L.A.空港でこれを書いている

Photo:1995, Westin Bonaventure, Los Angeles, CA, USA, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film.

Photo:1995, Westin Bonaventure, Los Angeles, CA, USA, CONTAX T2 Carl Zeiss T* Sonnar 2.8/38, Fuji-film.

文章は、時間を超えて、人の鼓動を運ぶ。

部屋の片付けをしていると、昔使っていた手帳が出てきた。日に焼けて退色してしまったサザビーのシステム手帳。その中には、ある日、Los Angelesの空港で書いたメモが綴じてあった。僕が旅をしながら書いた、多分初めての文章だ。


L.A.空港でこれを書いている。誰にあてた文章でもないけれど、いつか誰かが読んでくれるかもしれない。

出発までの1時間、ロビーに座り、オレンジジュースを飲んで、村上春樹を読んでいる。見知らぬ土地で、1人きりで、小説を読むのは、けっこういい気 分だ。僕は、一人旅なんてできないタイプだと思っていたけど、けっこう向いているかもしれない。1人だと、日ごろ自分が、いかにまわりに気をつかっている のかが分かる。

3年前と同じように、慈善団体の怪しい男が、寄付を募っている。アメリカに最初に来たときは、空港中にたちこめる外国のにおいに圧倒された。今はそんなことはない。

旅行者というのは、ある種気分のいいものだ。何も期待されないし、何の責任もない。僕は旅が好きだ。切り離された感覚が、とても好きだ。今居る、デルタ航空のゲートからは、メキシコにだって行けるんだ。でも、これから帰りの便に乗る。日本に、僕は大切なものを置いてきたから。


だってさ。