民家の裏庭

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

Photo: 2000. Shimanto, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film

「おばあはもう1年前に死んだがよ。それでも、田んぼを放っちょくわけにはいかんきねぇ」

四万十川の源流を目指して、ひたすら車を走らせる我々には、もはやあてになる地図さえなかった。レンタカーのオフィスでもらった大雑把な縮尺の地図では、目の前の農道をどちらに折れればよいのか分からなかった。

そういう訳で、我々は間違った角を曲がり、間違った坂を上って、民家の裏庭に迷い込んだ。裏山から用水が引かれ、山肌に開かれた何枚かの田んぼに注 いでいる。息子達は、田んぼを捨てて都会に出ていった。妻は、去年他界した。だから、田んぼと家はじいちゃんが一人で守っている。

「田んぼは手入れせんと、虫がわくき」

母屋の軒先に、夏の花が咲いている。品種を訊いたが、多分地元の通称で教えてくれたらしく、よく分からなかった。多分、亡くなった奥さんが育てていた花ではないか、僕にはそう思えた。

高知のタヌキ

Photo: 2000. Kochi, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, AGFA-Film

Photo: 2000. Kochi, Japan, Nikon F100, AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5D, AGFA-Film

ういーーっ。今日も暑いなっ。

なんつーかよぉ、だるくていけねぇや。こう毎日、御天道様の威勢がいいとさ、なーんにもする気が起きないよな。ちょーダルイよな。ん?高知のタヌキのくせに東京訛りだって?

そりゃ、こちとら江戸っ子よ。はるばる、お船に揺られて、南国高知までやってきたのよ。ここの住み心地?

そうさなぁ、ここは風通しもいいし、人通りも多いから結構楽しいよ。俺は、賑やかなのが好きだからな。ところでお前ら何しに来たの?

四万十川を遡りに来た?うぇぶに発表する?まあ、よく分かんねぇけどさ、写真は勘弁してくれよ。今日はラフな格好だからな。おいっ、撮るなと言ってるだろうが!こらっ、てめぇ!!何しやがるっ!(続く)

追伸:今日はとっても寒いので、真夏に撮った暑い感じの写真を載せてみた。

京都のネコ

Photo: 2000, Kyoto(Toho-ji), Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film(Reversal)

Photo: 2000, Kyoto(Toho-ji), Nikon F100, 35-105mm F3.5-4.5D, Fuji-Film(Reversal)

その日、京都はこの冬一番の冷え込みになった。

早朝、吐く息は白く、ピリッと冷えた体に、トロトロに炊かれた朝粥はなんとも美味だった。タクシーに乗り込むと、運転手は「これで、ようやく京都の 冬らしくなってきましたわ」と言った。そして「それでも、あとは氷が張らんと、ホントに京都の冬とは言えませんな」と続ける。

なるほど、寒さこそが、京都の冬。底冷えのする市街は、なんとも寒々しい。冬は、寒い。それが四季というもの。

お寺の本堂に、野良が丸まっている。カラカラと乾いた寒風が吹き抜け、庭師が松の木に正月の準備を施している。

年の瀬の風景。