この恐ろしい国、no rules.
汚染された大気が霧のように街を覆い、建設中のビル群に太陽が鈍い光を投げかけている。NOxの固まりのようなザラザラした空気を吸うと、鼻腔がピ リピリする。日本の「高度経済成長」と言われた時代に僕は間に合わなかったが、この中国でまさに同じような時代が始まっているのだ。
道路の信号は、あって無いようなもの。青は危険、赤はもっと危険。とぎれることのない車と、自転車の列。人々の流れになんとか付いていきながら、車の鼻先を渡っていく。慣れないと、ホテルからはす向かいのオフィスに行くのに、20分もかかる。
ホテルの部屋は遠くにケリーセンターを眺める 14階で、やたらに広い。部屋には壷だの、彫刻だのが置いてある、これが一晩 1,000元。おそらくは、北京の平均的な農家の月収の数倍であり、東京のホテルの数分の一だ。シャワールームのシーリングには隙間があって、直ぐに水浸 しになるけれど、24時間ひっきりなしに巡回しているハウスキーピングが、たちまち拭き上げてしまう。
夜、外を眺めると、工事現場からは溶接の火花が漏れ、路上では荷車を引いた果物売りが店を広げている。バーでは信じられないプロポーションの女性店 員が、ひっきりなしにやってくる外国人ビジネスマン達の間を軽い足取りで行き来している。そこで飲んだジントニックは、今までで一番、とびっきりに不味 かった。
シャネルと、BMW のバイクと、マクドナルドと、なんでも売ってる。ここが社会主義国の首都だなんて、とても思えない。オフィスのエレベーターで乗り合わせた現地法人の女の子の手には、スターバックスのカップが握られていた。何でも買える。ルールは無い。あえて言えば、対価を払えば何でも買えるし、対価を払う者には何でも売る。それがルールだ。
注:T3 のレンズバリアがおかしい。おかげで、半分以上の写真がパー。これはなんかたまたま構図的に効果っぽいので載せてみた。