「魚片湯」が超一流にまずい

Sliced fish soup

Photo: “Sliced fish soup” 2011. Singapore, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

旅先の醍醐味は、驚くほど不味いものに出会うことである。

フードコートのチキンライスの旨さに気をよくした僕は、ひときは人が並んでいる魚ソバの店を目指した。「魚片湯」と書いてあるので、きっとそんな感じの食べものなんだろう。12時をまわって、近所の会社員達が、昼食を求めて長い行列を作りはじめている。


OLの後ろについて、店の中を覗きながら待つ。並んでいるのは見事に中国系ばかり。周りの会話は、完全に北京語で、まったく分からないし、店の人も北京語で応対だ。(シンガポールは英語も公用語だが、北京語も公用語だ)並んでいる人達のわくわく感、みたいなものが伝わってくる。きっと美味しいんだね、この店は。

僕の前に並んでいたオバチャンは、何人前もの持ち帰りを頼んでいる。簡単なタッパのような容器に並々とソバが入れられる。味付け?の唐辛子醤油のようなものも付いてくる。で、それがちょっと漏れているあたりが、アジア的。僕の前のOLは、一人が常連で、一人が初めて連れてこられたといった感じだ。セルフサービスのやり方に、いささか戸惑っている。


店の中では、会計係のオジサンと、調理係が2人。一人は、白濁したスープを中華鍋に煮立てて、手際よくソバを茹で仕上げる。もう一人は、ひたすら魚のフライを作って積み上げる。ひたすら、ひたすら積み上げる。ビールにも合いそうだ。どう考えても、美味いねこれは。

僕の番になって、もちろん北京語は分からないので、身振りでメニューを選ぶ。ぶっきらぼうに見えるオジサンは、結構親切だった。


たっぷりのスープに、米粉のソバ、魚のフライ、青梗菜。さて、食べてみよう。

まずはスープを。。マズッ!なんか、凄く嫌いな味がする。フライは、、なんか苦い。
致命的に合わない、劣化した脂の気配と、なんかいけない感じのする出汁。これは、まずい。中華圏の下町で出会う、机の脚みたいな例の味だ。全然、口に合わない。なんで人気なのか、まったく分からない。

いや、醍醐味だわ。

トラックの荷台

Dizzy city

Photo: “Dizzy city” 2011. Singapore, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

早朝。空港からホテルに向かうバスの窓から、見慣れない、光景を見る。いや、僕にはそれは異様な光景に見える。

トラックの荷台に座り込む、浅黒い肌と、彫りの深い顔立ちの人々。

多分、交通法規が日本とは違うのだろう。トラックの荷台に20人ぐらい、座っている。反射板付きのベストとヘルメット。服は普通のシャツ、そしてサンダル。大気汚染を避けるためか、目だけを出して布で顔を覆った姿の男も多い。


開発の進む湾岸地域に向けて、似たような労働者を乗せたトラックが、バスの左右にも、前にも、走っている。彼らが我々のバスに向ける視線は、一様に鋭い。

シンガポールは小さい国で、ITや貿易に強い、それぐらいのイメージしか無かった。しかし、もちろん、国はそれだけでは動かないのであって、Foreign Workerと呼ばれる建設業やサービス業に従事する外国人労働者が大量に雇用されている。

その意味では、シンガポールは非常に「発展している」のであって、安い賃金で手を上げる労働者が居る限り、例え、人口500万人足らずの国であったとしても、そこに海外の働き手が入り込んでくる状況は、日本と同じなのだろう。だが、ここまで露骨であることが、僕を怯ませた。


日中。街中を歩いていると、Foreign Workerとすれ違う。疲れ切った足取りで、目線は鋭い。

ふり返ると、彼も、街も、遙かに遠い。無限に、遠い。

鉄壁の旨さ、テキサス・ダブル・ワッパー

Texas double whopper

Photo: “Texas double whopper ” 2011. TX, U.S., Apple iPhone 4S, F2.4/35

時間があまりないので、ここはファーストフードで良いよね、という話になった。そういえば、アメリカ恒例のバーガーキング詣でをしていないではないか。

昼下がりの妙な時間だったので、ガラガラのバーガーキングに入る。
カウンターの、ヒスパニックの店員の言っている事が、耳慣れないイントネーションで全く聞き取れない。散々言い直して貰って、店内で食べるのか、店外で食べるのか、やっとそういう事だと分かる。多くのアメリカ人の良いところは、聞き直せば何度でも繰り返してくれる事。ちょっと聞き取れるようになってきたな、と思ったらこの態だ。


注文したのは、テキサス・ダブル・ワッパー。でかいワッパーに、ベーコンとチーズと、そしてハラペーニョが入っている。ハラペーニョの量は結構多め、アメリカ的ベーコンのサクサク感。 調べてみると、ケチャップじゃなくてマスタードが入っているようだ。日本でも売って欲しいぐらい、大人味で美味しい。残念ながら、テキサス州専用メニュー。

さっき僕のオーダーをとった店員の女の子が、フロアを掃除している。褐色の肌に、真っ白い目、僕よりもずっと小柄だが、エネルギー感というかそういうのが全然違う。ティーンネイジャーのバイトだろう、こんなクソ仕事はうんざりよ、という感じが漂っているが、それでもなんかエネルギッシュだ。


お昼をだいぶ過ぎたところで、店内の人影はまばら。たまに、平日の昼間にファーストフードなどに行くと、知られざる子連れ母さんワールドみたいなものが展開されていて驚くが、ここでも事態は同じだ。少し離れたテーブルで、やはりヒスパニックのお母さんが、子供二人を連れて、遅い昼食(朝飯かもしれないが)をとっている。テキサスの人々の体型はおよそスリムでは無い。

デブを見慣れるというか、普通の体型の人を見ると、痩せてるなぁという感じさえする。このお母さんも例外では無い。ただ、子供は普通の体格で、もの凄い勢いで歩き回ったり(這い回ったり)している。いったい、どのタイミングから、「あの体型」になってしまうのだろうか。


見ていると、店内で食べるよりも、ドライブスルーのお客が圧倒的に多い。ひっきりなしに、車が出入りしている。時間通りに食べるとか、そういう概念はあんまり無いのかもしれない。店に一見無駄なくらいクルーが沢山いるのは、実はドライブスルーの注文をさばくため、のようだ。

冷房がやたら効いていて、ドライブスルーにひっきりなしに車がやってきて、子供が遊び回っている。うんざりするくらいの日常感。アメリカの午後。