日本国内の記事一覧(全 211件)

四万十へ

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film
Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

なんで四万十川に行こうと思ったのかは、よく覚えていない。しかし、JALのカウンターに立った時、他に行き先の当てがあったわけではなく、僕たちは高知行きの切符を買った。日本最後の清流と賞される四万十川は、四国は高知県にある。

切符売り場のちょっとした行列に並び、マイレージカードで搭乗者を登録し、クレジットカードで決済した。空港にさえ来てしまえば、旅に出るのは難し くない。僕は、飛行機はキライじゃない。乗るときの面倒くささが、いかにも旅行をするような気がして良いのだ。機体が一瞬停止し、エンジンが全開になる瞬 間がいい。さて、行きますか。そんな気分になる。

そういうわけで、8月の暑い日、僕と友達は、四万十川に向けて旅立った。僕は買ったばかりの一眼レフ一式を背負い、友達は文章を書くために、やはり 買ったばかりのノートPC を手にしていた。僕はモノクロやらリバーサルや、いろんなフィルムを持ってきていた。友達は、外付けの CD-ROM ドライブや Windows 2000 のインストールメディアまで持ってきていた。なんというか、本誌取材班みたいだ。


ここ数日、関東の天候はあまり良くない。一端、房総半島の突端まで進んだ飛行機は、90度ターンして、東京湾を右手に見ながら関西を目指す。空に上がって、20分程で、雲海の下に富士山が見えてきた。夏の雲をまとった山は、黒々とした表情。

オレンジジュースを飲みながら、富士山を何枚か撮る。ファインダーの中の露出計は、外界がものすごい量の光に照らされていることを示している。雲の上は、真夏の太陽の世界。

Photo: 1998. Tahi, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film
Photo: 1998. Tahi, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

「ドーン、ドーン」という爆発音がして、ベランダに出た。目の前に、特大の花火が揚がっていた。光の帯が、教会の尖塔を赤く照らす。

ラグーンに囲まれたリゾートの一角。いくぶん塩の香りがする夜風が吹き込んでくる。静かな夜だと思っていたら、いきなり、花火だ。何発か派手に打ち上げて、終了した模様。なんの花火だったのかは謎。この脈絡のなさが、アジアか。


夏になると、日本では花火大会が開かれ、みんな大挙して見に行く。「みえねーぞ、このやろー、頭さげろー」「ビールいかがですかー」「通路に立ち止 まらないでください!通路をあけてください!」などと、一触即発の危機をはらみつつ、花火大会は進行する。そんな花火大会にあっては、場所取りが全て。だから、日々の計画性に欠ける僕のような人間は、まともに花火大会というものを見たことがない。記憶に残るのは、オヤジのケンカ、アワアワのビール、ピクニックシート代わりの新聞紙。うーん、花火は、、どんなだっけ。

そんな折り、この花火は子供の頃、米軍キャンプで見た花火を思い出させた。頭の上に降ってくるような、そんな花火だった。

都庁のリボン

Photo: 2000. Tokyo, Japan, Nikon F100, Zoom Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji
Photo: 2000. Tokyo, Japan, Nikon F100, Zoom Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji

「1秒の視点」その三。

レンズが見た、1秒間の東京の風景。

「都庁にはリボンみたいなのが付いてるんですね」という読者のメール。ふむ、確かに、リボンだね、この赤いオブジェ。そういうわけで、赤をあしらってみた。

この一角は、実は新宿副都心ではとびぬけて静かな所。街路の騒音は、気流の壁に阻まれて、ここまでは届かない。

冬。この広場を一人で通り抜ける。物陰に、肩を寄せ合う姿、何かに重なる姿。涙がにじむ。そりゃ、風のせい。