五島列島には、カトリック系の教会が沢山ある。なかでも、ステンドグラスが綺麗な教会があるらしい、だから行ってみることにした。
夏の盛りの恐ろしく暑い午後、周囲の道にほとんど案内もなく、トウモロコシ畑の中を散々行ったり来たりしてようやくたどり着く。教会は別に観光のためにあるのではない、だから分かりやすい表示もない。けれど、観光ガイドには載っている。
教会には、誰もいない。窓に強い日差しが当たり、締め切られた室内には熱気がこもっている。扇風機をつけると、空気が動いて少しだけ涼しくなった。
ステンドグラスは、多分に日本的な幾何学模様で線対称にデザインされている。その向こうには、蘇鉄の葉が揺れている。
ローマ、バチカンに実際に行ったこともあるけれど、やっぱり日本と全然違う文化と歴史があって、その上にはがっちりと、キリスト教が「生きて」 いた。選択としての宗教ではなくて、文化・文明の規定値としてのキリスト教。そこから、遙かに離れたこの場所に教会が建っていて、ステンドグラスがはめ込まれていて、イエスキリストの信仰を守る人たちが居る。遠い遠いこの土地で、その有り様は、やはりバチカンのそれと同じであり得るのだろうか。
ひっそりと薄暗い祭壇には、イエスキリストの十字架が掲げられている。こじんまりとした、人の生活を感じる祭壇だ。それにしても、ここは遠い。遙かに。