自分の中の、いつか訪れてみたい場所。そのリストにずっと入っていたのが、イサム・ノグチ基本設計のモエレ沼公園だった。僕が、イサム・ノグチ庭園美術館を訪れたのが2006年、それとほぼタイミングを同じくしてモエレ沼公園はオープンしている。
市街から、かなりの時間路線バスに乗って、終点のモエレ沼公園西口で降りる。西口、と言ったって、そこから公園の入り口まではまだ20分近く歩かなくてはならない。雨、そして5月とは言え北海道の寒風が吹き付ける。この季節に、公共交通機関で来るような所では無いのだ。(もっと近くにもバス停があるのだが、期間限定)
東側のアプローチから入ると、公園の直ぐ横は雪捨て場になっていて、なんとも言えない冷気が漂ってくる。その入り口をえんえんと歩き橋を渡ると、特徴的なガラスのドームが見えてくる。イサムノグチ美術館の展示室で嗅いだ土と藁の匂いとは全く異なる、金属とガラスのクリーンなピラミッド。
外の肌寒さに、真っ先にピラミッドの中に入った。悪天候をシャットアウトし、静謐な空間が広がっている。鉄骨の構造と、雨にくぐもったガラスの向こうに広がる景色。この場所は美しいなと思う。広いのか、狭いのか、密なのか、疎なのか。それも居る場所、向ける視線でどんどん変わってくる。ピラミッド、とは言ってもその形状は単なる四角錐ではなくて、公園側に向けて切り欠いたように開かれている。
そして、鐵とガラスで出来た空間には、温かみが漂っていた。