6年ぶりに

Photo: 今年は暑すぎるが 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "今年は暑すぎるが" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

そういえば、僕は昔テニスをやっていたのであって、久しぶりにラケットを引っ張り出してみた。グリップが黴びてますね。シューズも、、ダメだ腐って る。ちょっとしたきっかけで、またテニスを始めることにした。でも、コートを離れて 6年。最近ではウインブルドンを見ても、選手が全然分からなくなってた。あの頃活躍していたイワニセビッチは、今期で引退じゃないか。

グリップテープは白を買ってきた。大学の時から、テープは白を使ってる。やっぱり、白が一番カッコイイと思う。久しぶりに巻いたから、一回目は失敗 した。靴も買う。僕は足首の靱帯を切っているので、靴はちゃんとしたテニス・シューズを新調した。(テニス用の靴というのは、普通のジョギング用などとは 違って、横方向への動きを重視してある。街履きのファッション用とはちょっと違う)ナイキの新しめのやつが、これで 5,000円は安いなぁと思ってレジに持って行ったら、5,000円はお隣の安売り商品で、こっちの値段は倍だったよ。まあ、いいや。


日の光がまだ弱い時間から、ラケットを持って家を出るのはとても懐かしい気分だ。まだ涼しい空気を吸って、さあやるぞという感じ。(じきへばるんだ が)何か忘れているような気がするけど、遅れちゃいけない。なにせ、土日にプレーできるコートって、めちゃくちゃ遠いところにあるのだ。

本当に打てるのか?と、正直不安に思いながら、コートに立った。やっぱり打てない。追いつけないし、動けない。熱気と息切れで眩暈がしそう。でもな んとか 2時間耐えてみれば、気分は良い。しっかり半袖焼けして、その日はおしまい。(そう、忘れてきたのは日焼け止めだった)その次は 4時間やって、全然楽で、楽しいと思うようになった。やっと体が慣れてきたみたい。なんとなくテニスが出来ていた時代は、とても恵まれていたんだと思う。 仕事を持っている今だと、皆が集まれる場所と時間でコートをとるのも、一苦労だ。でも、社会人になってからの方が、もっと純粋に楽しもうという感じがあっ て、それはそれで好きかもしれない。

謎都市

Photo: 発進 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "発進" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

国道の真ん中でオイルを吹いてレッカー移動となった友人のポルシェが、ようやく修理されて戻ってきた。久しぶりに乗せてもらって、例によって思いつきで迷走してみる。

「コースが設定されました」

壊れる前はオーディオはテープしかかからず、紙の地図さえ装備されていなかったが、修理ついでにいきなり HDD ナビが付いて、CD も mp3 もかかるようになっていた。日本のカーナビは、間違いなく世界で最も進化している。なるほど、CD をたたき込むと、片っ端からエンコーディングしてくれるわけだ。PC の世界ではもはや当たり前の機能だが、これは便利。埃を被った U2(!)のテープを引っ張り出してかけていた頃は、それなりに雰囲気もあって(なにせ、年式の古い車なので 80年代の音楽がとても似合う)、それはそれで良かったのだが、やはりハイテクの快適さというものはある。

「まもなく目的地付近です、ガイドを終了します」

着いた所は、なんというか、うらぶれた港湾都市という風情。明らかに治安が良くない感じだ。派手目のジャージでヤンキーな家族連れが闊歩し、エルグランドが走り回り、だだっ広い道路にゴミ袋が舞っている。ここで晩飯喰うんですか。本気ですか。


客が誰も居なかった割に、焼き肉はかなり美味しくいただいた。支店が、実は新宿東口にあるという事実が無ければ、ちょっとした小旅行気分である。いや、むしろ、新宿で食べられるものを、この海沿いの、謎都市で食べる事こそが、正しいのだと思う。でも、「明日早いから」とか言って、帰りに高速を使って しまうのは、よくよく考えると反則のような気がするし、パワーダウン感を否めない気もする。どうせ高速に乗るなら、反対方向に行くべきなのだ、きっと。


注:この文章はフィクションです、実在のエルグランドには何ら関係ありません。

夏祭りで立ち飲み

Photo: 提灯 2004. Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "提灯" 2004. Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

「散歩の達人」の行事カレンダー(?)を眺めてみれば、今月はいたるところで夏祭りが行われている。仕事をさっさと切り上げて、ちょっと祭りに行ってみるか。駅から薄暗い参道を歩くがやけに静かで、もう終わっちゃったの?と懸念する。無数の提灯が、落ち着かない盛夏の夜気に映える。眩く輝く提灯を見 ていると、少し幻惑されて、言葉を失う。何人かの浴衣姿の女の子とすれ違い、煌々とした光りの壁を抜けると、夜店の喧噪が聞こえてきた。


都心の祭りだけにテキ屋の怪しさもひとしお、メニューもバラエティーに富んでいる。時間が遅いので、もう誰も踊らない仮設舞台の袖に陣取る。感性に まかせて順番に変わったつまみを買い出しに行くが、負けず嫌いが揃っていて、メニューはだんだんエスカレートしていく。鮎塩焼き(絶対コレを食べる、と主張する人がいた、思い出の味なのか)、豚玉(一番売れている店だけあって、意外とイケた)、あげ餅(職人肌のじいさんが揚げていて、美味かった)、タイ ラーメン(辛かった、海老を食べるのはちょっと恐かった)、インドカレーとナンのセット(ナンがでかすぎ、もはやこれは食事だ)、ドラえもん焼き(ベビーカステラ、中身は無い)。ちょうど胸の高さの舞台の床に酒と夜店の食べ物を並べる。ちょっとした立ち飲みみたいで、快適。

星空の下(見えないけど)、テキ屋均一価格 500円の缶ビールを煽りながら、行き交うヤンキー客を眺める。いったいどっから来たのか知らないが、こんな都心でもちゃんとヤンキーな人が居るのだ。奴らは、地面に落としてしまった金魚で大盛り上がり、微笑ましい。普段、地縁的つながりなんて何もない都心の神社に、突然、超ローカルな祭り空間が発生。そしてヤンキーとテキ屋と(多分)ヤクザが現れる。ちょっとバイオレントな香りもする、祭りの夜。踊るわけでも、花火が上がるわけでもないが、十分に夏祭りだなぁ。


注:金魚のうち何匹かは助けられ、何匹かは生け垣のあたりにうめられてしまった。