開になる瞬 間がいい。さて、行きますか。そんな気分になる。

そういうわけで、8月の暑い日、僕と友達は、四万十川に向けて旅立った。僕は買ったばかりの一眼レフ一式を背負い、友達は文章を書くために、やはり 買ったばかりのノートPC を手にしていた。僕はモノクロやらリバーサルや、いろんなフィルムを持ってきていた。友達は、外付けの CD-ROM ドライブや Windows 2000 のインストールメディアまで持ってきていた。なんというか、本誌取材班みたいだ。


ここ数日、関東の天候はあまり良くない。一端、房総半島の突端まで進んだ飛行機は、90度ターンして、東京湾を右手に見ながら関西を目指す。空に上がって、20分程で、雲海の下に富士山が見えてきた。夏の雲をまとった山は、黒々とした表情。

オレンジジュースを飲みながら、富士山を何枚か撮る。ファインダーの中の露出計は、外界がものすごい量の光に照らされていることを示している。雲の上は、真夏の太陽の世界。