旅&食の記事一覧(全 234件)

楽園再訪

Photo: "Paradise."
Photo: “Paradise.” 2025. China town, Kanagawa, Japan, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Biogon T*2,8/28 ZM

すっかり様子の変わった横浜中華街で、流行廃りの今風の店に挟まれて、楽園は変わらずに営業していた。10年以上前に来ていた時の女将が、変わらずに入り口にしゃんと座っている。

品物は、昨今の食べ放題中華のような激安では無い。しかし、ちゃんとした材料を使った料理が出てくる。以前来たときも観光客はおらず、地元の人達と思しき作業服姿の団体が、ちょっとした宴会をしていた。


今は週末の昼前だが、店は空いている。外は、浮かれた観光客でごった返しているが、店内はいつものように静かだ。鰻の寝床の細長い店内は相変わらず。十年一昔。とはよく言ったものだ。

頼むものはもう決まっていた。モツの生姜和えは、相変わらずの白い美しさ、癖のなさ。塩味は?こんなに強かっただろうか。料理人が歳をとったか、僕の味覚が変わったか。それと牛肉の煮込みが載った焼きそばをとった。量は少し多すぎる気がしたけれど、そうそう訪れる事も無いと思うと頼みたかった。

食べ終わる頃に、予約の団体がどっと入ってくる。古なじみの客が、大事な会食に使う、相変わらずのお店だった。

思いもよらない支持者

Photo: “Khao Yam.” 2025. Tokyo, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.
Photo: “Khao Yam.” 2025. Tokyo, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.

ごく日本風にArrangeした高級タイ料理、というのに惹かれて、この店を選んだ。面子は3人。取引先で今度実質的な社長に昇格するIさんと、それとはまた別の会社の社長 Tさん。会はTさんが設定してくれて、店は料理と酒にとことん人生を費やしている彼女のリストから選ばせてもらった。

Iさんの昇格祝いを兼ねているのだが、そのIさんは、実は当初そんなに印象に残る人ではなかった。現場に来ているちょい偉い人、ぐらいの認識。そんな彼が、実は僕を評価してくれていて、影のサポーターであった事に、最近まで気がつかなかった。「あの人、凄いファンだから。」Tさんから、そう教えられたのは、出会いから何年か経ってのことだった。自分が気がつかないところで、自分を助けてくれている人が居る、そういう事は人生の勇気になる。


日本の素材をタイ料理の手法で処理し、日本のやり方で仕上げる。そういうレストランというのがどれ程あるのか知らないが、僕にとっては初めてのものだった。古代米、鮟鱇の肝、苺、ナッツ、レモングラスなどによるKhao Yam。見た目の美しさ、だけではなくて、混ざった素材のバランスが秀逸。少しのナッツが、タイ料理の感じを高める。

タイ料理の味わいが含められていて、それでいて、日本の素材でできている。タイ料理じゃない素材を組み合わせて、でもこれはタイ料理だね、という感じがちゃんと出ている。遊んでいるという感じがする。好奇心を忘れないで、いろんな新しい組み合わせに挑んでいく、楽しいディナーだった。Tさんから、料理にココナッツオイルを使うと、ちょっと新しい世界が見えるとか、そんな事も教わった夜だった。

自分の昇格祝いも兼ねた席に、お土産としてお気に入りの最中まで持参したIさんは、きっとうまくいくと思う。

今半

Photo: “Sashimi dish at Imahan.” 2024. Tokyo, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.
Photo: “Sashimi dish at Imahan.” 2024. Tokyo, Japan, Apple iPhone 14 Pro Max.

ちゃんとしたものを食べよう、そういう事で企画をして、不定期に有志3名が集う。万札を握りしめて、一度は行ってみようという名店を訪れるのだ。

人形町今半は、東京の人には割と馴染みのある店名だと思う。弁当なんかは、ちょっと景気の良いミーティングなんかでお目にかかったりする。しかし、本店の夜ともなれば、昨今は予約もずいぶん先まで埋まっている。個室のみで焼きの担当が付くわけで、そもそもキャパに限りが有るのだ。

さて、予約はどのコースにしましょうということで、刺身も付いた一番高いヤツにしよう、という事になった。正直、別に今半で刺身を食わなくても、とは思ったが、ここは後輩に従ってみようと思う。僕にも、そういう気分が湧くようになったのだ。


果たして、先付けの器も驚いたが、刺身の盛り付けも大変美しかった。海老も鮪も、そして器も昭和の時代から抜け出てきたような、朱の美しさだ。日本料理を食べる嬉しさは、こういう所にあるんだと思う。コスパとか、タイパとか、何に対してのPerformaceを求めているのか。世界にちゃんとしたものは、やっぱり必要で、ちゃんとしたものを作るのは手間と時間と、つまり金がかかる。