山に向かって歩くペンギン

Photo: 太陽 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

Photo: "太陽" 2006. Japan, Zeiss Ikon, Carl Zeiss Biogon T* 2.8/28(ZM), Kodak 400TX.

ディスカバリーチャンネルをボーッと見ている。


南極のペンギン。

ペンギンは宿営地と餌場の開氷面を往復して生活している。

しかしある日、一匹のペンギンが宿営地と開氷面の真ん中で立ち止まる。そして、仲間から離れてただ一匹、遙か内陸の山脈を目指して歩いて行く。


例え、彼をつかまえて、宿営地に連れ戻したとしても、また山に向かっていくのだという。

海のない内陸部は遙か 5,000km 続き、待っているのは死。彼らが山に向かう理由は、分かっていない。

ヨチヨチ歩いていくその鳥は、最期に何を見るのだろう。

セレブにペヤングを作らせる

Photo: plain-pasta 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: "peyoung" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

ガード下のタイ料理をたらふく食べた後、我々は新橋あたりのスペインバルで小さなテーブルを囲んでいた。

特価のハモンセラーノを囓りながら、目新しいiPhoneアプリを披露したりしている。

湯切浪漫、は誰もが経験のある、ペヤングの湯切り作業を体験するiPhoneアプリだ。iPhoneの傾きセンサを利用して、湯切りの正確さと速度を競う。傾けすぎれば湯と共に麺が飛び出るし、グズグズしていれば麺は伸びきってしまう。まあ、そういうゲームだ。


僕の向かいで、泡のようなものを飲んでいるセレブに、そのアプリをやってみていただく。余裕で麺が飛び出している。それはいいが、、なんか怪しい。

「ところで、ペヤングって食べたことあります?」
「ないわよ」

なんと言うことだ、関西在住ならいざ知らず、ペヤングを食べたことが無い?!っていうか、インスタント焼きそばを作ったことが無い。まさに、こういうのをセレブというのだ。僕と友人は、その衝撃に言葉が無かった。というのは嘘で、即

「じゃあ、作りに行きましょう」

と提案したのだった。

ほら、あそこにコンビニの看板が見えてる。ドングリのブリュレを食べたら出発しよう。


目に刺さるような蛍光灯が眩い深夜のコンビニに、幾らするのか分からないマルチカラーモノグラムのバックが、全くマッチしていない。

果たしてここにペヤングはあるか。もちろん、ある。インスタントラーメンの棚に、大量に在庫されている。ペヤングの隣の山を示して

「これはなんですか?」

ああ、それはペヤングと双璧を成す、UFOです。さすが、初見でライバル製品を見抜くとは。

「じゃあ、これは?」

この際、一平ちゃんはどうでもいいでしょう。

友人が、丁寧にコーチする。まず、フィルムを剥がし、ソースを忘れずに取り出す。かやくを入れてお湯を注ぐ。ここでソースを入れないこと(重要)。3分待って、いよいよ湯切りしましょう。


iPhoneで練習していたとはいえ、やはり実際にやってみるというのは、間違いなく楽しいに違いない。人生日々発見ではあるが、世界の様々を見聞きしてきた人間が、今、ペヤングの湯切りを生涯で初めてやっているのだ。人に立ち会われて、初湯切りをする人間が、この世界にいったい何人居るだろう?

湯切りが終わったら、ソースを混ぜて、スパイスを入れて出来上がり。皆で頂きましょう。何度食べても、やはり絶妙なバランスの食べ物だ。セレブに、初湯切りから、初ペヤング実食までを体験して頂き、大変有意義だった。

あ、UFOはお土産なので、ちゃんと持って帰って下さい。

音楽をやる人は、格好いい

Photo: 橙 2010. Saitama, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA), cRAW

Photo: "橙" 2010. Saitama, Japan, Sony α900, Carl Zeiss Planar T* 85mm/F1.4(ZA), cRAW

例えば、音楽をやる人は、格好いいなと思う。姿が格好良い。

僕のように、文章を書いたり、写真をいじったりする人間は、そういう姿があんまり決まらない。

楽器を手に熱演するわけでも、マイクを通して観衆に訴えるわけでもない。ベッドに長座りして、ノートPCのキーボードをぱたぱた叩いているだけだ。


ライブ感なんてものも無くて、じっと書き続ける。もっとも、僕自身はスポットライトを当てられたいとか、まったく思っていないから、それはそれで快適なのだけれど。

何かを撮っている時は、ちょっとライブかもしれない。僕はけっこう真剣に撮るので、僕が撮っている姿を見る人は、「ああ、撮っているなぁ」と思うらしい。そいういう忘我が、ライブ感か。