おはようございまーす!

 Photo: 渋谷、看板の張り替え 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "渋谷、看板の張り替え" 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

朝の渋谷を歩く。天気が良い。平日のこの時間に何をするでもなく、カップルがうろうろしている。スクランブル交差点は、通勤する人でいっぱいだ。通勤?いったいどこへ?(答え:デパート)

この街では、ショーウインドウに映ったスーツ姿の自分が滑稽だ。まるで出勤するパチンコ屋の店員みたいだな、と思う。(パチンコ屋の店員はスーツで出勤するのかどうか知らないが)


頭上では巨大な看板に縄ばしごをかけて、ポスターの張り替え作業をしている。漠然と、何か、もっと凄いやり方で張り替えるのかと思っていたのだけれど、そんなベタなやり方で貼るのか。

新しいポスターが貼られ、新しい旗がつけられ、広場の装飾が入れ替わって、次の舞台が整う。この街はいつだってお祭りだから、常に華やかに塗り替えられていく。

得体の知れない汁で汚れた路上に佇む自販機でお茶を買って、飲みながら仕事場に向かう。


ちょっと早かったせいで、スタッフがあまりいない。急ごしらえで作られた「事務局」みたいなところで、「宣伝」と紙の貼られた椅子に、ぼーっと座っていた。

いかにもな「おはようございまーす!」という声にあたりを見回すと、僕しか居ない。そうか、ここはそっち側のルールが支配している場所か。


注:イベントとかコンサートとか、そういう人たちは、現場でなんかよく分からない人にもまず挨拶するというのが基本みたいだ。役割によって、細かく分業さ れているので、沢山の業者がからむことが多く、まともに紹介し合うこともなく現場は進んでいくことが多い。だから、まず挨拶という部分が大事なのだろう。 いくら人数がいても、無理矢理名刺交換から入る文化とは違う。

夕日

Photo: 霞ヶ関官庁街 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "霞ヶ関官庁街" 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

新聞の片隅に出ていた年齢別平均年収のレポートには、ここ何年も上向かない景気を反映して、薄ら寒い数値が載っている。かと思えば、年収 5,000万円以上ターゲットの食品店の記事を、web で読む。メガ・コンペティションの時代のなれの果てが、これだ。

僕はと言えば、今月は仕事量も少なくて、あんまり実入りが良くないし、業界自体がレイオフの嵐で、どだい気分が良くない。なにもかもが不確実で、あらゆる局面でリスクをとるしかやりようのない時代だけど、本当に見返りはあるんだろうか?


霞ヶ関の官庁街を歩いていると、この国が貧しくなってるなんて思えないような、普通に豊かな景色。眩暈のするような夕日が差す国道を、無表情に歩く 人たちが居る。僕が日差しに立ち止まると、人の流れは、僕をよけ、どこかへ向かって動いていく。少しして、僕も彼らと同じ方に歩いていく。

六本木のクソなバー

Photo: 札と落書きインターナショナル 2002. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX.

Photo: “札と落書きインターナショナル” 2002. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX.

どうにも馴染めない飲み会。愛想笑いも精一杯。ようやく終わって、さて二次会に流れようかというところで、

「六本木にクソなバーがありますけど、どうですか?」

と声をかけられた。後ろの方を僕と一緒に歩いていた彼もまた、これ以上はうんざりといった様子だったから、こっそり列から離れてタクシーに乗った。


それは、店ですらなかった。二棟のビルの間の通路に屋根をかけて、カウンターをつけて、酒を並べてしまった空間。これって、廊下?本当にクソなバーだ。

「本当にクソですねぇ」

「ええ、まったく」

客は、極東の片隅の、クソなバーに流れ着いたクソなガイジンがほとんど。70年代あたりの曲が流れると、一人がカウンターの上に上がって、踊り始め た。多分、金をもってないのだろう、安酒を飲んで、めちゃくちゃなスタイルで踊っている。そんなクソなヤツを見上げながら、僕たちも安酒を流し込んで、戦コンはどうとか、そんな、クソな話をする。カウンターの上で踊ってるガイジンがウインクする。僕たちは、次のビールを瓶で頼む。

いろんな言語の落書きで、びっしり埋まった天井。挨拶か、名前か、罵詈か。そんなものが、六本木の片隅で淀んでいる。


注:コンサルは嫌いだ。