名古屋味噌煮込み饂飩

Photo: 2002. Nagoya, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), RHP III, F.S.2,

Photo: 2002. Nagoya, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), RHP III, F.S.2,

「もし味噌煮込み饂飩を食べるんだったら、山本屋本店ってのがあるからそこに行きな」

友達が教えてくれた店名を頼りに、饂飩屋を探す。山本屋本店の暖簾をくぐると、店は3分ほどの客の入りだ。午後2時をまわった、ちょっと半端な時 間。一人で食べている客はいない。昼時もはずしているし、東京から来ているサラリーマンは、新幹線ホームの立ち食い饂飩屋のほうを使うのだろう。


店構えは、駅地下街の中とはいっても、かなりきちんとしている。どっしりした木のカウンターが店の中央に据えられ、余裕のあるゆったりした造りになっている。メニューの数は少なく、基本的に饂飩と、酒のつまみが幾品かあるだけ。ちゃんとした饂飩屋だ。

値段は安くない。うどんだけで、2,000円ぐらいする。でも、せっかくだから、味噌モノをちょっとは食べておかないといけない。名古屋名物モーニ ングは、コーヒーもトーストも苦手なので、パスしてしまったし。一昨日ここに来て以来、名古屋らしいものなんて、一つも食べていないのだ。(たまたま入っ た回転寿司屋で「エビフライ握り」を食べたが、それはまた名物とは別のものだろう)

腹が減っていた。考えてみれば、朝飯を食べていない。名古屋コーチンという手もあるけれど、今の気分は黒豚。黒豚入りの味噌煮込み饂飩を注文する。煮込み饂飩には、問答無用でお変わり自由のご飯がついてくるらしい。


味噌煮込みというからには、さっさと出てくるものではない。先に漬物の入った大振りの鉢が出てきた。それだけ食べているのもなんだかマヌケなので、 ビールを頼んだ。周囲を見渡すと、それはそれは熱そうな饂飩のようだ。猫舌だから、冷たい飲み物をたのんで正解か。漬物の鉢に入っている、大量のスライス 紫タマネギの用途がいまいちわからない。饂飩と一緒に食べればよいのだろうか。聞くのも面倒なので、ビールのつまみにしてみた。(あんまり合わなかった、 きっと饂飩用なのだ)

やがて、見るからに危険な熱さを感じさせる風体で、味噌煮込み饂飩が運ばれてくる。土鍋いっぱいに饂飩が盛られ、生卵と葱、豚ばら肉があしらってあ る。つゆの色は、こげ茶色とでも言おうか。まさに名古屋の色だ。まず味は、、熱くてよく分からない。麺は熱すぎるから、豚肉とご飯で暫く食べている。

そのうち、やや冷めてきた。つゆの味は濃く、ご飯が付いているのがちょうど良いくらい。味噌に甘みはあるが、嫌味に感じるほどではない。饂飩のコシ は驚くべきほどのものではないが、悪くはない。固めに茹でた麺には、メリケン粉の甘さがある。値段と看板だけのことはある、よくできたプロの料理という印 象。名古屋で売られている「味噌なんとか」という手合いのものを過去に何種類か食べたが、ここの味噌煮込み饂飩がもっともリーズナブルというか、味噌味に する意味があるというか、納得のいくものだった。(味噌味の焼肉とか、味噌焼きそばとかは、やはり受け入れがたいものがある)

熱さと格闘しながら、30分以上かかって食べ終わる。麺も、ご飯も、なんとか平らげた。この量で、さらにご飯をおかわりする人なんているのだろうか。あ、居るね、、。


会計はビールと饂飩で3,000円ちょっと。饂飩を食べたと思えば高く、しっかりした郷土料理を食べたと思えば納得。

えらく腹いっぱいにはなる、ということは確か。


注1:名物名古屋コーチン、とおぼしき鳥。何故か寺の境内に放し飼いになっていた。
注2:今回行ったのは、山本屋本店という店だが、似たような名前の饂飩屋がいろいろあるようだ。

生まれた

Photo: 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2,

Photo: 2002. Kyoto, Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Kodak EB-2, F.S.2,

「茶碗夫婦」に女の子が生まれた。

僕は先週、奥さんのために、蝉の鳴く比叡山で安産のお守りを買ったのだけれど、それを贈る暇もなく生まれた。僕はどうも、贈り物のタイミングを逃しがちだ。


もう一人の友達と、子供が男の子だったら名前は「ムサシ」にしよう、と勝手に決めていたが、女の子の名前はまだ決めていなかった。良いのが思いつかなかったのだ。

茶碗夫に「ムサコにする?」と冗談で訊いてみたが、嫌そうだった。


電話口の茶碗夫に、僕は「おめでとう」と言った。彼は「ありがとう」と答えた。

僕も、彼も、こういうことは、はじめてだったから、なんと言えばいいのかよく分からなかったのだ。世の中には、多分、こういう場合にふさわしい言い回しみたいなものがきっとあるのだろう。

どうでもいいことだけれど。

メタルの子育て

最近、MTV でオジー・オズボーン一家の日常を垂れ流す、という番組をやっている。これが面白くてしょうがない。オジーは、ヘビーメタルの重鎮だ。コンサートのリハーサルで、舞台セットにシャボン玉が浮いているのを見て、

「俺は邪悪なるオジー・オズボーンだぞ、シャボン玉だけはやめてくれ、それはノーだ!」

と叫んでいた。メタルは、邪悪でなくてはいけない。暗黒のミサ(ちょっと違うが)の場に、シャボン玉なんて浮いていてはいけないのだ。


オジーは、無論、ミュージシャンとして大きな成功をおさめていて、それはそれはでかくて豪華な家に住んでいる。そして、ティーンネイジャーの息子と娘がいる。親に隠れて刺青を入れた娘を、オジーが叱る。

「俺が若いときは、刺青にばい菌が入ってタイヘンな目に遭ったんだぞっ!」

刺青だらけの両腕を振り回しながら、オジーが娘を叱っている。メタルの子育ては、タイヘンなのだ。

注:「THE OSBOURNES(オズボーン一家)」は CS/CATV の MTV で放送中。