日本人専用ガイドで行くJSAツアー

Photo: "The 38th Parallel."

Photo: “The 38th Parallel.” 2016. South Korea, Richo GR.

今をときめく板門店を訪れることができる、通称「JSA ツアー」もいよいよ大詰め。早朝に集合させられて、洞窟の中を這い回り、監視台からはるか北の領土を眺め、板門店で命の保証は求めない書類に署名し、もうお腹いっぱいだ。JSA から延々と漢江沿いに下って、やっとソウル市街に戻ってきた。

さて、このツアーでは英語客と日本語客が同じバスに乗っていて、ガイドがそれぞれ別についている。両方聞いていると、どうも喋っている内容が全然違う。英語版は比較的スタンダードな観光案内。日本語版の方は相当フリーダムで、息子が徴兵された時の話なんかもしている。

JSA 入境時の諸注意についての説明も、ちょっとディテールが違う気がして気になったが、そこはケンチャンナヨ。


ツアーの最後を、英語ガイドは、「いろいろ不便な事もあったと思うけれど、他に無い体験だったよね。んで、もうすぐ朝集合したホテルに着くけど、ここは市の中心街だからいろんな所に遊びに行けるよ!夜遊びに繰り出したい人達にオススメなのは、、。」と至って軽い感じでまとめた。

で、その夜遊び情報を日本語訳してくれるのかと思ったら、日本語ガイドは「この半島では、多くの家族が引き裂かれて暮らしています。その祖国統一の思いを、皆さんも日本に帰ったら思い起こして、、」とまぁ、全然内容が違う重苦しい100%予想できた展開の締めくくりがセットになっている所までが、このツアーのハイライト。

ロシア人にとって、一杯は少ない

Photo: "Square of the Fighters for Soviet Power in the Far East. / Площадь Борцам за власть Советов на Дальнем Востоке."

Photo: “Square of the Fighters for Soviet Power in the Far East. / Площадь Борцам за власть Советов на Дальнем Востоке.” 2017. Vladivostok, Russia, Fujifilm X-Pro2, Fujifilm M Mount Adaptor + Carl Zeiss Biogon T*2,8/28 ZM, ACROS+Ye filter

「ロシア人にとって、一杯は少ない
二杯は多い。だから、三杯だ。」

Discovery channel でやっていた番組で、ロシアのウォッカメーカーの研究員が言っていた。
わけが分からない。

そうして、ドロドロになるまで凍らせたウォッカで乾杯。三杯どころではない、四杯も五杯も飲み続けるのだ。
わけが分からない。

その答えは、ロシアに行けば分かるだろうか。


結論としては、分からなかった。だって、誰もウォッカなんて飲んでないのだ。地元ではちょっと有名らしいホテルの、この広いレストランで、そんなものを飲んでいるのは僕だけだった。もっと、ロシアな居酒屋を目指すべきだったのか。あるいは、凍える厳冬期に来るべきだったのか。

答えは、持ち越しだ。一杯は少ないかというえば、まあ、それで十分な感じだった。

人を詰める技術

イベントでCRMシステムの宣伝ビデオを見ている。なんか、ITを間違った方向に使うとこうなる、という感じしかしない。シナリオは、外回りの営業がリモートでCRMを活用して、ビジネスの成果になる!みたいな、 ウンザリするヤツ。クライアントが出した結論から逆算してライターが書かされた「やっつけ仕事」。

シーンは昼間の街中から始まる。アポが早く終わったので、もう一軒客先訪問したい。そんなとき、このソリューションを使えば・・。いや、昼時ならうまい店でも探してゆっくりしろよ。


こういう「効率化」って、技術が人を詰めていく絵しか見えない。空いた時間を増やして、早く帰りましょうとか、そういう方向性に絶対ならない。もちろん、これは製品の宣伝ビデオだから、空いた時間で昼寝しましょう、とは描けない。でもこうして作られたイメージは、やがては真実になり、未来になってしまう。映画が予言した未来を、人が無意識になぞるように。

夕方。営業もうまくいって、今日は打ち上げだっ!でビデオは終わる。仕事が早く終わって、会社の人間と一緒に酒を飲むのか。これは世界にも類を見ないソリューションです、と言っているけど、確かにCRMをこんな風に使うのは、もちろん日本だけだね。


こう書いたのが2014年。下書きのまま放置して、2018年現在。国境を越えて繋がったCRMにより、国外の人間を詰めることすら可能。

技術の進歩は全く素晴らしく、次に回るべき客先の指示は遅かれ早かれ AI が出すようになるだろう。あ、でも巡回セールスマン問題は量子コンピュータの領域か。