フルレート

電池が弱まり、通話可能時間がウルトラマンの滞在時間より短くなった携帯電話を、新しい端末に買い換えた。通信業者を変えようかとも少し思ったが、「めんどくせー」「どうでもいいー」「寒いー」などの心の声に負けて、機種変更に止めた。

通信業者の変更を思いとどまったもう一つの理由、208系以降はフルレートでの通話がサポートされ、通話品質が改善されているのだ。僕が携帯端末に求めるのは、強靭なバッテリーと、耳から血が出るくらいに十分な音量(別に難聴ではない)、それと通話品質だ。その意味では、208はだいぶましになった。他にも、色が変わる液晶とか、3重和音の着信音とか、いらない機能が満載だが、それは、いらない。i-modeじゃないのか、という話しもあるが、なんで電車の中でまでメール書かなきゃならんのだ。いらない。

前回、携帯を選んだときに、よりによって伝説的に性能の低い、あのN203を買ってしまった苦い思い出から、今回はいささか趣向を変えて、新たな選定基準で買ってみた。メーカーの株価だ。勝者は、最近ぐんぐん株価の上がっている注目の会社、松下通信工業のP208。株価が高い->業績が良い ->開発費がかけられる->良い製品ができる、という発想。こう考えると、あんまり悩まなくていい。どうせ日用品みたいなものだし。

ただ、株価で買うものを決めるというのも、実際には、いささか敷居が高い。僕の場合は、通工の人と話したことがあって、その実直な感じが良い印象だったのも選択の理由。そういえば、以前使っていたPHSも通工のやつだった。「株価で選ぶ」というのとは矛盾するが、人の顔が見えているものの方が、買いやすい。「めんどくせー」「どうでもいいー」と思っている割には、いろいろ考えてるな、、。

で、使ってみると、なかなか良いと思う。機能が多い割に操作しやすいし、高音が耳障りだが通話品質もそう酷くない。3重和音の着メロは、単音の端末と聴き比べると、全然印象が違って面白い。でも、所詮は普通の携帯なので、すぐに飽きた。やっぱi-modeにすれば良かったかな、、。

注1:羊ページの作者は寒さに弱い。
注2:フルレート通話は、DoCoMoのカタログではハイパー・トークという名前になっている。
デジタル携帯端末は、音声のデータを圧縮して基地局に送っている。基地局と、端末の間は無線通信で結ばれるが、従来のNTT DoCoMoデジタル端末は、無線で本来送れるはずのデータ量の半分しか送っていなかった。半分の割合で送っているから、ハーフレートということだ。そうなれば当然、音声データはかなり圧縮されて(間引かれて)しまい、それが「DoCoMoは音が悪い」と言われる一因でもあった。
なんでそんなことをするかといえば、ハーフレートにすれば単純に2倍の端末数をサポートできるから。で、今回のフルレートのサポートで、ようやくJ-PHONEのようなフルレートのサービスと並ぶようになった。(実は、DoCoMoも最初はフルレートだったのだが、加入者の増加に伴ってハーフレートに変更されたという経緯がある。そして、またフルレートに戻ったのだ)

プチ成金

多残業によって、プチ成金となった友達の操るポルシェで家まで送ってもらった。頑張れば、人間20代にしてポルシェが買えるのである。

この友人の明快な金の使い方には好感が持てる。多残業による所得のようなあぶく銭は、あぶくなモノを買うことに使う。シンプルでいい考えかただ。

ポルシェに限らず、彼の発想と行動は、とてもシンプルで、それがこの複雑な日常のなかにあっては楽しく感じられる。イカ(烏賊)が安かったといっては箱ごと買って塩辛を作り、でかいテレビが見たいと思えば一戸建てでもないのにプロジェクターを買って天井に映し、残業であぶく銭が出来たといえば、ポルシェを買う。ロジックは主語と述語で完結している。こういう友達が、あなたの近くにいたら、素晴らしいと思いませんか?

しかし、ふと思うのは、僕は友達だからそれでいいとして、彼の嫁さんになるような人はどう思うんだろうか。会社帰りにイカを1箱買ってくる旦那、、。あ、塩辛好きならいいのか。

東芝のビデオ修理問題

やられる側にすると、こりゃほとんどテロだな、と思った。

東芝のビデオ修理問題である。東芝のビデオを買った人が、「ノイズが出る」とのクレーム修理を依頼したところ、サポート担当者に暴言を吐かれたこと に端を発する事件だ。ビデオが燃えて死にそうになったのなら分かるが、ノイズ。ノイズで死なないだろアホらしい、と思ったが騒ぎは日を追う毎に大きくなっ ている。

