Photo: "peyoung" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.
ガード下のタイ料理をたらふく食べた後、我々は新橋あたりのスペインバルで小さなテーブルを囲んでいた。
特価のハモンセラーノを囓りながら、目新しいiPhoneアプリを披露したりしている。
湯切浪漫、は誰もが経験のある、ペヤングの湯切り作業を体験するiPhoneアプリだ。iPhoneの傾きセンサを利用して、湯切りの正確さと速度を競う。傾けすぎれば湯と共に麺が飛び出るし、グズグズしていれば麺は伸びきってしまう。まあ、そういうゲームだ。
僕の向かいで、泡のようなものを飲んでいるセレブに、そのアプリをやってみていただく。余裕で麺が飛び出している。それはいいが、、なんか怪しい。
「ところで、ペヤングって食べたことあります?」
「ないわよ」
なんと言うことだ、関西在住ならいざ知らず、ペヤングを食べたことが無い?!っていうか、インスタント焼きそばを作ったことが無い。まさに、こういうのをセレブというのだ。僕と友人は、その衝撃に言葉が無かった。というのは嘘で、即
「じゃあ、作りに行きましょう」
と提案したのだった。
ほら、あそこにコンビニの看板が見えてる。ドングリのブリュレを食べたら出発しよう。
目に刺さるような蛍光灯が眩い深夜のコンビニに、幾らするのか分からないマルチカラーモノグラムのバックが、全くマッチしていない。
果たしてここにペヤングはあるか。もちろん、ある。インスタントラーメンの棚に、大量に在庫されている。ペヤングの隣の山を示して
「これはなんですか?」
ああ、それはペヤングと双璧を成す、UFOです。さすが、初見でライバル製品を見抜くとは。
「じゃあ、これは?」
この際、一平ちゃんはどうでもいいでしょう。
友人が、丁寧にコーチする。まず、フィルムを剥がし、ソースを忘れずに取り出す。かやくを入れてお湯を注ぐ。ここでソースを入れないこと(重要)。3分待って、いよいよ湯切りしましょう。
iPhoneで練習していたとはいえ、やはり実際にやってみるというのは、間違いなく楽しいに違いない。人生日々発見ではあるが、世界の様々を見聞きしてきた人間が、今、ペヤングの湯切りを生涯で初めてやっているのだ。人に立ち会われて、初湯切りをする人間が、この世界にいったい何人居るだろう?
湯切りが終わったら、ソースを混ぜて、スパイスを入れて出来上がり。皆で頂きましょう。何度食べても、やはり絶妙なバランスの食べ物だ。セレブに、初湯切りから、初ペヤング実食までを体験して頂き、大変有意義だった。
あ、UFOはお土産なので、ちゃんと持って帰って下さい。