雨の匂いをかぐと、最初に通った小学校の景色を思い出す。
外に出られない雨の日、渡り廊下から外を眺めると、コンクリートで固められた灰色の中庭に、白い百葉箱が見えた。教室にも廊下にも、雨の匂いが充満していた。
いつも一緒に遊んでいる仲間達も、雨の日はちょっとバラバラ。晴れたら、また遊ぼう。
そういう暮らしが、ずっと続くんだと思っていた頃の記憶。暫くして僕は、親の仕事の都合で見知らぬ土地の学校に移り、二度と戻らなかった。
朝、バス停までの裏道は舗装が悪い。道はところどころ大きな水たまりに占領されていて、僕は花壇になっている分離帯の上をバランスをとって歩く。スーツ姿でやることじゃないけど。
踏み外さないように、バランスを崩さないように。
雨の匂いはきっと変わっていない。僕だけが、変わった。