日本国内の記事一覧(全 211件)

ブラックレイン

Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film
Photo: 2000. Osaka, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-Film

映画の中の、忘れられない風景。僕にとってリドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」に出てくる大阪はその一つだ。(ブラック・レインの日本ロケは大阪を中心に行われている)

ブラックレインの中で、若山富三郎演じるヤクザの親分が、マイケル・ダグラス演じるニューヨーク市警の刑事に、こんな風に言うシーンがある。「3日 たって、防空壕を出ると街は消えていた。炎は、雨を呼んだ。黒い、雨だ。そして、貴様らは我々に貴様らの価値観を押し付け、俺達から文化も伝統も奪った」

日本人の内面は、敗戦前と敗戦後では、おそらく大きく変化した。価値観は断絶し、日本国民という形での、アイデンティティーを持てなくなった。そして、勝利者の価値観がもたらす富と力に二度目の敗北を喫した。


こんな風に書いておいて、おかしな話だが、大阪の街を歩いていると、その「敗北感」をあまり感じない。アメ公?なんじゃ、そないなもん。西欧文化に 対する、妙なへりくだりが無い。東京だったら、負けてなんとなく「しゅん」としてしまうところなのだろうが、きっと大阪の気質はそんな態度を許さなかった だろう。はっきり言ってスマートではないし、洗練されてもいないけれど、一本筋は通っている。

旧日本軍というと、すぐに玉砕とかそういうイメージがあるけれど、関西方面からの部隊の死傷率は、関東のそれにくらべて低かったらしい。お国のため?アホか。そんな感じだったのかも。

鈴鹿、F1、最終コーナースタンド、3日間指定

Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Fuji-Film
Photo: 2000. Suzuka, Japan, Nikon F100, SIGMA 100-500mm, Fuji-Film

東京某所、行きつけの焼き肉屋で、モクモクと牛を焼いている時だった。いよいよ、「国産黒毛和牛ロース with 新鮮青唐辛子」(本日の目玉)を網に載せようとしたとき、友達の携帯が鳴った。

暫くして電話を切った友達は、確信に満ちた表情を浮かべて、こうきり出した。

「鈴鹿、F1、最終コーナースタンド、3日間指定。どうよ。」
「行く。」


もちろん鈴鹿は、とんでもなく遠い。その鈴鹿まで、まいどおなじみポルシェ928(通称:レゲエ号)で完走できるのか。それは、オーナーである、友 達にも分からなかった。少し補足しておくと、レゲエ号は、「そろそろ全身にヤキがまわってきて、常にどこかしら壊れているが、走る・止まるは極めてしっか りしていて流石はドイツ車」という典型的なポルシェである。今年で10歳、バブル絶頂期に輸入された時の車両価格が1,400万円。最近の得意技は、エア コンと見せかけて熱風を吹き出すこと。(ドイツ車にエアコンを期待する方が間違っている)さて、F1 はいいけど、ホントに行けるのか?鈴鹿って、名古屋の向こうだぜ。


1.エンジンルーム一面にオイルを吹き 2.いつも通りエアコンは熱風しか出さず 3.窓が開かなくなり ながらも、レゲエ号は鈴鹿に到着した。家を出て2日。僕たちが鈴鹿サーキットの最終コーナーにたどり着いたのは、決勝レース開始 10分前だった。今にも雨が降り出しそうな、どんよりと曇った空。それでも、重い望遠レンズやら三脚やらを背負っているせいで、僕は汗だくだ。サーキット の周囲には、入場券を買えなかった数千人の人びとが路上駐車しながら、聞こえてくるF1のエンジン音に歓声を上げている。サーキットの中に入ると、あらゆ る茂み草むらを人が埋め尽くして立錐の余地もない。そして、更にスタンド入場ゲートをくぐると、ようやくコースがハッキリと見える。

うまくしたもので、コースがちゃんと見える場所には、スタンド席がつくられていて、そこにはスタンド入場ゲートがある。つまり、入場券を持ってい て、なおかつスタンド指定券を持っていないと(正規の料金で買うと、これは相当な金額だ)、まともには観戦できないのである。レースはショウビジネスであ り、金が動く。持たざるものは観れない。


スタンドを見回した僕の目にまず飛び込んできたのは、視界を埋め尽くすフェラーリ応援団の赤だった。ドイツやイタリアなど、ヨーロッパからの応援団 も居る。右も、左も、跳馬をあしらった赤が支配していた。旗もコートも、帽子も真っ赤。半端ではない。どれぐらい半端ではないかというと、写真のレイン コートが 2万円以上するぐらい半端じゃないのだ。そして今日、ミヒャエル・シューマッハが優勝すれば、マレーシアでの最終戦を待たずして、フェラーリはコンストラ クターズ・チャンピオンに輝く。そう、今日は名門の復活をかけたレースなのだ。

四万十川

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film
Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

四万十川は、長かった。四万十川の全長は、なんと 196km。高知県内を蛇行しながら、えんえんと流れる、一級河川なのだ。

高知市内の飲み屋で、「えーっ、あんたたち、四万十川っていったって、凄く長いんだよ。知ってるの?」と女将に言われ、僕たちは唖然とした。歩いて登るとか、そういうのではないのか、、。

翌日の夕暮れ時。僕たちは、四万十川の中流域を越え、支流の松葉川沿いに宿を求めた。全く、あきれるほどに静かな夕暮れ。たまたま飛び込みで入った 宿に荷物を置いて、ひとまず、僕たちは川に降りた。その日一日、必死に四万十川を遡り続けてきて、初めて、まともに対面した川は、皮肉にも、支流である松 葉川だった。


一言でいうと、松葉川はいい感じだった。綺麗な水と、川縁に揺れる葦、そして川を囲む湿った林。その向こうには、丁寧に手入れのされた、黄金色の田圃が広がっていた。

低気圧の余波だろうか、川を流れる水は冷たく、水量は多かった。上流の方を見ると、うっそうとした葦と、傾斜のきつい岩山が、僕の視界を遮ってい た。僕たちは、これよりももっと上流に向かっていかなければならないのだ。実際、僕たちのような素人が、どこまで先に進めるのだろうか?

四万十川の源流はいまだ遠い。