CONTAX T3, Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35

Photo: 2001. Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

Photo: 2001. Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D(IF), Fuji-film.

Contax T3 は、T2 の後継機として2001年3月に発売された。10年ぶりの新しいTは、ガチッと無骨な前作とはうってかわって、滑らかで、繊細な、全く新しい T だ。

T2 のユーザーが一番戸惑うのは、おそらく、その質感である。前作が、握った瞬間に威圧的とも言える存在感を感じさせたのに対して、T3 は、あくまで控えめで、脆いとさえいえそうな繊細さを感じさせる。全体的に動作音は静かになり、機械然とした T2 の雰囲気から、良くも悪くも現代的なカメラになった。

さて、この T3 は、文字通り T2 の正統な後継機として開発された、35mm ハイエンド AF & AE コンパクトカメラである。T2 で問題とされていた部分の改良が行われ、(AF 精度、シャッター速度、フィルター対応、接写能力、周辺光量等)更なる小型・軽量化が図られている。ユーザーの声がきちんと反映された改良には、使い込む ほどに納得させられるものがある。あくまで、T2 があっての T3 という、正常進化の製品だと思う。以下、個別に改善点を見ていこう。


外装は従来通りチタンを基本とするが、樹脂部分の露出が増えた。これは、総合的なコストダウンの影響もあるのではないかと思う。もう少し高くても良 いから、外装の金属率を増やして欲しかった。特に、レンズの胴回りが樹脂で Zeiss ロゴも印刷なのはちょっと悲しい。ただ、T2 で評判の悪かった、レンズの蓋はしっかり固定されるようになった。撮影の際の質感として重要なレリーズボタンは、従来通りの多結晶サファイアで安心。

一新された Sonnar T* 2.8/35 は、画角が変更され、発色は T2 より現代的かつビビッドに、解像度は更に上がった。(ポジを見ても、一眼レフとの区別はつかないと思う)絞り込んだ際の、周辺光量の低下が大幅に改善され たのは、レンズの間にシャッターを内蔵させる方式をとったためだ。このサイズで、フィルターアクセサリーが付けられる。とにかく、当たりはずれが少なく なって、撮りやすくなった。

操作性としては、ダイアルの割り当てがかなり変わってしまい、T2 に比べて直感性と操作性に劣る。レンズのリング上でのマニュアル絞りが廃止され、T2 の MF ダイアルに当たる部分が絞りダイアルに変った。しかもロックボタンがついていて、とっさに操作できない。T3 では事実上、AF & プログラム絞りで使う形になると思う。その部分でのコンセプトは、変わってしまったと言えるのかもしれない。ただ、カメラ任せに撮って、別に普通に撮れ る。むしろ、後述の制御系の進化によってはるかに「当たる」確率は上がっており、これも一つのアプローチなのだと思う。

制御系。ピントの合わせ易さと測光精度には、格段の進歩が見られる。一言で言うと、誰がシャッターを切っても、ちゃんと写る。T2 のようなある種の「怪しさ」はなくて、思った通りの写真が撮れる。T2 でもかなり静かだったシャッター音はさらに小さくなった。音は、あまり良くない。ファインダーは、T2 より暗いが、一般的なコンパクトカメラに比べると、見やすい部類に入るのではないかと思う。


Photo: 2002. Sapporo, Japan, CONTAX T3, Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX

Photo: 2002. Sapporo, Japan, CONTAX T3, Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX

T3 の Sonnar T* 2.8/35 は接写能力が改善されて 35cm まで寄ることができるようになった。この部分は、コンパクトカメラの用途から考えても、非常に使い勝手が良いと思う。

描写は、T2 に比べておとなしいが、解像度とコントラストは優秀。良いレンズだ。光線条件が悪くても、きちんと色を出してくる。どこかおっとりした絵を出す T2 に比べて、T3 の撮ってくる絵には独特の緊張感がある。

最初、持ったばかりの時は T2 に比べて頼りなく感じた。しかし、その描写力に気が付いてからは、頼りになるサブカメラとして常用している。この T も、長くつき合ってその真価が分かる機械だと言える。CONTAX の性能とデザイン上の美しさを維持しながら、よくここまで小さくできた。全体的に言えば、サブ一眼レフとしての実力を十分に持ったコンパクトカメラだ。

注1:写真の T3 TITANIUM BLACK は 2001年6月発売
注2:カスタムファンクションの標準設定では、AF 時のレリーズタイムラグがかなり体感されるので、2b にした方がよい