まだ、東芝という巨大企業だからこそ、今回のようなダメージにも耐えられたのではないだろうか。もっと規模の小さい会社で、こういう事件が起きて、 もしそれがその会社のメインの商品だったらどうなるだろう。その会社にとっては、死を宣告されたようなものである。今回はそうではないが、こういったこと を、悪意、もしくは企業テロとしてやったら、効果はさらに絶大だ。

今回の事件の経緯は、どれが事実かよく分からないので、背景については当事者双方のページを見ていただきたい。[東芝のアフターサービスについて ]が買った人、[VTRのアフターサービスについて]が東芝広報の見解のページだ。


この事件の特徴は、一個人がメーカー相手にホームページを使って闘っている点にある。これを見て、世の中の「心ある」人たちは、「新しい時代の消費者運動だ」などと言ったりしている。そりゃ、そうだろう。「追いつめる側」から見れば、さぞ愉快に違いない。

で、僕は同じメーカー系の企業に勤める人間として、「追いつめられる側」の気持ちが分かる人間として、非常に複雑な気持ちでこの事件の推移を見ている。そして、どちらかと言えば、東芝に同情している。

この戦いは個人とメーカーが対等に闘っている点で画期的だという人もいる。しかし、本当に対等だろうか。この事件で、一方の当事者であるビデオの購 入者は別になにも失わない。せいぜい、映りの悪い(らしい)ビデオが残るぐらいのものだろう。世間に明かしているのはメールアドレスだけだから、そのアカ ウントから手を引いてしまえば、それで済む。逆に、東芝はどう転んでも大損害である。企業というのは、公的な存在で、しかも東芝ともなれば、巨大すぎて逃 げ隠れのしようがない。少なくとも、今回の事件に関わる担当者は、かなりの貧乏くじを引くことになったはずだ。


一般消費者市場というのは、非常に難しい市場だ。いったい、どんなお客が、どんな用途のために製品を買っていくのか、メーカーには一切コントロール できない。個々の商品の売り上げから得ることのできる利益が非常に薄いので、ビジネス自体も厳しい。あれだけ複雑で高度な工業製品であるビデオデッキが、 いったいいくらで売られているのかを考えれば、恐ろしいぐらいだ。その一般消費者市場の製品サポートともなれば、想像を絶する世界である。厳しい予算と、 意味不明な(恐らく、怒り狂うお客の相手だけでなく、人生相談や話し相手のような電話もあるだろう)コールの中で、サポート要員は日々闘っているのであ る。

実際、僕も少しはサポートに電話をかけたりすることはあるし、対応上、なんだかなー、と思うこともある。しかし、「相手も人間」という一線を忘れな ければ、そんなに酷い対応はされない。更に、僕に全く分からないのは、あっさり他のメーカーのビデオを買えば、それで十分ではないの?ということ。ビデオ を買うのは、メーカーに文句を付けて、改革をさせたいためではない。録画と再生ができれば、それでいいのだ。それが目的であって、メーカーの謝罪は、問題 の本質とはまるで違う。もちろん、僕は今、東芝と闘っている人を「悪い」と言う気はないが、同じ立場に置かれたとしても、僕は絶対にこういうことはしない だろう。買い換えれば済むのだ。

今回は、メーカーとのやりとりを消費者の側がテープにとり、Webで公開した。こういう事件が起こると、メーカーによっては、サポート電話のうち、 トラブルの可能性がある通話を録音するようになるかもしれない。(僕が経営陣だったら、絶対そうする)そうすれば、「言った・言わない」の永遠の課題が解 消できる。そして、そうしたシステムのコストは、そのメーカーの製品の価格に、最終的に跳ね返ることになる。消費者とメーカーの間の緊張関係は、ますます 厳しくなり、もしかしたら顧客審査に合格し、長い長い購入許諾条件にサインしなければ、ビデオひとつ買えなくなるかもしれない。


いずれにしても、今回の事件は、日本の産業界を支える製造業に、少なからぬ衝撃を与えたと思う。そして、この事件が、本当に消費者のためになったの か、ならなかったのかは、ずっと後になって分かることだ。メーカーがサポートにより多くのコストを投じるようになれば、どこかにその分が上乗せされる。取 引には、代償が付き物であり、その掛け金は今回の事件でつり上がった。少なくとも、「消費者の権利の拡大」などど脳天気に喜ぶような、そんな単純な問題で はあるまい。

ただ一つ確かなことは、今、東芝のビデオは「買い時だ」ということだ。きっと値段も安いし、サポートも良いに違いない。サポート部門に電話をかけて、「あのービデオが、、」と言った瞬間に、菓子折を持った担当者がとんでくるかもしれない。

該当の製品は、東芝のA-F88ビデオデッキ。僕は今のところ新しいビデオはいらないので、買わないけど、どうですか?お買い得だと思うよ。

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