築地のネコ

Photo: 築地のネコ 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX.
Photo: "築地のネコ" 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EBX.

築地のネコ。

ネコは魚屋の天敵ではないのかと思うのだが、虎視眈々と魚をねらうでもなく、魚屋の親爺に追い散らされるでもなく、けっこうのんびりと日向に出ている。

魚の匂いが染みついたアスファルトとネコは、ぴったりの景色だ。


築地は、夜に鮨を食いに行くだけではなくて、昼間に歩いてみるのも楽しい街。夜はシャッターを閉めて静まりかえっている商店が、にぎやかに鮮魚やら、乾物やらを売っている。まるで、別の界隈だ。ふらっと行っても、美味しいものもあるし、眺めて楽しいものも沢山売っている。

その雰囲気に飲まれて、訳の分からないものを買うのも楽しい。僕は、何故かここで椎茸を大量に買ってしまったことがある。椎茸は何かと便利じゃないかと思って買ったのだが、それだったら出汁昆布でも買った方がまだ気が利いていたと、後から思った。

まずは海鮮丼でも食べようかと歩いていると、またも築地ネコ。


やはり日本中の海産物を食べているのか、ちょっと太った彼女(だと思う)。お昼時のせいか、人通りが多くなってきて
「もー、なによー」

という感じで、プイッと向こうを向いている。


注:築地といえば鮨だが、昼と夜で板前やネタが違うことも多いから、昼飯には海鮮丼でも食べておくのが無難だとは思う。

百葉箱

Photo: 雨の径 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.
Photo: "雨の径" 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

雨の匂いをかぐと、最初に通った小学校の景色を思い出す。

外に出られない雨の日、渡り廊下から外を眺めると、コンクリートで固められた灰色の中庭に、白い百葉箱が見えた。教室にも廊下にも、雨の匂いが充満していた。

いつも一緒に遊んでいる仲間達も、雨の日はちょっとバラバラ。晴れたら、また遊ぼう。

そういう暮らしが、ずっと続くんだと思っていた頃の記憶。暫くして僕は、親の仕事の都合で見知らぬ土地の学校に移り、二度と戻らなかった。


朝、バス停までの裏道は舗装が悪い。道はところどころ大きな水たまりに占領されていて、僕は花壇になっている分離帯の上をバランスをとって歩く。スーツ姿でやることじゃないけど。

踏み外さないように、バランスを崩さないように。

雨の匂いはきっと変わっていない。僕だけが、変わった。

居酒屋「どん底」

Photo: バケツ 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.
Photo: "バケツ" 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

新宿某所。

雨だ、雨が降ってきた。歩くのはもう疲れた。

客引きは、こっちが弱っていると見るや、執拗に声をかけてくる。視線をあいまいにしながら、彼らをよけて歩く、歩く。

傍らのゴミ箱には赤字で「どん底」。ゴミ箱の主が、そういう名前のお店だから、仕方ない。つたの絡まった、「どん底」の入り口が、おいでおいでしている。


結局、僕達は「どん底」を回避し、近場のバーで豆のシチューとクスクスを食べた。存外にたっぷりしていて、しかも美味しかったよ。

注:居酒屋「どん底」に行ったことはないが、きっと悪くない店なのだと思う。行ったことはないが。