CONTAX RX

Photo: CONTAX RX

Photo: CONTAX RX

重い、でかい、冷たい金属。今、普通になってしまったデジタル機器としての SLR ではなくて、機械としての SLR の良さが CONTAX には残っている。

CONTAX RX はヤシカ CONTAX の RTS (Real Time System)の流れを組む、プログラム AE マニュアルフォーカス一眼レフだ。CONTAX ST の後継機に当たる機種で、クラスとしては RTS III と Aria の中間に当たるミドルレンジ製品となる。1994年発売だが、2002年に電子部品の入手困難を理由に生産終了している。現在はマイナーチェンジ版の、RX IIが後継機として発売中。デジタル・フォーカス・インジケータ (DFI) が省略されたのが、RX との相違点。その分、ファインダーがちょっと明るくなっているらしい。

35mm SLR のなかで、マニュアルフォーカスカメラはほとんどなくなってしまったが、CONTAX は最後の牙城として残っている。僕も最初は、Nikon の AF SLR を使っていたので、MF のカメラをいまさら買うべきかかなり迷った。実際には、慣れてしまえば MF でもまったく不便は感じない。昨今の AF レンズでも MFで使うことはできるが、ヘリコイドの質感やピントの合わせやすさはやはり MF 専用機が上。

「囁くような」と言われるシャッター音は、現行の CONTAX SLR の中で、最も静粛。ミラーショックも、驚くほど少ない。シャッター音の良さでは、今売られている 主要な 35mm SLR のなかでは郡を抜く。個人的には、RTS III のシャッター音よりも、上品だと思う。シャッターを切るのが楽しくなる、そういう音だ。金属製のボディーは剛性感が高く、冷たい質感が心地よい。軽いこと は良いことだ、という感じの今風一眼レフと比べると、明らかに重いが、レンズとのウエイトバランスを考えるとこれぐらいは必要か。レンズを付けると、 1kg – 2kg にはなるので、ストラップは付属のものでは少し心許ない。皮で金属部を隠す CONTAX のオプション純正ストラップはなかなか良いので、お勧め。


操作形態は、ダイヤルを中心とした CONTAX 共通のシンプルなもので、極めて扱い易い。一見すると操作部が多いように思えるが、最近のデジタル制御のカタマリと化したカメラにありがちな、「ボタン A + ダイヤル操作」のような、複雑なインターフェイスは無く、見えているものが一対一で機能に結びつくので、実は覚えるべき操作は少ない。CONTAX が初めて導入した多段露出機構、プレビュー機能、などハイエンドユースに必要な機能は備えるが、逆に特筆するようなギミックは、 DFI ぐらいしかない。DFI はマニュアルフォーカスの補助機能で、フォーカスが合っているかどうかを、ファインダー上に表示してくれる。(もちろん、レンズは動かないので、あくまで 手で合わせる)センサーが、ものすごくセンシティブなので、手持ちで実用に使うには厳しい。あくまで、参考として使う感じ。(RXIIで廃止されたことか らも、実際にはあまり使われなかったのだろう)一つ残念な点は、データバックはコマ間のデータ写し込みに対応しているのだが、露出データを入れることがで きない。これは、RXII でも同じで、下位機種の Aria では可能なだけに、後継機(そんなもの出るのだろうか?)では是非対応して欲しい。ちなみに、モーター駆動が少ないので AF を使っている人には想像できないぐらい、電池はよく持つ。


色々書いたが、スペック上は全く派手さが無いものの、バランスとパフォーマンスに優れた実用機種だと思う。

ちなみに、フィルムドライブに関しては、まるで信用できない。前々から CONTAX のミドルレンジ機で指摘されてきたことだが、フィルムの装填に失敗するケースがあったり、撮影終了後の自動巻上げがきかない場合があったりする。かぶり で、撮影済みのフィルムを失いたくなければ、巻き上げボタンを使って手動で巻上げを確認するくせをつけておいたほうが良い。また、気休めかもしれないが、 装填するときの、フィルムの引き出しには、最大限の注意を払う必要がある。

注:京セラのカメラ事業撤退により、CONTAX の全ての製品は現在生産中止になっている。

食べ残したアンパンマンの顔

食べ残したアンパンマンの顔はどうなるんですか?

という疑問さえ、google に聞けば分かってしまう昨今。いったい、ここに書いている文章の、何が、目新しいと言えるのか。全ては、既に提示された疑問と、既に論じ尽くされた答えではないのか。

とか、書いてみる休日。

注:自分で調べるか答えに飛びつくか、それが問題。