脆いから愛しい

Photo: 2002. Chita Peninsula, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fuji RHP III, F.S.2

Photo: 2002. Chita Peninsula, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fuji RHP III, F.S.2

描く事が、描くためのエネルギーを生む。描かないと、描くエネルギーも生まれてこない。

横尾忠則を特集した番組で、そんな彼の言葉が紹介されていた。


ここ暫く、何も書く気がしなくて、なんとなく何を書いても同じだろ、という気分になっていた。

それでもこうして無理やり書いていると、少しはまた、書けるようになってきた。所詮は、そういうことの繰り返しなのだと思う。そうやって、歩いていく。


そういえば。

脆いから愛しい、というフレーズを、あるやりとりの中でもらって、ハッとした。強くある事が、真実というわけでもないのだ。

草鞋

Photo: 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2 日向の日陰。

Photo: 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2 日向の日陰。

社殿の裏から、おばちゃんたちの話し声が聞こえる。

厨房と思しき場所から、明日の段取りか、そんな話し。


すっと、中庭に周って、鳥居をくぐる。

静寂のなかに草鞋が干してある。

静かだ。蝉も鳴いていない。

知多半島: 鴎

Photo: 2002. Chita, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III, F.S.2

Photo: 2002. Chita, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III, F.S.2

太陽は少し前に、沈んだ。水平線の向こうから、薄く差す残照に、ぼんやりと海が光る。暖かい色はもう無い。

この時間の海は、どこか僕を不安にさせる。見知らぬ土地の、見知らぬ海。


目を凝らすと、海面からポツポツと何かが生えている。杭。その上に、蹲る無数の鴎。

鴎は鳴いていない。湿った海風を受けながら、ただ杭の先端に蹲っている。そこが彼らの家という訳ではあるまいが。

その光景は、僕の目に酷く寒々しく映った。そして、朽ちた杭の上に羽を休めるあんな鴎だけはなりたくない、そんな馬鹿げたことを考えた。


数日の旅行から帰り、いつものように撮影したフィルムを冷蔵庫に入れ、一息ついていた。ふと部屋を見回すと、4月のままのカレンダー。本棚には、くもの巣がかかっていた。

寂寥というのではない。ただ、思い出したのは、何故かあの鴎たちの事だった


注:既に太陽が沈み、手持ちで撮影できるぎりぎりの明るさ。海岸の道路を歩きながら撮った1枚。よく映ってたなぁ。