昭和ファサードの猫

The cat in a façade.

Photo: “The cat in a façade” 2017 Tokyo, Apple iPhone 6S.

近所の、いまにも崩れそうな長屋に入った豆腐店。歩道を覆うように、軒が伸びていて、その上に夏は夕顔が咲き誇る。さしずめ、昭和のファサードと言ったところか。

「気がついたか」

屋根?っていうかファサードに居るのは初めて見ましたよ

「お前が気がついてなかっただけだよ」

大きくなりましたね。初めて見たときは子猫だった

「なに大人ぶってんだ。お前なんかより、よっぽど色々見てんだぞ」

すみません

「俺たちが見えないような生き方はろくなもんじゃないぞ」

ん?

「見えてるのに、見てないんだ」

そうか。。そんなもんかもしれません。今日は、会えて良かった。

「ああ、じゃあな」

コート

それでも朝は来る。
来てしまうし、来てくれる。フェア、確かにフェアだ。

寝覚めの悪い夢を見て、いささかの気恥ずかしさとともに目を覚ます。うつうつらして、夢のつづきを少し見て、大した慰めにもならずに布団から身を剥がし、ゴミを捨てにいく。
型遅れになったバーバリーのコートを捨てたものかどうか、もう1ヶ月も俺は悩んでいる。捨てるべきじゃないのか?

結局、コートは捨てずにクリーニングに出して、少しキリッとして戻ってきた。濃紺のコートは、ほどなく通夜に参列した自分には、役に立った。

羊の皿を割った

羊の皿を割った。羊の柄が付いていたので、友達がくれたものだ。
コンビニか何かの景品だったと思う。二枚で一組。

一枚は震災の日に壊れた。残された一枚は、なんとなく寂しげだったから、それはそれでいいのかもしれないと思った。