東京と近郊の記事一覧(全 59件)

夏の終わり

Photo: 夏の終わりの雲 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.
Photo: "夏の終わりの雲" 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

夏が終わろうとする週末、キャンプにでかけた。天気予報は雨だったけれど、ちゃんと晴れた。僕は結構、天気に恵まれる。沢山道に迷ったり、火がおこらなかったり、焼きそばが焦げたり、とても楽しかった。

帰りに、「温泉に行こう」という思いつき。リーダーのあやふやきわまりない記憶を頼りに、山梨方面へ。「すごい良い温泉が湖畔にあったはず」という主張を信じて、河口湖畔をぐるぐる周回。いつになっても、着かない。


僕は助手席で、ほとんど役に立たない広域地図を広げながら、それっぽい地形と建物を探している。ふと、サイドミラー越しに、眠ってしまった後席の女の子の顔が見えた。あと暫く寝ててもらった方がいいなぁと思いながら、また同じ道を走ってる。

泣きそうな色をしていた空から日が差した。最後の夏の雲が、美しくわき上がっていた。いい午後だ。ずっとこうやって、何にもならない時間を過ごしていられたらいいのに。
でさぁ、目的地の名前は?思い出した?
「わかりません、、」
ほう。


注. その後、Webと携帯電話を駆使して、目的地を発見。湖畔とは無関係な場所にあった。

ビルの谷間の菜の花畑

Photo: 夕日の中の菜の花 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3
Photo: "夕日の中の菜の花" 2003. Tokyo, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3

浜離宮に都内最大の菜の花畑があるらしい。ということで、遅い昼飯を食べてから、出発。浜離宮ってどこだ。

築地市場駅を降りて、それっぽいおばちゃんの集団についていくと、そこは浜離宮。都立公園なので、入園料は安い。300円。


ビル街のど真ん中に、いきなり菜の花畑が広がる。ビル、菜の花畑、観光客。新宿御苑もそうだが、こういう場所って、外から見るとなんだか適当な林にしか見えないのに、中にはいろいろとんでもないことになっている。

花は、ちょうど、今日が満開だった。目が痛くなるような黄色が、ずっと先まで続いている。みんな、ちょっとだけ興奮しながら、黄色い春の小路を歩いていく。お父さんが構えるカメラの前で、記念写真におさまろうとしている子供の背丈は、菜の花より少し小さい。


やがて、太陽は傾いて空が色付き、花が淡く輝く。こんなに沢山の菜の花を見るのは、そういえば、初めてだった。

太陽がビルの谷間に沈んでしまうと、急に寒くなった。まだ、春は浅い。人々は思い思いに帰っていく。僕は脇のベンチに腰をおろして、そんな人たちと、今はすっかり色を失った菜の花畑を眺めていた。

注:浜離宮恩賜庭園の菜の花の見頃は、3月後半です。5月の今は、また別の花が咲いているでしょう。

真っ白な雨傘

Photo: 真っ白な雨傘 2003. Kamakura, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3
Photo: “真っ白な雨傘” 2003. Kamakura, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3

鎌倉の裏路地。石垣と土壁の小路。


突然、風に吹かれて、干されていた傘が、ふわりと落ちてきた。

カンカンの日の光を浴びて、気持ちよさそうにくるくる回る、真っ白な雨傘。埃っぽい春風に踊れ。


風が止む。音楽が止んだように、傘は地面に舞い降りた。