柱。と、空。

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

ゴンドラを係留するための柱。と、空。

ヴェネツィアの写真は、AGFAで撮った。AGFAのフィルムは、日本ではブランド力が無いせいか、えらい安い。しかし、ドイツ生まれのフィルムだ けあって、ヨーロッパの街並みを写すには結構良い。富士フィルムが草木に向いているとすれば、AGFAは石とか土とかに向いているのだ。

現実のヴェネツィア

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa

ヴェネツィアは、著名な観光地だけに、テレビで採りあげられることも多い。

テレビのヴェネツィアと、現実のヴェネツィアの最大の違いは何か。それは、「臭い」だ。ここの水路は、車道と、下水道が一緒になったような機能を果 たしているから、その臭いは最悪。

両側を高い建物に囲まれた水路の底からは、時折、白濁した汚水がわき上がってくる。多分、生活排水はみんな水路に流されているのだろう。水は濁り、 透明度は無いに等しい。

ところが、不思議なことに、ここの水は光が当たると、なんとも美しいエメラルド色に輝く。これは、そんな瞬間を撮ることが出来た一枚。

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会(Basilica di Santa Maria della Salute)

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa, FS

Photo: 1995. Venice, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Agfa, FS

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会(Basilica di Santa Maria della Salute)、自分では、撮った記憶のない1枚。この教会はヴェネツィアに数ある歴史的建築物の中でも際だって美しい。

ここヴェネツィアは、どこもかしこもキレイに古い。伝統、という言葉を、ごく単純に「古い」と言い換えたとしても、その古さ自体が、美しさを生み出 している。日本が木の文化ならば、ヨーロッパは石の文化。全く異なる時系列の中で育まれた伝統は、日本で育った僕にとって100%の異文化。しかし、その 建築物は、僕にとっても美しく感じられる。

ヴェネツィアには、有名な教会や、貴族階級の宮殿など、重々しい建物が多い。にもかかわらず、街中には、どことなく浮かれたような空気がただよって いる。ヴェネツィアが観光地化されているから、ではあるまい。港街に共通な、ある種の開放感によって生まれる雰囲気。

港町の開放感というのは不思議。なにかを押しつけてくるわけでもないのに、気が付くと、その開放感のエッセンスが体の中に入ってしまうのだ。