Photo: 2002. Chita, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III, F.S.2
太陽は少し前に、沈んだ。水平線の向こうから、薄く差す残照に、ぼんやりと海が光る。暖かい色はもう無い。
この時間の海は、どこか僕を不安にさせる。見知らぬ土地の、見知らぬ海。
目を凝らすと、海面からポツポツと何かが生えている。杭。その上に、蹲る無数の鴎。
鴎は鳴いていない。湿った海風を受けながら、ただ杭の先端に蹲っている。そこが彼らの家という訳ではあるまいが。
その光景は、僕の目に酷く寒々しく映った。そして、朽ちた杭の上に羽を休めるあんな鴎だけはなりたくない、そんな馬鹿げたことを考えた。
数日の旅行から帰り、いつものように撮影したフィルムを冷蔵庫に入れ、一息ついていた。ふと部屋を見回すと、4月のままのカレンダー。本棚には、くもの巣がかかっていた。
寂寥というのではない。ただ、思い出したのは、何故かあの鴎たちの事だった
注:既に太陽が沈み、手持ちで撮影できるぎりぎりの明るさ。海岸の道路を歩きながら撮った1枚。よく映ってたなぁ。